5863.jpg
アメリカの女子高生が「学費支払い」求めて両親を提訴! 日本ではどうなる?
2014年04月02日 11時47分

18歳の高校生が両親を訴えるという珍しい裁判が、米国で注目を集めている。「家から追い出された」と主張する米ニュージャージー州の女子高生が、両親を相手取って、高校の学費などの支払いを求める訴訟を起こしたのだ。

報道によると、この女子高生は大学進学を目指していたが、家を追い出されたために、その機会を失いかけていると訴えている。一方、女子高生の両親は、「娘は自分の意志で家を出て行った」などと反論。加えて、すでに18歳となった娘に学費を支払う義務はないと主張しているという。

18歳というと、日本ではまだ未成年だが、米国では選挙権を付与され、自立を求められる年齢だという。米国の法曹関係者の間では「この裁判は18歳以上に対する親の養育義務について判断する先例となる」と注目を浴びているようだ。

大学進学率が高い日本。はたして同様の訴訟が起こった場合、子どもの主張が認められる可能性はあるのだろうか。子どもや親子の問題に詳しい宮島繁成弁護士に聞いた。

18歳の高校生が両親を訴えるという珍しい裁判が、米国で注目を集めている。「家から追い出された」と主張する米ニュージャージー州の女子高生が、両親を相手取って、高校の学費などの支払いを求める訴訟を起こしたのだ。

報道によると、この女子高生は大学進学を目指していたが、家を追い出されたために、その機会を失いかけていると訴えている。一方、女子高生の両親は、「娘は自分の意志で家を出て行った」などと反論。加えて、すでに18歳となった娘に学費を支払う義務はないと主張しているという。

18歳というと、日本ではまだ未成年だが、米国では選挙権を付与され、自立を求められる年齢だという。米国の法曹関係者の間では「この裁判は18歳以上に対する親の養育義務について判断する先例となる」と注目を浴びているようだ。

大学進学率が高い日本。はたして同様の訴訟が起こった場合、子どもの主張が認められる可能性はあるのだろうか。子どもや親子の問題に詳しい宮島繁成弁護士に聞いた。

●親には「扶養義務」と「監護教育義務」がある

「学費の問題は通常、法律的には扶養の問題として扱われています」

このように宮島弁護士は切り出した。

「民法877条1項は、直系血族は『互いに扶養する義務がある』と定めています。このため、親が子を、子が親を扶養するのは法的な義務ということになります。逆の立場から見ると、法的な権利となります。

また、親が子に対して学費を負担することは、扶養の観点だけではなく、監護教育する義務という観点から根拠づける見解もあります」

これは、民法820条の「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」という条文に基づいているという。

「実際、大学進学の費用について、養育費という形で離婚後の一方の親に負担を命じる審判例も、めずらしくありません。これは、わが国の大学進学率の高さを考慮した結果でしょう。もちろん、支払いは親の経済状況に応じてということになりますが・・・」

このように宮島弁護士は説明する。したがって、「理論上は、未成年の子どもが親に対して、高校や大学などの学費を請求することは可能」ということだ。

●未成年の子どもが親を訴えることは難しい

だが、現実には、今回のアメリカの事例のように、未成年者が親に対して学費を求めて裁判を起こすことは、日本ではほとんどないという。

「『法は家庭に入らず』という古代ローマの格言が象徴するように、本来は、法が解決する問題ではないからです」

では、もし日本で、未成年の子が自分の親を訴えたいという場合、手続きそのものは可能だろうか。

「難しいところですね。もし、訴訟を起こして学費を請求しようとするならば、未成年者は自分で訴訟行為をおこなうことができないので、法定代理人に請求を託すことになります。しかし通常、未成年者の法定代理人には、その子の親権者がなります。

つまり、法定代理人が自分に対して請求することになってしまいます。そのような訴訟の実現は、工夫すればできないわけではないですが、簡単なことではありません」

どうやらアメリカとちがって、18歳の高校生が学費を求めて、両親相手の裁判を起こす可能性は、日本では少ないといってよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る