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砂川一家5人死傷、互いの車が速度を競い合った末の悲劇…罪のキーワードは「共謀」
2016年11月27日 09時17分

北海道・砂川市で2015年6月、一家5人が巻き込まれ死傷した事故の裁判員裁判で、札幌地裁は11月10日、危険運転致死傷罪の罪などに問われた谷越隆司(28)、古味竜一(28)両被告に対して、懲役23年の実刑判決を言い渡した。

報道によると、判決では「互いに車の速度を競うように高速で走行していたことは明らか」として、危険運転の共謀が成立すると認定。古味被告側は、衝突事故には直接関わっていないとして無罪を主張していたが、裁判長は危険運転致死傷罪の共謀成立を理由に「事故は古味被告の運転にも起因する」などと退けた。古味被告は判決を不服として、18日付で札幌高裁に控訴した。

この事故では、両被告が砂川市の国道で赤信号を無視してお互いの速度を競い合い、時速100キロ超で市内の交差点に進入。谷越被告の車が、一家5人が乗った軽ワゴン車に衝突し、後続の古味被告の車が路上に投げ出された長男を約1.5キロ引きずって逃走した。軽ワゴン車に乗っていた他の4人は、3人が死亡、1人が重傷を負った。

別々の車を運転していた被告2人に対して、危険運転致死傷罪の共謀が認められることは、全国的にも異例だという。危険運転致死傷罪の共謀が認められるのはどのような場合で、これまでどのような裁判例があるのか。星野学弁護士に聞いた。

北海道・砂川市で2015年6月、一家5人が巻き込まれ死傷した事故の裁判員裁判で、札幌地裁は11月10日、危険運転致死傷罪の罪などに問われた谷越隆司(28)、古味竜一(28)両被告に対して、懲役23年の実刑判決を言い渡した。

報道によると、判決では「互いに車の速度を競うように高速で走行していたことは明らか」として、危険運転の共謀が成立すると認定。古味被告側は、衝突事故には直接関わっていないとして無罪を主張していたが、裁判長は危険運転致死傷罪の共謀成立を理由に「事故は古味被告の運転にも起因する」などと退けた。古味被告は判決を不服として、18日付で札幌高裁に控訴した。

この事故では、両被告が砂川市の国道で赤信号を無視してお互いの速度を競い合い、時速100キロ超で市内の交差点に進入。谷越被告の車が、一家5人が乗った軽ワゴン車に衝突し、後続の古味被告の車が路上に投げ出された長男を約1.5キロ引きずって逃走した。軽ワゴン車に乗っていた他の4人は、3人が死亡、1人が重傷を負った。

別々の車を運転していた被告2人に対して、危険運転致死傷罪の共謀が認められることは、全国的にも異例だという。危険運転致死傷罪の共謀が認められるのはどのような場合で、これまでどのような裁判例があるのか。星野学弁護士に聞いた。

●運転していない同乗者に危険運転致死傷罪を認めたケースも

「複数人が犯罪を共謀し、そのうちの一部の者が犯罪を実行した場合、たとえ犯罪行為そのものを分担していなくても、犯罪の実現のために本質的な寄与をしたと認められる者は『共同正犯』とされます。そして、犯罪行為そのものを分担していなくても、いわば共犯者の行為を利用して自らも犯罪を実行したと評価できる場合を『共謀共同正犯』といいます。

危険運転致死傷罪に関し、共謀共同正犯の成立を認め、実際に事故を起こしていない被告人に対しても同罪が成立するという判決が下されたことは、あまり意外ではありません」

星野弁護士はこのように述べる。

「なぜなら、過去の裁判例で、運転をしていない同乗者に危険運転致死傷罪の幇助(共犯の一形態)の成立を認めたケースがあるからです。今回の判決は、その延長線上の判決ともとらえられます。

この裁判例では、すでに飲酒酩酊状態の者が車を運転しようとしていることを了承して同乗し、危険な運転走行を黙認していた状況で事故が起きた際、実際には事故を起こしていない同乗者にも危険運転致死傷罪の幇助の責任を認めました」

そもそも、危険運転致死傷罪とはどのような場合に認められるのか。

「危険運転致死傷罪は危険な運転行為により人を死傷させる犯罪です。そして、この犯罪が成立するためには、本人が『危険な運転行為をしている』ことを認識すれば足り、その行為により『人を死傷させる』という結果まで認識している必要はありません。

具体的には、『危険な運転行為はしたけれど、事故を起こすつもりはなかった』という場合でも、実際に事故を起こして人を死傷させれば危険運転致死傷罪が成立します。

そのため、共犯者が『一緒に危険な運転行為はしたけれど、事故を起こしたのは自分じゃない』と言ったとしても、危険運転行為をすることについて共謀関係が認められれば、実際に事故を起こしていない共犯者に対しても危険運転致死傷罪の共謀共同正犯が成立します。

このように、危険運転致死傷罪の共謀共同正犯が成立するかどうかは、危険運転行為について共謀が成立したかどうかがポイントになります。しかし、危険運転行為に関する共謀の成立があいまいになれば処罰される範囲が不当に広がってしまうという懸念もあります」

●危険運転致死傷罪が認められたポイントは?

今回、危険運転致死傷罪が認められたポイントは何だったと考えられるのか。

「今回の事件では、被告人2人が、赤信号無視や高速度走行という危険な運転行為を一緒に行っていたことがきちんと証明されたため、2人ともお互いが危険な運転行為をすることをきちんと認識することができた状況にあり、共謀が成立すると判断したのだと思います。

なお、仮に共謀共同正犯が成立しないとすると、どのような結論になるのでしょうか。例えば、被告人2人のどちらが被害者を死亡させる結果を発生させたか判明しない場合、被告人のいずれにも死の結果を負わせることはできません。

この場合、被害者が死亡しているにもかかわらず、被告人2人とも『傷害』を負わせたという限度でしか処罰できないという違和感のある結果になってしまいます。したがって、危険運転致死傷罪の共謀共同正犯を認めることは、このような結論を回避するという意味もあるのです」

(弁護士ドットコムニュース)

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