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「見張りをしただけ」と訴えるオウム平田被告人 「一部否認」に込められた意味とは?
2014年02月13日 18時24分

オウム真理教の元幹部・平田信被告人の裁判が1月中旬、東京地方裁判所で始まった。警察庁から特別手配され、十数年にもわたる逃亡生活をしていた被告人の裁判とあって、大きな注目を集めている。

報道によると、平田被告人は、1995年に東京都品川区で起きた公証役場事務長の拉致事件など、3つの事件で起訴されている。このうち、公証役場事務長の拉致事件については、「事前に計画を知らず、消極的に見張り役をしただけ」などと主張し、起訴事実の一部を否認しているという。

もし平田被告人が単なる見張り役にすぎなかったとしたら、罪の重さが変わってくるのだろうか。平田被告人の「一部否認」には、どのような意味があるのか。刑事事件にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。

オウム真理教の元幹部・平田信被告人の裁判が1月中旬、東京地方裁判所で始まった。警察庁から特別手配され、十数年にもわたる逃亡生活をしていた被告人の裁判とあって、大きな注目を集めている。

報道によると、平田被告人は、1995年に東京都品川区で起きた公証役場事務長の拉致事件など、3つの事件で起訴されている。このうち、公証役場事務長の拉致事件については、「事前に計画を知らず、消極的に見張り役をしただけ」などと主張し、起訴事実の一部を否認しているという。

もし平田被告人が単なる見張り役にすぎなかったとしたら、罪の重さが変わってくるのだろうか。平田被告人の「一部否認」には、どのような意味があるのか。刑事事件にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。

●「共犯」には3つの種類がある

「そもそも犯罪は、1人の人間によって実行される場合もありますが、複数の人間が関与して実行される場合も少なくありません」

このように萩原弁護士は切り出した。いわゆる「単独犯」の犯罪もあれば、「共犯」の犯罪もあるというわけだ。刑法では、共犯について、いくつかの種類に分けている。

「刑法が規定しているのは、『共同正犯』(60条)、『教唆犯』(61条)、『幇助犯=従犯』(62条)の3つです」

それぞれ、どのような違いがあるのだろうか。

「共同正犯とは、2人以上の人間が『共同して』犯罪を実行した場合を言います。共同正犯とされると、犯罪の一部しか実行していなくても、その犯罪全体について責任を問われます。共同正犯者の各自は、互いに意思の連絡をとって、協力し合いながら犯罪を実現するものだからです」

さらに、共同正犯とされる場合について、萩原弁護士は次のように続ける。

「たとえ犯罪行為そのものを直接分担していなくても、犯罪行為そのものに匹敵するほどの重要な役割を分担していたり、犯行計画立案に関与しているなど、その犯罪を実現するために、『本質的な寄与』をしたと認められる場合にも、その者は『共同正犯』とされます。このような犯罪行為そのものを分担していない共同正犯のことを『共謀共同正犯』と言います」

●「共謀共同正犯」なのか、それとも「幇助犯」なのか

組織型の犯罪では、リーダー役が共謀共同正犯とされることが多い。オウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件でも、サリンを直接まいたわけではない麻原彰晃・教団代表(本名・松本智津夫)が共謀共同正犯として起訴され、死刑判決を受けている。

では、共犯のそのほかの類型である「教唆犯」と「幇助犯」は、それぞれどのようなものなのか。

「教唆犯は、他人に犯罪を実行するよう教唆すること、すなわち、そそのかすことをさします。一方、幇助犯(=従犯)は、『正犯者』が犯罪を実行するのを容易にすることです。この幇助犯の場合、その刑は、『正犯』の刑から減軽されます」

つまり、同じ共犯でも、共同正犯になるか幇助犯になるかで、刑の重さが変わってくるのだ。

「報道によると、公証役場事務長の拉致事件について、検察官は、平田被告人を逮捕監禁罪の『共謀共同正犯』として起訴しているようです。これに対し、弁護人は、<平田被告人は公証役場事務長を車で連れ去る際に『見張り』をしただけで、同人の行為は『幇助犯=従犯』にすぎない>と反論しています」

検察官も弁護人も、平田被告人が拉致事件の「共犯」であることは認めている。しかし、「共謀共同正犯」なのか、「幇助犯」なのかで主張が対立しているということだ。

「検察官と弁護人のどちらの主張が認められかは、平田被告人が『直接犯罪行為そのものを分担していなくても、犯罪行為そのものに匹敵する程の重要な役割を分担していたり、犯行計画立案に関与しているなど、その犯罪を実現するについて本質的な寄与をした』ということを、検察官が合理的な疑問を入れる余地なく証明できるか、にかかっています」

裁判のポイントについて、萩原弁護士はこのように指摘していた。今後の公判の行方を追っていくとき、頭に置いておきたい点といえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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