モラハラで離職者を続出させるパート従業員を辞めさせたいです──。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は、自分の思い通りにならなければすぐにふてくされて、周りの従業員に対してパワハラ行為を繰り返したり、悪口などを吹き込む部下に頭を悩ませていると言います。
この問題従業員に、みんな「うんざり」しているようで、過去にこの部下のパワハラを理由に複数人の従業員が離職し、最近も「辞めたい」という従業員がでました。誰かを辞めさせても自分が責任取ってシフト多く入るわけでもありませんし、自分のミスでお客様に迷惑をかけても、言い訳ばかりしてろくに謝罪もしないばかりか自分の非を認めません。
また、客に迷惑をかけるミスをした場合、相談者の上司に報告する義務がありますが、「自分にとって都合が悪いものだから」として報告せずに隠ぺいしようとします。
相談者は、何度もこの部下に注意したり、「勝手なことするな」と怒りましたが「すいません」の一言もなく出てくるのは言い訳や屁理屈ばかりで、反省するどころか「責任者が鬱陶しいからクビにしろ」と相談者の上司に言う始末です。
この部下は、過去にハラスメントで減給処分をうけており、相談者は「これだけどうしょうもないとしか言いようのない従業員は、懲戒免職は可能でしょうか?」と疑問に思っているようですが、可能なのでしょうか。加藤寛崇弁護士に聞きました。
●「会社対応の問題として考えるべき」
──他の従業員を複数退職させたり、上司にミスを報告しない、言い訳ばかりで自分の非を認めない上、注意されると「クビにしろ」と逆恨みするようなパート従業員を懲戒処分にする事は可能でしょうか。
懲戒処分の有効・無効を考える上で必要なのは、具体的事実(いつ、どこで、なにを、どのようにして、どういう結果が生じたか)です。
その上で言えば、懲戒解雇を含めて懲戒処分をするには、まず、就業規則に懲戒をすることができること及びその種別・理由の規定が必要です。といっても、理由としては「勤務態度不良」といった概括的な定めで構いません。
今回のケースについては、具体的な言動や証拠の有無などの詳細が不明のため正確な判断はできませんが、前述の規定があるという前提で考えるなら、一般的には、パワハラをくり返す、ミスをわざと隠す、といった非違行為がくり返されており、指導しても改善が見込めない従業員は懲戒処分に値することも多いでしょう。
──仮に減給など懲戒処分を受けた後も、さらにパワハラをして離職者を出すような問題行為を行った場合、懲戒免職する事は可能でしょうか。
一般には、一度非違行為で処分を受けながら改まらず、同種行為をくり返すのであれば、それだけ悪質であるとして、懲戒解雇が有効となる可能性が高くなるでしょう。
●「会社の義務違反にもなる」
──相談者としては、処分を求める以外の手段は何かあるのでしょうか。
相談者にとっては、問題社員を懲戒解雇できるかどうかより、自分にとっての負担となることが問題なのだろうと思います。とすれば、問題社員に適切に対処してくれない会社の対応の問題として考えるべきだと思います。
会社には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」という安全配慮義務があり(労働契約法5条)、その一環として、職場環境調整義務もあることは一般に認められています。簡単に言えば、「働きやすい職場環境」を整えるようにする義務、ということです。
問題社員に適切に対処せずに、上司である相談者に問題社員への対応を丸投げしたりしていれば、会社の義務違反にもなるでしょう。
相談者としては、むしろ、会社に対して安全配慮義務・職場環境調整義務として問題社員への適切な対処を求めるべき問題です。きちんと記録に残る形で、「私だけでは対処しきれないので、会社として適切に対処してほしい」と会社に求めるべきでしょう。