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「中国の方出入り禁止」の張り紙…ポーラ販売店の騒動、法的にどんな問題がある?
2017年12月06日 10時00分

化粧品大手ポーラの国内販売店で11月下旬、中国人を出入り禁止にするという内容が書かれた張り紙があったとして話題になった。同社は11月25日、「不適切な張り紙があった」と発表。張り紙を撤去したうえで、同店との契約も打ち切った。

問題の張り紙は、「中国の方 出入り禁止」と書かれて、販売店のガラス戸に張られていた。親会社のポーラ・オルビス ホールディングスによると、同店のオーナーが、ある中国籍の人物とトラブルになり、その人に向けてつくったもの。オーナーは「軽率な行為だった」と反省したという。

ポーラは事態を重く受け止め、11月25日に同店を営業停止にした。さらに同日、店舗との契約も打ち切った。ポーラ・オルビス ホールディングスの広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「トラブルの原因はいえない」と説明。「ただ、ルールに反する行為として、全国のオーナーに情報共有した」と話した。

今回の「張り紙」問題は、中国のSNS上で火が付いて、海外メディアも注目を集めた。今回のように、国籍・民族を理由にして「出入り禁止」とすることは、法的にどんな問題があるのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

化粧品大手ポーラの国内販売店で11月下旬、中国人を出入り禁止にするという内容が書かれた張り紙があったとして話題になった。同社は11月25日、「不適切な張り紙があった」と発表。張り紙を撤去したうえで、同店との契約も打ち切った。

問題の張り紙は、「中国の方 出入り禁止」と書かれて、販売店のガラス戸に張られていた。親会社のポーラ・オルビス ホールディングスによると、同店のオーナーが、ある中国籍の人物とトラブルになり、その人に向けてつくったもの。オーナーは「軽率な行為だった」と反省したという。

ポーラは事態を重く受け止め、11月25日に同店を営業停止にした。さらに同日、店舗との契約も打ち切った。ポーラ・オルビス ホールディングスの広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「トラブルの原因はいえない」と説明。「ただ、ルールに反する行為として、全国のオーナーに情報共有した」と話した。

今回の「張り紙」問題は、中国のSNS上で火が付いて、海外メディアも注目を集めた。今回のように、国籍・民族を理由にして「出入り禁止」とすることは、法的にどんな問題があるのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

●合理性は見いだせない

「民法には『契約自由の原則』があり、誰と契約をするのかしないのか、当事者が自由に決めることができます。

たとえばNHKのように、受信契約を強制される場合もありますが、一般的にいえば、特定の人との契約を強制されることはありません。したがって、店側にも、客を選ぶことができます」

今回のように「民族差別」のような場合でも許されるのだろうか。

「特定の人というよりは、民族だったり、国籍だったりする場合には、その個人の責任ではない属性によって区別されることになり、通常、このような区別に合理性を見いだすことはできません。その結果、不当な差別ということになります。ヘイトスピーチ対策法でも『日本以外の国・地域の出身者かその子孫』を対象しています。

実際に張り紙をした販売店は、特定の中国の方との間で、余程のトラブルがあったと推測されます。しかし、そうならば、その特定の顧客を出入り禁止にすれば足りることです。張り紙をした当人がどのような趣旨で『中国の方』と表記したのかは不明ですが、いずれも属性を指すので、表記そのものが問題です」

●ポーラの対応は当然のもの

店との契約を打ち切ったポーラの対応はどう見るべきか。

「ポーラにしてみれば、販売代理店契約の中では、このような販売代理店の不穏当な言動に対する制裁規定(解除規定)があるでしょうから、その規定に基づいて処分することは当然の処置です。

不当な差別発言を容認する企業として見られることは、営業上もマイナスですし、常識的にみても、このような言動が社会的にも許容されないものであることは明らかですから、不当な処置とはいえません」

「中国の方」は慰謝料請求をできるのだろうか。

「『中国の方』一般として、この差別的な言動に対して慰謝料請求をなしうるかは別問題です。このような言動によって不快な思いをするのは当然ですが、だからといって、すべての『中国の方』が慰謝料請求できるかは、たとえヘイトスピーチであろうと慎重に検討されるべき問題だと考えます。

外国人であることを理由に入浴を拒否された幼児について、慰謝料請求が容認されたケースもあります(小樽市外国人入浴拒否訴訟)。実際に『中国の方』として、入店拒否という差別的な取扱いを受けたことが、個別に不法行為が成立しうる余地があることはともかくとして、一般的に成立するとすることは否定的に考えるべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

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