6684.jpg
元ユーザーの個人情報さらして炎上した「ゴルスタ」終了、法的にどんな問題があった?
2016年09月07日 10時10分

元ユーザーの個人情報をツイッターに書き込むなどして、ネットで炎上した中高生限定スマートフォン向けアプリ「ゴルスタ」をめぐって、運営会社のスプリックスは9月上旬、同アプリのサービス終了を発表した。

ゴルスタは2014年10月、「全国の中高生と友達になれる」をキャッチフレーズにサービスを開始。運営担当者が今年8月、ゴルスタの運営方針を批判していていた元ユーザーの住所(都道府県)と氏名を公式ツイッター上でさらしたうえ、「警察に通報します」などと警告をおこなったことから、批判されていた。

同社によると、「ゴルスタはアプリとしてユーザーの個人情報は取得していない」が、この元ユーザーが過去に、ゴルスタのイベントに参加していたことから、氏名などを取得していたという。今回批判された個人情報(氏名、都道府県)をSNS上にさらす行為は法的にどんな問題があるのか。インターネット問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

元ユーザーの個人情報をツイッターに書き込むなどして、ネットで炎上した中高生限定スマートフォン向けアプリ「ゴルスタ」をめぐって、運営会社のスプリックスは9月上旬、同アプリのサービス終了を発表した。

ゴルスタは2014年10月、「全国の中高生と友達になれる」をキャッチフレーズにサービスを開始。運営担当者が今年8月、ゴルスタの運営方針を批判していていた元ユーザーの住所(都道府県)と氏名を公式ツイッター上でさらしたうえ、「警察に通報します」などと警告をおこなったことから、批判されていた。

同社によると、「ゴルスタはアプリとしてユーザーの個人情報は取得していない」が、この元ユーザーが過去に、ゴルスタのイベントに参加していたことから、氏名などを取得していたという。今回批判された個人情報(氏名、都道府県)をSNS上にさらす行為は法的にどんな問題があるのか。インターネット問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●どんな法的問題があるか?

インターネット上でも話題になっていることからも分かる通り、問題があるといえます。氏名は個人を識別することができるものであり、個人情報に当たるものであることは明らかですので、収集した個人情報を、本人の同意なく目的外に利用してはいけないですし、また、第三者に提供することもしてはいけません。

まさか収集した個人情報をツイッターにさらすということが目的とされていることはないでしょうし、また、公表(第三者への提供)について了解を得ていたということもないでしょう。ですから、個人情報保護法に抵触する行動を取っているということができます。

また、氏名そのものがプライバシーの対象となるかについては議論があり得るところですが、都道府県と組み合わせることで、全くその人を知らない第三者には分からないとしても、その人物の属性の幾つかを知る者から見れば、誰のことを指しているかを認識することが可能になり、プライバシー情報に当たると見ることができると思われます。そのため、プライバシー侵害と見る余地もあります。

さらに、具体的にどのような形で投稿したのかは分かりませんが、当該ユーザーが迷惑行為をしていたということを含めてさらしていたようです。そうだとすると当該ユーザーの社会的評価が下がることになってしまうため、名誉権侵害が成立する余地もあります。

ただし、やり過ぎているとは思いますが、刑法上違法とまで評価できるような行動とまでは言えないのではないかと思います。

●炎上のリスクを避けるためには?

炎上の「リスク」は、当然のことですが、炎上の「前」に発生しています。炎上が発生している場合は、それは「リスク」ではなく「クライシス」という局面になります。炎上は様々な要因で発生しますが、リスクを避けるためには、リスク要因をいかに減らせるかということにかかってきます。

今回のケースでは、従業員の違法行為と言われかねない行為のほか、批判は一切許さず、批判をしたらアカウントを削除するといった「言論統制」と評されるほどの行動が、社会的に見て行きすぎたものであることが主たる要因のようです。

個人情報をSNSにさらすといった行為は、法的にはともかく、社会的に見ても許されることではないということは、一般的に理解できることではないかと思います。このような、社会的に許されない行動を取らないよう、従業員教育を徹底することができていなかったということが問題といえます。

また、そもそも問題であるということが事前に分かっていれば、これを改めることが可能だったはずです。「言論統制」という点は、そのような評価がされているということ自体から、ある種の異常な状態になっているということが理解できたはずです。そのため、一般社会から見たらどのように見られるのか、という客観的視点が欠けていたことが問題といえそうです。

炎上リスクを避けるための方法といっても、それほど難しいものではありません。一つの指標としては、社会的に見て許されないことはしないよう従業員教育を徹底する、社内・業界独自のルールが一般社会ではどのように見られるのか客観的視点を持つ、ということが挙げられるのではないかと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る