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パニック障害、復職したら「片道2時間」の通勤に…拒否できる?
2019年06月19日 09時52分

電車に乗ることができないパニック障害の人が、片道2時間の通勤を余儀なくされる異動を打診されたとして弁護士ドットコムに相談を寄せた。相談者は体調不良のため2カ月間、休職。復職しようとしたところ「電車およびバスを乗り継いで片道2時間かかる部署」への異動を打診された。

相談者がパニック障害を抱えていること、電車に乗ることができないことは人事担当者にも伝えていた。そこで事実上の退職勧奨ではないかと不安を募らせているそうだ。

今回の配転命令は、不利益性が高いように思うが、業務である以上、仕方ないのだろうか。あるいはパニック障害であることを理由に、配転を拒否できるのか。近藤暁弁護士に聞いた。

電車に乗ることができないパニック障害の人が、片道2時間の通勤を余儀なくされる異動を打診されたとして弁護士ドットコムに相談を寄せた。相談者は体調不良のため2カ月間、休職。復職しようとしたところ「電車およびバスを乗り継いで片道2時間かかる部署」への異動を打診された。

相談者がパニック障害を抱えていること、電車に乗ることができないことは人事担当者にも伝えていた。そこで事実上の退職勧奨ではないかと不安を募らせているそうだ。

今回の配転命令は、不利益性が高いように思うが、業務である以上、仕方ないのだろうか。あるいはパニック障害であることを理由に、配転を拒否できるのか。近藤暁弁護士に聞いた。

●「会社側の権利濫用となる可能性」

「相談者は人事担当者に自分の病状を伝えていたとのことです。結論から言えば、相談者の事情に配慮した不利益軽減措置を取らずに一方的な配転命令を行ったのであれば、会社側の権利濫用となる可能性があります」

なぜ、権利濫用に該当する可能性があるのだろうか。

「企業は就業規則などに規定されている配転条項により配転命令を出すことができ、労働者はこの命令に拘束されます。もっとも、配転命令が権利濫用として無効となる場合は、これを拒否することができます。

具体的には、(1)業務上の必要性がない場合、(2)業務上の必要性がある場合であっても、不当な動機・目的等をもってなされた場合や、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合、配転命令は権利濫用となります(東亜ペイント事件-最判昭和61年7月14日労判477号6頁)」

●2時間の通勤「事実上不可能であり、その不利益は著しい」

今回のケースでは「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる」と言えるのか。

「本件の配転命令につき、業務上の必要性があったのかどうか、相談者を退職に追い込もうという不当な動機・目的等があったのかどうかは定かではありません。

ただ、相談者はパニック障害を抱え、電車に乗ることができない状態にあるとのことです。 電車やバスを乗り継いで片道2時間もの時間をかけて通勤することは事実上不可能であり、その不利益は著しいものといえるでしょう。

裁判例においても、メニエール病に罹患した労働者に対する転勤命令につき、転勤により1 時間40分以上を要する通勤時間に耐えられるか疑問であること等を指摘して転勤命令を無 効としたケースがあります(ミロク情報サービス事件-京都地判平成12年4月18日労判790 号39頁)。

配転命令が権利濫用となるか否かを検討するに際しては、配転の人選に合理性があったか(讀宣事件-大阪地決平成3年3月29日労判588号25頁)、企業が労働者の不利益を回避・軽減するためにどのような措置を取ったのかも重要です(帝国臓器製薬事件-最判平成11年9月17日労判768号17頁)」

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