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人気急上昇の音声SNSアプリ「Clubhouse」、勝手に「音楽」を流していいの?
2021年02月06日 10時09分

音声SNSアプリ「Clubhouse」(クラブハウス)の人気が急上昇しているが、音楽のCDをかけたり、ピアノを演奏している「ルーム」がある。はたして法的に問題ないのだろうか。

音声SNSアプリ「Clubhouse」(クラブハウス)の人気が急上昇しているが、音楽のCDをかけたり、ピアノを演奏している「ルーム」がある。はたして法的に問題ないのだろうか。

●JASRAC「クラブハウスと包括契約は結んでいない」

クラブハウスは、テキストではなく、音声でやりとりするSNSアプリ。ユーザーは「ルーム」をつくって、一人で話したり、つながっている知人や知らない人と会話したりして、気が向くままに使っている。

ラジオ番組のような使い方もできるので、有名人のルームには、数千人のユーザーが出入りするなど、大盛況となっている。なお、こうしたルームでの会話は、アーカイブされない仕組みとなっている。

そんなルームの中には、音楽CDをかけていたり、ピアノの演奏音が流れてくるところもある。ここで気になるのが、音楽の著作権問題だ。JASRACによると、現在、クラブハウスとは包括契約を結んでいないという。

著作権にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●勝手に音楽を流したら「著作権侵害」にあたる可能性あり

――クラブハウスで音楽を流してもよいのか?

やはり著作権が問題になってきます。クラブハウスを使って「不特定または多数」の人が視聴できる状態で音楽を配信することは、著作権(公衆送信権)の侵害になってしまいます。

――YouTube LiveやLINE LIVEでは、自由に音楽を演奏することができるようだが?

YouTubeやLINEは、音楽著作権を管理するJASRAC・NexToneと包括契約を締結して、利用許諾を得ています。そのため、JASRACやNexToneの管理楽曲であれば、YouTube LiveやLINE LIVEで演奏することができるわけです。しかし、今のところ、クラブハウスについては、JASRACやNexToneと包括契約を締結していません。

――著作権侵害以外の問題点はあるか?

CD音源(または配信音源)を流す場合は、著作権と同時に「著作隣接権」(原盤権)のことも考えなければなりません。

著作権がいわば歌詞・メロディについての権利であるのに対して、原盤権はレコード会社が管理しているCD音源(または配信音源)についての権利です。

クラブハウスで不特定多数の人が視聴できる状態でCD音源を流すのは、著作権侵害と同時に原盤権(著作隣接権のひとつである送信可能化権)の侵害にもなってしまいます。

●意図せず「入り込む」場合は問題なし

――「生活音」として音楽が入り込む場合は?

たとえば、子どもの写真を撮影してブログに載せるとき、たまたまその子がキャラクターのTシャツを着ていたとします。このような写り込みも、形式的にはそのキャラクターの権利者の著作権を侵害することになりますが、ここまで著作権の行使がされては、社会生活が困難になってしまいますよね。

そこで、著作権法には「付随対象著作物」という著作権の行使を制限する規定があります。

ただ、これまで「付随対象著作物」は、写真撮影・録音・録画に限定されており、クラブハウスのようなインターネット配信の場合にも適用されるかは議論があり、また要件も厳格でした。

それが昨年の著作権法改正によって「付随対象著作物」の範囲が広がり、要件も緩和されました。

そのため、クラブハウスの配信で、生活音のように入ってきてしまう程度であれば、著作権侵害にはなりません。同様に著作隣接権の侵害にもなりません。

ただし、意図的にBGMとして利用するために音楽を流すことは、「付随対象著作物」の範囲外なので注意が必要です。

●JASRACなどに利用申請しよう

――クラブハウスで、楽曲を演奏したい場合はどうすればよいでしょうか?

まずは、JASRACやNexToneのウェブサイトで、自分が演奏したい楽曲の管理状況を調べましょう。JASRACまたはNexToneの管理楽曲であれば、JASRAC・NexToneに対して利用申請して、著作権使用料を支払えば、クラブハウスで演奏することが可能になります。

――CD音源を流すこともできるのか?

JASRACやNexToneは著作権を管理しているだけで、原盤権を管理しているわけではありません。ですので、CD音源を流すためには、別途、原盤権を管理している発売元レコード会社の許諾が必要です。

原盤権の許諾を得るのは、少しハードルが高いので、BGMとしての利用であれば、いわゆる「ロイヤリティフリー」の音楽を利用するのも手です。

ただし、ロイヤリティフリーの音楽は、利用条件がさまざまです。中には、権利関係の不明確な事業者も存在します。ですので、きちんと利用条件を確認して、信頼できる事業者から購入することをおすすめします。

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