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デジタル放送視聴の「B-CASカード」 なぜ改造すると逮捕されるのか
2013年02月26日 13時00分

地デジ用のテレビを持っている人は、テレビを買ったときに「B-CASカード」という謎のカードが付属してきたという記憶はないだろうか。B-CASカードはテレビに差し込んで利用するもので、地上波デジタル放送やBSデジタル放送などを視聴するためには欠かせないツールだ。最近、このB-CASカードをめぐる事件が続出している。

京都府警サイバー犯罪対策課は2月13日、有料デジタル放送をタダで見られるように「B-CASカード」を書き換える不正なプログラムをネット上で販売したとして、情報提供サイトの管理人の男を逮捕した。昨年11月には長野県で、不正にB-CASカードを書き換えたとして、自営業の男2人が逮捕されている。

これらの事件から察すると、B-CASカードを改造したり、その情報を提供する行為は違法となるようだ。では、なぜB-CASカードを改造すると違法になるのだろうか。自分の所有物を改造するのは個人の自由とも思えるが、違法だという根拠になる法律はなんだろうか。岩永利彦弁護士に聞いた。

●B-CASカードの所有権は、発行している会社側にある

そもそもB-CASカードは、何のための機材なのだろうか。岩永弁護士は「B-CASカードは本来、有料放送のためのデジタル著作権管理の一方法です」と解説する。

「有料放送を行う衛星放送事業者と契約を結んだ人だけが放送を受信できるようにしたいという意図から、その契約情報をB-CASカードに書き込んで、受信できるようにするのですね」

では、自分のB-CASカードを改造することが、なぜ犯罪になるのか。「個人の自由」ではないのだろうか。岩永弁護士によると「実はB-CASカードは、発行しているB-CAS社の所有物であり、我々はこれを借りて使用しているだけなのです」という。岩永弁護士はさらに説明を加える。

「しかも約款によると、これはシュリンクラップ契約というもので、開封すると否応なく締結させられる契約なのです。ですので、B-CASカードの改造は『借りている他人の物』の無許可改造となってしまうのです」

「他人の物」である以上は、自由に改造することは許されないというわけだ。

「それゆえ、契約の情報を書き換えると、自分ではなく他人、つまり衛星放送事業者の契約に関する事務処理を誤らせることになり、刑法上の私電磁的記録不正作出罪(161条の2第1項)にあたりうることになります。そして、それを実際に使用して、有料放送を無料で見ると、私電磁的記録不正供用罪(刑法161条の2第3項)にあたりうることにもなってしまうわけです」

●「B-CASカードの現状のシステムは大いに問題がある」

ところで、B-CASカードは「有料放送」のためのカードのはずだが、実際には、地デジを初めとする「無料放送」の視聴のためにも必要となる。なぜ、そのようになっているのだろう。

「先に述べたとおり、本来B-CASカードはデジタル著作権管理の方法ですので、無料放送の視聴まで捕捉する必要はなかったのです。ところが、理由は定かではありませんが、現状のように、無料放送を視聴する場合でも必須のものとなりました。

そのため、不必要にB-CASカードが大量に配布され、不興を買ったあげく、今のような状況を生んだとも言えます。進んで法を破る者をかばうつもりはありませんが、B-CASカードの現状のシステムは大いに問題があると思います」

今後も、報道されている事件のように「B-CASカード」を改造する人が現れ、法を犯す人と警察との間で「イタチごっこ」が続くかもしれない。岩永弁護士が言うように、現状の制度に問題があるようにも思えるが、B-CASカード自体は他人のものであり、その改造は犯罪となってしまうことは心に刻んでおきたい。 

(弁護士ドットコムニュース)

地デジ用のテレビを持っている人は、テレビを買ったときに「B-CASカード」という謎のカードが付属してきたという記憶はないだろうか。B-CASカードはテレビに差し込んで利用するもので、地上波デジタル放送やBSデジタル放送などを視聴するためには欠かせないツールだ。最近、このB-CASカードをめぐる事件が続出している。

京都府警サイバー犯罪対策課は2月13日、有料デジタル放送をタダで見られるように「B-CASカード」を書き換える不正なプログラムをネット上で販売したとして、情報提供サイトの管理人の男を逮捕した。昨年11月には長野県で、不正にB-CASカードを書き換えたとして、自営業の男2人が逮捕されている。

これらの事件から察すると、B-CASカードを改造したり、その情報を提供する行為は違法となるようだ。では、なぜB-CASカードを改造すると違法になるのだろうか。自分の所有物を改造するのは個人の自由とも思えるが、違法だという根拠になる法律はなんだろうか。岩永利彦弁護士に聞いた。

●B-CASカードの所有権は、発行している会社側にある

そもそもB-CASカードは、何のための機材なのだろうか。岩永弁護士は「B-CASカードは本来、有料放送のためのデジタル著作権管理の一方法です」と解説する。

「有料放送を行う衛星放送事業者と契約を結んだ人だけが放送を受信できるようにしたいという意図から、その契約情報をB-CASカードに書き込んで、受信できるようにするのですね」

では、自分のB-CASカードを改造することが、なぜ犯罪になるのか。「個人の自由」ではないのだろうか。岩永弁護士によると「実はB-CASカードは、発行しているB-CAS社の所有物であり、我々はこれを借りて使用しているだけなのです」という。岩永弁護士はさらに説明を加える。

「しかも約款によると、これはシュリンクラップ契約というもので、開封すると否応なく締結させられる契約なのです。ですので、B-CASカードの改造は『借りている他人の物』の無許可改造となってしまうのです」

「他人の物」である以上は、自由に改造することは許されないというわけだ。

「それゆえ、契約の情報を書き換えると、自分ではなく他人、つまり衛星放送事業者の契約に関する事務処理を誤らせることになり、刑法上の私電磁的記録不正作出罪(161条の2第1項)にあたりうることになります。そして、それを実際に使用して、有料放送を無料で見ると、私電磁的記録不正供用罪(刑法161条の2第3項)にあたりうることにもなってしまうわけです」

●「B-CASカードの現状のシステムは大いに問題がある」

ところで、B-CASカードは「有料放送」のためのカードのはずだが、実際には、地デジを初めとする「無料放送」の視聴のためにも必要となる。なぜ、そのようになっているのだろう。

「先に述べたとおり、本来B-CASカードはデジタル著作権管理の方法ですので、無料放送の視聴まで捕捉する必要はなかったのです。ところが、理由は定かではありませんが、現状のように、無料放送を視聴する場合でも必須のものとなりました。

そのため、不必要にB-CASカードが大量に配布され、不興を買ったあげく、今のような状況を生んだとも言えます。進んで法を破る者をかばうつもりはありませんが、B-CASカードの現状のシステムは大いに問題があると思います」

今後も、報道されている事件のように「B-CASカード」を改造する人が現れ、法を犯す人と警察との間で「イタチごっこ」が続くかもしれない。岩永弁護士が言うように、現状の制度に問題があるようにも思えるが、B-CASカード自体は他人のものであり、その改造は犯罪となってしまうことは心に刻んでおきたい。 

(弁護士ドットコムニュース)

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