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市販薬ODは「悪」じゃない「クスリのこと、話していいんだよ」 若者が安心できる場を
2023年07月10日 09時49分
#オーバードーズ

「ODしちゃった」「死にたい」。

薬を使う人がなんでも話せるチャットサービスを立ち上げた「ハームリダクション東京」には、市販薬のオーバードーズ(OD過剰摂取)をしたと思われる人からもメッセージが届く。

画面の向こう側にいる差出人の姿は見えない。ただ、相手が「誰かに話したい」と思ったことだけは、たしかだ。だから、こう返す。

「どうだった?」「そうなんだね。話を聞きたいな」

「やめなよ」「なんで、そんなことするの」とは言わない。スタッフで精神保健福祉士の古藤吾郎さんは「チャットで出会う人たちの中には、薬を使うことで生き延びている人もいる。薬物使用を問題化することで、生き延びる術を奪うことのほうが危ない」と語る。

「ODしちゃった」「死にたい」。

薬を使う人がなんでも話せるチャットサービスを立ち上げた「ハームリダクション東京」には、市販薬のオーバードーズ(OD過剰摂取)をしたと思われる人からもメッセージが届く。

画面の向こう側にいる差出人の姿は見えない。ただ、相手が「誰かに話したい」と思ったことだけは、たしかだ。だから、こう返す。

「どうだった?」「そうなんだね。話を聞きたいな」

「やめなよ」「なんで、そんなことするの」とは言わない。スタッフで精神保健福祉士の古藤吾郎さんは「チャットで出会う人たちの中には、薬を使うことで生き延びている人もいる。薬物使用を問題化することで、生き延びる術を奪うことのほうが危ない」と語る。

●市販薬OD「問題化」の弊害

ハームリダクションは「害(ハーム)」を「減らす(リダクション)」こと。薬を「やめさせる」のではなく、健康や生活への害を少しでも小さくすることを目指す考え方だ。

OKチャット」は「なんでも話してOKで、薬を使うことがある人たちが逃げてこられるシェルターのようなところ」と古藤さんは説明する。メッセージの送信者とは「どう安全に使うか」「どう健康に暮らすか」について、よく話している。

SNSには、どんな薬をどれだけODしたかを綴る投稿もみられる。一方で、チャットには「市販薬のODをやめられない自分は最低だ。消えたい」などと自分を責めている人からの声が届くこともある。

「薬の話を誰かに聞いてほしい」と思いつつも、友人に縁を切られたり、他者に咎められたりすることを恐れて、誰にも話せずに悩んでいる子どもたちもいる。

画像タイトル つらさを薬で解決しようとする若者も(ロストコーナー / PIXTA)

「市販薬のODをすることが『乱用』『問題』として報じられたりすることがあります。すると、世間には『社会的にもよろしくない=悪いこと』というイメージが形成されてしまいます。子どもたちが周囲に話をしないのは『悪いことをしている』『話してはいけない』と思わされているからかもしれません。過去にODをしたり薬を使ったりして、誰かに怒られた経験があってもおかしくないです。そもそも、フラットな姿勢で話を聞ける大人たちがそうそういないって感じています」

やりとりをする中で「どう手放せそうか」と問いただしたり、無理に医療機関を受診するようにすすめたりすることもしない。気軽に訪ねられて安心して話せる場を提供するーー。それが、このチャットを立ち上げた理由だからだ。「相談」という表現は敷居をあげてしまうため、掲げていない。

●スタッフは「伴走しているだけ」

2020年6月から2021年3月までに1800件のチャットがあり、その後も増え続けている。チャットの9割は、薬を使っている当事者とのもの。残りの1割は家族やパートナー、援助者などだという。

使う薬物も人それぞれで、合法・違法を問わずに幅広い。なにかしらの市販薬や覚醒剤など特定の薬を単体で使う人もいれば、複数の薬を混ぜ合わせてカクテルする人もいる。スタッフから年齢やジェンダー、使う薬などを聞き出すことはない。「やりとりを続けていく中で、少しずつ薬のこと、その人自身のことや暮らしのことなど教えてもらえる」と古藤さんは説明する。

画像タイトル チャットのやりとりを続けるか否かは、つながった人自身が自由に決めることができる(Graphs / PIXTA)

対面ではないため、画面の向こう側にいる相手のことは見えない。だからこそ「合わない」と感じれば、いつでもチャットの利用者側が気軽にやめることができる。

「ここでのチャットの特徴は継続できること。同じアカウントからチャットに来れば、前回の続きから話ができます。1回ごとにリセットされませんし、毎回最初から話す必要がありません。多くの人と繰り返しチャットをしています。毎日でもいいし、ときどきでも。1年以上チャットで話している人たちもたくさんいます」

古藤さんは、スタッフは「援助職者」ではなく「伴走しているだけの人」だと強調する。

「私たちも薬についてフラットに話したい。ただ、それだけです。もちろん、使うことで身体的な負担がかかることもあります。だからこそ『やめるため』ではなく『より安全に、より健康に使うため』の方法も一緒に模索していきたいという思いになります。訪ねてみてよかったな。ここだったら安心して話せる。そう思ってもらえたら」

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