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妻のヒミツのUSBメモリ、中身は男遊びの写真だらけ…黙って「証拠保全」したら犯罪?
2019年05月08日 09時42分

結婚6年目。妻の浮気を知った男性が「妻のUSBを見たり、写真をコピーして私のパソコンに取り込むと、罪になりますか?」と弁護士ドットコムに相談を寄せました。

ある日、妻が使用している車をスペアキーで開けた男性。そこにあったUSBメモリを拾って、パソコンで見てみると、外食した高級料理の写真や合コンで出会った男性の写真などが大量にありました。うち1枚は、浮気相手とみられる男性がホテルのベッドに写っていました。

男性は「疑いがありすぎてつい見てしまいました」と打ち明けます。妻に無断でこの画像を自分のパソコンに保存しておく行為は、法的にOKなのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。

結婚6年目。妻の浮気を知った男性が「妻のUSBを見たり、写真をコピーして私のパソコンに取り込むと、罪になりますか?」と弁護士ドットコムに相談を寄せました。

ある日、妻が使用している車をスペアキーで開けた男性。そこにあったUSBメモリを拾って、パソコンで見てみると、外食した高級料理の写真や合コンで出会った男性の写真などが大量にありました。うち1枚は、浮気相手とみられる男性がホテルのベッドに写っていました。

男性は「疑いがありすぎてつい見てしまいました」と打ち明けます。妻に無断でこの画像を自分のパソコンに保存しておく行為は、法的にOKなのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。

●刑法上の問題は?

無断で保存すると、写真を盗んだことにはなりませんか。

「情報を盗む行為に当たり、窃盗罪が成立するのではないか、とも思えます。しかし、現在の刑法が定める窃盗罪の対象は、『財物』に限定されています」

財物とは何を指しますか。

「財物とは、液体・気体・固体といった有体物であるという見解が通説です。

USBメモリ内のデータは情報に当たりますが、情報は財物には含まれないため、USBメモリのデータを自分のパソコンにコピーするだけでは、現在の刑法上は、窃盗罪で処罰されることはありません。

また、不正アクセス禁止法に触れるのではないか、と思われる方がいるかもしれませんが、不正アクセス禁止法は、コンピューターネットワークを通じて情報を不正に取得する行為を対象としているため、今回のようにUSBメモリのデータを見たような場合には問題となりません」

●損害賠償請求が認められるような違法性はない

では、なんの問題にもならないということでしょうか。

「男性の行為が犯罪にはならないとしても、プライバシー権との関係で、民事上の責任を負う可能性があるかを考えてみましょう。プライバシー権の定義は、『私生活上の情報をみだりに公開されない権利』と考えられてきました」

今回の相談者は、妻のUSBメモリを拾って、パソコンで見てみたそうです。

「車のスペアキーを男性が管理していたのであれば、男性が普段から車内に自由に出入りすることが許されていたと考えられます。

そうだとしても、USBメモリが妻のものだと分かっていて中身を確認したのだとすれば、USBメモリの中身は、通常、他人に見られることを想定しているものではないため、そのUSBメモリはプライバシー権の保護の対象だといえるでしょう。

ただ、USBメモリ内の情報を勝手に覗き見したり、USBメモリ内の写真を自分のパソコンに保存したりした行為をとらえて、プライバシー権侵害を理由に妻が損害賠償請求をしても、裁判においてこの請求が認められる可能性は低いです」

なぜでしょうか。

「プライバシー権の侵害を理由に損害賠償請求を認めた判例では、

(1) 1. 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがあり、
2.一般人が公開を欲しない、
3.一般の人々にまだ知られていない情報であるプライバシー情報を、
(2)公開・公表されることで、
(3)被害者本人に実際に不快・不安の感覚が生じたかどうか

を判断基準としているからです。

つまり、USBメモリのデータを覗き見たり、写真を保存したりするだけでは、この判断基準のうちの(2)『公開・公表』には当たらないため、損害賠償請求が認められるような違法性はない、ということになります」

●外部に公開したら慰謝料請求が認められる可能性

では、写真を公開・公表したら、違法性が認められうるということですね。

「はい。たとえば、USBメモリ内のデータを覗き見したことで得た私生活上の事実を含む情報を、外部に公表・公開したような場合には、プライバシー権の侵害があったとして、妻から慰謝料を請求され、認められる可能性があります。

このように、今回の事例の行為が罪になることはないわけですが、相手の『信頼』という最も回復が難しいものを失うことになるかもしれないということは、忘れてはいけません」

(弁護士ドットコムニュース)

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