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中華航空機が「日本人乗客」の飲酒・喫煙・大声で引き返し…秩序乱す迷惑客の法的問題
2017年12月24日 09時14分

台湾の中華航空で12月9日、日本人乗客3人が飲酒や喫煙をするなど大騒ぎをして、飛行機が空港に引き返すトラブルとなったことが報じられた。報道によると、台湾の桃園国際空港バンコク行き853便で、離陸後に酒を持ち込んだ日本人乗客3人が酔って大声を出したり、トイレで喫煙したりするなどの騒ぎを起こしたという。

周囲の乗客からも苦情が出たため、客室乗務員が何度も制止したが従わず、機長が他の乗客の安全を考慮して、離陸30分で桃園国際空港に引き返した。3人は飛行機を降ろされ、航空警察局局に引き渡された。台湾の民用航空法に違反した疑いがあり、最高で5万台湾元(約19万円)の過料が課せられる可能性があると報じられている。また、フライトはこのトラブルによる4時間遅れ、260人に影響が出たという。

一般的に、機内で同様の騒動を起こした場合、どのような法令に触れる可能性があるのだろうか。金子博人弁護士に聞いた。

台湾の中華航空で12月9日、日本人乗客3人が飲酒や喫煙をするなど大騒ぎをして、飛行機が空港に引き返すトラブルとなったことが報じられた。報道によると、台湾の桃園国際空港バンコク行き853便で、離陸後に酒を持ち込んだ日本人乗客3人が酔って大声を出したり、トイレで喫煙したりするなどの騒ぎを起こしたという。

周囲の乗客からも苦情が出たため、客室乗務員が何度も制止したが従わず、機長が他の乗客の安全を考慮して、離陸30分で桃園国際空港に引き返した。3人は飛行機を降ろされ、航空警察局局に引き渡された。台湾の民用航空法に違反した疑いがあり、最高で5万台湾元(約19万円)の過料が課せられる可能性があると報じられている。また、フライトはこのトラブルによる4時間遅れ、260人に影響が出たという。

一般的に、機内で同様の騒動を起こした場合、どのような法令に触れる可能性があるのだろうか。金子博人弁護士に聞いた。

●多国間条約「東京条約」で定められた機長の権限

航空機内の犯罪や騒動にはどのような法令がある?

「まずは、国際的な法令面を説明しましょう。Convention on Offences and Certain Other Acts Committed on Board Aircraft(航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約)があります。これは、1962年12月に発効した、古くからある多国間条約です。東京で審議採択されたので、『東京条約』と呼ばれています。

対象は、『刑法上の犯罪の他、人の財産や安全を害するおそれのある行為(犯罪であるかどうかを問わない)、または、秩序や規律を乱す行為』と、広範囲にわたります。テロやハイジャックに限られるわけではありません。今回の事件は、この条約にも抵触する可能性があります。

この条約では、機長(aircraft commander)の権限も定められており、身体拘束を含む、必要かつ妥当な措置を取ることができ、その上で、さらに権限ある当局に引き渡し、または降機させることができます。当局とは、航空機の登録国の他、着陸国です。

この際、他の乗務員に援助を命じたり、あるいは、乗客に援助を要請したりできます。乗務員や旅客が、必要であると信じる相当な理由があるときは、機長の承認を得ることなく、防止措置を執ることができます。

なぜ、機長らにこのような強い権限を与えているかといえば、機内は逃げ場のない空間であり、かつ、航空機は本来脆弱な構造であり、人の財産や安全を守るためには、機長に強い権限を与えて、重大事故の危険性を未然に排除する必要があるからです。

実は、このような強い権限は、太古の昔から、船舶の船長に与えられています。『東京条約』はそれを受け継いだもので、最近クローズアップされている、テロやハイジャック対策として登場したというわけではありません。秩序や規律を乱し、機長の指示に従わなければ、降機させられ、当局に、引き渡されるのは、世界の常識です」

●日本は「甘え社会」

機内の喫煙はなぜ許されない?

「東京条約ができた1962年当時は、離着陸時とトイレ以外は喫煙可でした。しかし、機内は逃げ場のない空間であり、非喫煙者からの苦情が絶えず、1980年代から欧米先進国は、喫煙席を縮小、多くは全面禁煙にしていきました。

JALとANAが全面禁煙にできたのは、先進国で最も遅れ、1999年です。それも、国際民間航空機関(ICAO)の勧告を受けてやっと実現したのでした。国際機関から勧告を受けない日本の新幹線には、今でも喫煙車両が残っています」

では、機内で飲酒して大騒ぎしたり、機長らの指示に従わなかった場合はどうなる?

「降機させられますが、問題は引き渡された後です。今回の台湾では『民用航空法』があり、119条の2では、トイレでの喫煙には、3万元(約11万円)以上15万元(約57万円)の罰金、機長の指示に従わない場合や、酒類を飲んで機上の秩序を乱した場合、あるいは、トイレ以外の場所での喫煙は、1万元(約3万円)以上5万元(約19万円)の罰金となります。

これが日本だと、改正航空法(2004年1月)によるのですが、トイレの喫煙については、機長が反復、継続して禁止命令を出し、それに従わない場合には、50万円以下の罰金を科されます。

また、客席での喫煙を含め、機内の秩序や規律の維持に支障を及ぼす、あるいは、そのおそれのある行為は、職務の執行を妨げることを前提に、かつ、機長が反復、継続して禁止命令を出して従わない場合に限り、同じく50万円以下の罰金を科されます。

台湾だと、喫煙は、それだけで罰金の対象となります。日本は、機長が『反復、継続して禁止命令を出して従わない場合』とか、トイレ以外の喫煙については、更に要件を付け加え、『職務の執行を妨げる場合』に限られるなど、要件が厳重です」

もし、違反行為によって飛行機が空港に引き返し、他の乗客に影響が出た場合、賠償責任を問われる可能性は?

「民事の損害賠償も発生します。中華航空は、今回のケースにつき、彼等に燃料代、ダイヤ調整コストなどの損害を請求する、また、乗拒拒否となるブラックリストへ搭載するとも発表しています。当然のことでしょう。他の乗客から、遅延による損害賠償が出ることもあり得ます。

日本は『甘え社会』です。日本人の甘えは、子供が親に抱く甘えが、大人になっても残っているものです。この点は、精神科医の土居健郎氏が、ロングセラーの『甘えの構造』でつとに指摘しているとおりです。今回はそんな日本人のおごりと甘えが出た、後味の悪い事件ではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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