640.jpg
精神科入院中「エコノミー症候群」で死亡、遺族が「違法な身体拘束」と病院を提訴
2018年08月28日 16時01分

石川県にある精神科病院の男性(当時40歳)が入院中に亡くなったのは、違法な身体拘束を受けたことが原因だとして、男性の遺族が8月27日、病院を運営する社会福祉法人を相手取り、約8630万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。

提訴翌日の28日、東京・霞が関の司法記者クラブで、男性の遺族は氏名と顔を公表して会見を開いた。亡くなった大畠一也さんの父・正晴さんは「名前を隠してもいられない。この世から身体拘束がなくなれば本望。家族の思いが世に伝われば、あの子の思いも晴れるのではないか」と訴えた。

石川県にある精神科病院の男性(当時40歳)が入院中に亡くなったのは、違法な身体拘束を受けたことが原因だとして、男性の遺族が8月27日、病院を運営する社会福祉法人を相手取り、約8630万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。

提訴翌日の28日、東京・霞が関の司法記者クラブで、男性の遺族は氏名と顔を公表して会見を開いた。亡くなった大畠一也さんの父・正晴さんは「名前を隠してもいられない。この世から身体拘束がなくなれば本望。家族の思いが世に伝われば、あの子の思いも晴れるのではないか」と訴えた。

●拘束を外された直後に亡くなる

訴状によると、一也さんは25歳の頃に統合失調症の診断を受けた。2016年12月、それまでにも通院や入院歴があった被告の病院に入院。14日から「前日にスタッフへの暴力行為あり」として手足と胴体を拘束され、20日午前10時ごろ拘束を外された直後に亡くなった。当初病院側からは「死因は心不全」と説明を受けたが、司法解剖の結果、死因は肺血栓塞栓症と判明した。

肺血栓塞栓症は、肺動脈に血栓(血液の塊)が詰まる病気。その血栓の9割以上は脚の静脈内にでき、それが肺動脈に運ばれることで起こる。エコノミークラス症候群とも呼ばれる。

精神保健福祉法にもとづく基準(厚生労働省告示)では、身体拘束の対象となる患者は(1)自殺や自傷行為が著しく切迫している場合、(2)多動または不穏が顕著、(3)放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合ーーの3要件と示されている。

身体拘束問題に取り組む長谷川利夫・杏林大学保健学部教授は、会見で、一也さんはこれらの3要件に当てはまらず、身体拘束は要件に当てはまらない違法なものであると指摘。

また、「医療事故調査制度」に基づき行われた院内事故調査では9人の委員のうち5人が被告の病院の職員だったことについて「このような委員構成を認めている制度自体がおかしい。人を死なせても不問に付すという制度は変えなければいけない」と制度の不備を訴えた。

●病院側は身体拘束について説明せず

遺族は一也さんの入院中、一度も面会を許されず、亡くなった20日に突然病院から「一也さんが亡くなりました」と電話を受けた。9月上旬には、院長から「壁とベッドの間に挟まれて亡くなった」と説明を受け、身体拘束については全く聞かされなかった。身体拘束の事実は、裁判所を通じた証拠保全で入手したカルテで判明した。

正晴さんは「(亡くなる前)洗濯物やおやつを持って病院に足を運んだけど、顔すら見せてもらえませんでした。病院からの最初で最後の電話が『息子さんが亡くなりました』でした。息子の口から『お父さんこんなのやだ』と言われたら、病院変えることもできたはず。いまだに生きて帰ってきてくれるもんやと思っています」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る