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ウーバー配達員「アカウント停止」めぐり運営会社と和解、「個人事業主扱い」の問題は残されたまま
2025年05月19日 19時17分
#ウーバーイーツ #ギグワーカー #労働者性 #個人事業主

飲食の宅配代行サービス「ウーバーイーツ」(Uber Eats)の男性配達員2人が、仕事に用いるアカウントを突然停止されたのは不当だとして、運営会社を相手取り損害賠償を求めていた裁判で、原告と被告側の和解が東京地裁で成立した。和解は4月11日付。

原告の代理人らが5月19日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開いて明らかにした。運営会社が、原告側に「一定の額」の解決金を支払うという。

配達員はアカウントを停止されると、働くことが不可能となり、収入を絶たれることになる。原告代理人の川上資人弁護士は、突然のアカウント停止は、事前に契約解除の予告をおこなうことを義務づけたフリーランス新法(2024年施行)に違反すると指摘し、ウーバー側の対応を批判した。

訴状などによると、原告の男性配達員2人は、身に覚えがないにもかかわらず「コミュニティガイドラインに違反している」として、ウーバー側から一方的にアカウントを永久停止されたという。

原告の1人はその後、アカウントを有効化されたが、ウーバー側からは「システムの誤認知による誤判定」と説明されたという。

飲食の宅配代行サービス「ウーバーイーツ」(Uber Eats)の男性配達員2人が、仕事に用いるアカウントを突然停止されたのは不当だとして、運営会社を相手取り損害賠償を求めていた裁判で、原告と被告側の和解が東京地裁で成立した。和解は4月11日付。

原告の代理人らが5月19日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見を開いて明らかにした。運営会社が、原告側に「一定の額」の解決金を支払うという。

配達員はアカウントを停止されると、働くことが不可能となり、収入を絶たれることになる。原告代理人の川上資人弁護士は、突然のアカウント停止は、事前に契約解除の予告をおこなうことを義務づけたフリーランス新法(2024年施行)に違反すると指摘し、ウーバー側の対応を批判した。

訴状などによると、原告の男性配達員2人は、身に覚えがないにもかかわらず「コミュニティガイドラインに違反している」として、ウーバー側から一方的にアカウントを永久停止されたという。

原告の1人はその後、アカウントを有効化されたが、ウーバー側からは「システムの誤認知による誤判定」と説明されたという。

●ある日、アプリを立ち上げたら…

訴状などによると、原告のAさん(40代)は2016年11月から、ウーバーイーツの配達員として働き始め、アカウントが停止されるまで6年にわたり稼働していた。

ところが2022年8月、アプリを立ち上げたところ、画面に「アカウントの確認が必要です」と表示され、配達ができない状態になった。

Aさんはウーバーに問い合わせたが、「コミュニティガイドライン違反によりアカウント停止」の通告を受けた。違反した事実はないとメールでうったえたが、ウーバー側は具体的な理由の説明をせず、アカウントの停止を続けたという。

2021年2月ごろから配達員として働いていたBさん(40代)も2022年5月、突然アカウントを停止された。Bさんも、Aさんと同様、ウーバーに問い合わせたところ、コミュニティガイドライン違反があったという回答しか得られなかった。

●調停を申し立てたが「不成立」に終わっていた

2人から依頼を受けた代理人が2022年11月、アカウントの復旧や、アカウント停止がなければ得られるはずだった逸失利益についての支払いなどを求める通知書をウーバー側に送付した。

これに対して、ウーバー側はAさんのアカウントは有効化したが、Bさんについてはアカウントの永久停止は解除できないとした。

2人は、アカウント停止によって生じた損害の賠償と、Bさんのアカウント復旧を求める調停を東京簡易裁判所に申し立てた。しかし調停は不成立に終わり、2人は2023年9月、東京地裁に提訴した。

●ユニオン「配達員同士がつながらないと解決しない」

和解成立にあたり、Aさんは代理人を通じて次のようにコメントした。

「(ウーバー側には)お互いの立場を同等に保ちつつ社会に貢献できる仕組みを築いていってほしいと考えています。ぜひとも、ウーバーイーツには理不尽な説明や判定であると抗議された場合への対処を改善していただきたいです」

今回の裁判の意義について、原告代理人の棗一郎弁護士はこの日の記者会見で次のように述べた。

「ウーバーイーツのようなプラットフォームで働く人たちは個人事業主扱いとなっていますが、本来であれば労働者の解雇事件として考えるべきだと思っています。しかし、労働者性を争う事件は、判決が出るまでに何年もかかります。

今回はウーバー側の契約違反を指摘して、男性2人にはアカウント停止の理由がなかったことを訴えました。そのため、労働裁判ではなく通常の裁判として審理が進み、早期に和解が成立しました。そこにこの裁判の意義があると思っています」

この訴訟を支援してきたウーバーイーツユニオンの執行委員長、渡辺雅史さんは記者会見で、こうした突然のアカウント停止について、定期的に相談があると明かした。そのうえで「配達員同士がつながっていかないと、解決しないなと思いました」と語った。

●ウーバーイーツ「和解が成立したことは事実」

ウーバーイーツジャパンは、弁護士ドットコムニュース編集部の取材に対して、次のようにコメントした。

「和解が成立したことは事実です。個別の訴訟内容については原則して公開しておりません。

Uber Eatsでは、アカウント停止についてお問い合わせいただいた配達パートナーには、調査をし個別に対応しています。

Uber Eatsは、利用規約およびコミュニティガイドラインに違反する行為が確認された場合、アカウントの停止を含む措置を講じております。これらの対応は、すべて当社の定める規定に基づき、客観的な基準に従い適切に実施しております。

アカウント停止に関する基準については、透明性を重視し、配達パートナーの皆さまにご理解いただけるよう努めています。

具体的には、アカウント停止の可能性がある事例や、停止を回避するための対応策について、弊社ウェブサイトおよび配達パートナー向けガイドブックにて、詳細な情報を提供しています」

編集部注:ウーバーイーツジャパンのコメントを追記しました(2025年5月20日14時)

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