5483.jpg
「保育所に子どもを預けられない!」待機児童問題は「法の下の平等」に反しないか?
2014年04月14日 11時21分

子どもを保育所に預けたくても、定員オーバーで入れることができない――。厚生労働省によると、認可保育所に入れなかった「待機児童」は2013年10月時点で、全国に約4万4118人。3年連続で減少したが、まだ解決にはほど遠い。

親たちが保育所を選ぶ際にも、「どの保育所が良いか」と探す前に「どこなら入れるか」と考えるしかない状況だという。今年2月には、待機児童の多い東京都杉並区と中野区で、子どもを認可保育園へ入所させられなかった親たちが、区に対して数十人規模の集団異議申し立てをおこなった。

2015年度に始まる「子ども・子育て支援新制度」についても、預けられる要件がゆるやかになったとして評価する声があるが、どんな運用になるかは結局のところ各自治体しだいだ、という指摘もある。市や区などの自治体は「待機児童の解消」について、法的な責任を負っていないのだろうか。待機児童の問題に取り組む大井琢弁護士に聞いた。

子どもを保育所に預けたくても、定員オーバーで入れることができない――。厚生労働省によると、認可保育所に入れなかった「待機児童」は2013年10月時点で、全国に約4万4118人。3年連続で減少したが、まだ解決にはほど遠い。

親たちが保育所を選ぶ際にも、「どの保育所が良いか」と探す前に「どこなら入れるか」と考えるしかない状況だという。今年2月には、待機児童の多い東京都杉並区と中野区で、子どもを認可保育園へ入所させられなかった親たちが、区に対して数十人規模の集団異議申し立てをおこなった。

2015年度に始まる「子ども・子育て支援新制度」についても、預けられる要件がゆるやかになったとして評価する声があるが、どんな運用になるかは結局のところ各自治体しだいだ、という指摘もある。市や区などの自治体は「待機児童の解消」について、法的な責任を負っていないのだろうか。待機児童の問題に取り組む大井琢弁護士に聞いた。

●児童福祉法では「待機児童」はないのが原則だが・・・

「共働き夫婦の家庭など『保育に欠ける』子どもについては、原則として市区町村が、認可保育園において保育をしなければならないとされています(児童福祉法24条1項)。それにもかかわらず、待機児童がなくならないのは、市区町村が『例外』を言い訳にしているからです」

その例外とは、児童福祉法の24条1項ただし書きのことだ。そこには、こう書かれている。「ただし、保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない」。

つまり、多くの自治体は「やむを得ない事由がある」と言い訳しているというのだ。

「そのような言い訳を許さないためには、杉並区や中野区の保護者の方々のように、異議申し立てという形で、行政に対して声を上げる必要があります。私も昨年と今年、杉並区の保護者の方々の異議申し立てのサポートをおこなっています」

●憲法14条の「平等原則」に違反する可能性も

現実には、保育所に「入所できた児童」と「入所できなかった待機児童」という差が生じている。はたして、それは「平等」と言えるのかと、大井弁護士は指摘する。

「認可保育園に入所できるかどうかは、保護者にとっても、子ども自身にとっても切実な問題です。

しかし、待機児童が多い市区町村では、認可保育所に入所できるかどうかは紙一重です。『なぜ、うちの子どもが入れないの?』という疑問を持つ保護者もたくさんいらっしゃるはずです」

こちらも、「やむを得ない場合」には、公正な方法で選考できるという記載が条文にはあるが・・・。

「それでも、認可保育園に入所できる子どもと、入所不承諾となって待機児童となる子どもが生じているのは、『差別的な取扱い』といえます。自治体がそのような措置をとる合理的理由がないとすれば、『法の下の平等』を定めた憲法14条1項の平等原則にも違反することになります」

ルールの趣旨を考えれば、いつまでも「やむを得ない」として、現状を是認するわけにはいかなさそうだ。大井弁護士は「2015年度から始まる新しい制度でも、こうした問題点が解消されるわけではありません」として、今後もいろいろな方法で行政を動かしていく必要があるだろうと話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る