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将棋実況YouTuberに朝日新聞「権利侵害なので中止を」、何の権利侵害なのか?
2017年06月22日 15時27分

朝日新聞の将棋取材班が6月17日、将棋の朝日杯(主催:朝日新聞社、日本将棋連盟)を実況するYouTuberの男性に対して、ツイッターで「朝日杯の棋譜中継は権利の侵害に当たります。即時、中止してください」とリプライしたことが話題となっている。

他の将棋ファンから「何の権利に当たるんですか」というリプライに対して、将棋取材班は「中継をする権利は主催者である朝日新聞社、日本将棋連盟にあります。第三者が中継を希望する場合は、了承を得る必要があります」と回答している。

男性は指摘を受けてこの動画を削除した。ファンからは「是非今後も将棋ファンのため続けてほしい」、「指している動画を中継していた訳ではないのに」と残念がる声も上がっている。

弁護士ドットコムニュース編集部が、朝日新聞社に「何の権利を侵害したのか」を尋ねたところ、以下の回答があった。

朝日新聞の将棋取材班が6月17日、将棋の朝日杯(主催:朝日新聞社、日本将棋連盟)を実況するYouTuberの男性に対して、ツイッターで「朝日杯の棋譜中継は権利の侵害に当たります。即時、中止してください」とリプライしたことが話題となっている。

他の将棋ファンから「何の権利に当たるんですか」というリプライに対して、将棋取材班は「中継をする権利は主催者である朝日新聞社、日本将棋連盟にあります。第三者が中継を希望する場合は、了承を得る必要があります」と回答している。

男性は指摘を受けてこの動画を削除した。ファンからは「是非今後も将棋ファンのため続けてほしい」、「指している動画を中継していた訳ではないのに」と残念がる声も上がっている。

弁護士ドットコムニュース編集部が、朝日新聞社に「何の権利を侵害したのか」を尋ねたところ、以下の回答があった。

●朝日新聞社の見解「独占的に放送し、配信し、その他の方法で利用できる権限」

「『朝日杯将棋オープン戦』は、朝日新聞社と日本将棋連盟が共同で主催しています。本棋戦の中継は、両者間の契約に基づいて行っています。

朝日新聞社と日本将棋連盟は、主催者として本棋戦の対局における棋譜を独占的に放送し、配信し、その他の方法で利用できる権限を有しており、そうした主催者としての権限は、法律上保護されるべき利益に係る権利というべきものです。そこで、両者の許諾を得ずに棋譜を配信する行為は、主催者としての上記権利を侵害し、不法行為に該当し得ると考えております。

将棋の棋譜の著作物性について議論があることは承知していますが、その点についての解釈のいかんにかかわらず、弊社としては上記の見解に基づき、YouTube上での棋譜の生中継について、お控えいただくようお願い申し上げた次第です」

●齋藤弁護士「棋士の対局経過は単なる事実なので著作物に該当しない」

この朝日新聞社の見解について、どう考えればいいのか。まず、著作権問題については、朝日新聞社も「将棋の棋譜の著作物性について議論があることは承知しています」と、著作権侵害だと断定していない。

著作権問題に詳しい齋藤理央弁護士は「著作権侵害とはならないでしょう」と解説する。

「棋士の対局経過は、単なる事実ですから、これ自体を機械的に記録しても著作物には該当しません。著作物に該当するとすれば、対局経過を記録した譜面や、映像で、その表現に創意工夫があるもの、ということになります。

その意味で、今回のケースは、対局経過を記録した放映動画を無断で配信したわけではなく、対局の経過という事実を自分で用意したソフトウェアなどで再現して中継したに過ぎませんので、著作権侵害とはならないでしょう。

むしろ、今回のケースでは、将棋において『棋譜』中継が『対局内容』の中継を意味するという特殊性が問題を生んでいるようです。すなわち、ここでは『棋譜』中継が問題なのではなく、『対局内容』を中継していることが問題の本質のようです」

●不法行為が成立するかどうか

では、その「対局内容」について、朝日新聞が主張する「独占的に放送、配信、その他の方法で利用できる権利」を、どう考えればいいのか。

齋藤弁護士は「この権利が、法的保護に値すると判断される可能性は否定できないでしょう」と語る。

「対局内容の中継について、故意または過失によって、他人の権利や法律上保護された利益を侵害する『一般不法行為』が成立するかどうかを検討することになります。

不法行為が成立するには少なくとも、法的保護に値する利益が侵害される必要があります。

有名な棋士同士の対局内容に、顧客誘引力が認められることは間違いありません。実際にもプロスポーツの独占放映契約のように、新聞社は相当の対価を支払って、対局内容や対局経過を独占的に放映する地位を得ていると考えられます。

プロスポーツなどの場合独占放映権は、ビジネスモデルとして確立し、実際に大きな収益源にもなっています。その意味で、対局内容を独占的に放映、配信する地位が法的保護に値すると判断される可能性は否定できないと考えられます。今回の、朝日新聞社の主張も、同様のものといえるでしょう。

また、リアルタイムでの実況という形の方が、後日中継する場合より、顧客誘引力が高く、より多くの視聴者を獲得できます。そういう意味で、後日配信という場合と比べれば、実況という形式の方が、より法的な保護に値しやすい、逆から言えば、不法行為になりやすいと言えるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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