5973.jpg
カルテがない「C型肝炎」の患者10人、国と和解成立 立証のハードル高い状況つづく
2022年07月05日 17時45分

すでにカルテは存在しないが、フィブリノゲン製剤の投与で「C型肝炎」になったとして、患者やその家族が救済をもとめている裁判で、東京地裁で争っている原告のうち10人が7月5日、裁判所の所見に基づいて国と和解した。

全国弁護団によると、全国の地裁に提訴した原告766人のうち、これまでに和解成立したのは78人、うち東京地裁は32人という。担当医師の高齢化・死亡などで立証が困難になる中、被害救済から取り残されている人は、まだまだ多い状況だ。

すでにカルテは存在しないが、フィブリノゲン製剤の投与で「C型肝炎」になったとして、患者やその家族が救済をもとめている裁判で、東京地裁で争っている原告のうち10人が7月5日、裁判所の所見に基づいて国と和解した。

全国弁護団によると、全国の地裁に提訴した原告766人のうち、これまでに和解成立したのは78人、うち東京地裁は32人という。担当医師の高齢化・死亡などで立証が困難になる中、被害救済から取り残されている人は、まだまだ多い状況だ。

●フィブリノゲン製剤投与の立証ハードルが高い

弁護団などによると、フィブリノゲン製剤は1964年(昭和39年)、当時の厚生大臣によって、医薬品として承認された。大量出血を伴う出産や妊産婦の手術時などで、止血剤として使われてきた。

1994年(平成6年)ごろまで、C型肝炎ウイルスの不活性化処理が十分におこなわれていなかった。投与によってC型肝炎になった患者が訴訟を起こしたことをきっかけに、被害救済をうたった「C型肝炎特措法」が2008年に公布・施行された。

しかし、この特措法による救済をもとめて、患者が裁判を起こしても、実際は「フィブリノゲン製剤の投与の事実」を立証するハードルが高く、国側はカルテなどの書面か、当時の医療関係者の証人尋問をもとめているという。

●ある原告「運がよかっただけ」

弁護団によると、C型肝炎は、フィブリノゲン製剤の投与から20〜30年後に感染の事実が判明することが多く、被害に気づいたときには、医師法に定められたカルテ保存期間「5年」がとっくに過ぎており、ほとんどは破棄されている。

また、すでに病院が廃院されていたり、担当医師が高齢化などで証言できる状態でなかったり、亡くなっている事例が多い。例外的にカルテが残っていたり、医療関係者の証言を得られた人だけが救済されているという。

この日和解した10人もカルテはなかったが、医師の証人尋問のほか、その意見書の信用性が認められたかたちだ。ある原告は会見で「和解できたことはうれしい」としながらも「運がよかっただけ」として、立証ハードルの問題点を口にした。

●弁護団は「救済要件の見直し」などをもとめている

厚労省によると、2017年6月30日時点で、フィブリノゲン製剤投与の事実が報告された医療機関は全国1052の施設、(元)患者数は1万8035人にのぼっている。しかし、全国弁護団によると、今年春までにC型肝炎特措法で救済された患者は、同法施行からカルテなどの立証が可能だった2350人あまりににとどまっている。

そのため、弁護団は「カルテや医療関係者の証言の有無という本人の責任ではない要素のために救済されないのはあまりにも不合理な差別だ」として、フィブリノゲン製剤投与を推認できる患者が相応の救済を受けられるように、特措法の改正による医療費助成制度や新たな救済制度の創設、救済要件の見直しをもとめている。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る