6523.jpg
絶えない大学生の飲酒死亡事故、「未成年飲酒」と「強要」の法的問題を再確認
2017年05月09日 09時47分

慶應義塾大学の男子学生が2月、サークルの春合宿の飲み会後に救急搬送され、死亡する事故が発生した。慶應大が4月17日に、事実関係を公表して、サークルを無期限活動休止にしたことから大きな話題となった。

大学生の飲酒については、指導が強化されているが、それでも事故が起きなくなったわけではない。今回は飲酒の強要もなく、未成年飲酒もなかったとのことだが、やはり懸念されるのはこの2つだ。

未成年飲酒と飲酒強要の法的問題について、冨本和男弁護士に聞いた。

慶應義塾大学の男子学生が2月、サークルの春合宿の飲み会後に救急搬送され、死亡する事故が発生した。慶應大が4月17日に、事実関係を公表して、サークルを無期限活動休止にしたことから大きな話題となった。

大学生の飲酒については、指導が強化されているが、それでも事故が起きなくなったわけではない。今回は飲酒の強要もなく、未成年飲酒もなかったとのことだが、やはり懸念されるのはこの2つだ。

未成年飲酒と飲酒強要の法的問題について、冨本和男弁護士に聞いた。

●未成年に飲ませた場合は?

「『未成年者飲酒禁止法』という法律があります。親権者または親権者に代わって監督する人は、未成年者の飲酒を止めるべきだと定めています(同法1条4項、2条2項)。これに違反した場合、科料(千円以上1万円未満)になります。

また、バーなどの営業者が、未成年者に酒を提供した場合、50万円以下の罰金ということもあります(同法1条3項、2条1項)」

同じ大学のサークル仲間の場合はどうなるのか。

「サークル仲間はこれにあてはまらないと考えます。

未成年者飲酒禁止法は、飲酒による未成年者の心身への悪影響から未成年者を保護するための法律です。

親権者または親権者に代わって監督する人に未成年者の飲酒を止める義務があるとされているのは、こうした人たちは、未成年者の生活面全般にわたって監督できる立場にある以上、未成年者の飲酒を当然止めるべきと考えられるからです。

未成年者の飲酒を止めなければいけない親権者に代わって監督する人は、親権者から依頼を受けて未成年者を監督する人や、事情によって親権者が未成年者の側で監督することができない場合、親権者に代わって未成年者の生活全般にわたって監督できる人のことだと考えられます。サークル仲間が該当するかといえば、なかなか難しいでしょう」

とはいえ、そもそも未成年の飲酒自体が法律で禁止されており、サークル仲間が飲酒をすすめたり、黙認することは絶対にやめた方がいいだろう。

●飲酒を強要した場合は?

では、飲酒を強要した場合はどのような問題があるのか。

「飲酒を強要した場合、強要罪になる可能性があります。強要罪は,暴行・脅迫を手段として他人に義務のないことをさせた場合に成立する犯罪です。強要罪になる場合,3年以下の懲役になる可能性があります。

脅迫というのは相手に何らかの危害を加えることを告げて怖がらせることですが、動作による場合も含まれます。

したがって、飲まないと何らかの危害を加えるような言動をして飲酒させたような場合、強要罪になると考えます。

また、酔い潰そうとして、飲酒を強要した場合、傷害罪になる可能性もあります。急性アルコール中毒になってしまったら、過失傷害罪に問われる可能性もあります。もし死亡させてしまったら、傷害致死罪も考えられますので、絶対にやめておきましょう」

冨本弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る