6784.jpg
20年前に借りた本を「返せ」と言われた・・・「もう時効だよね」と拒否できる?
2014年05月04日 18時20分

「20年ほど前に借りた本の返却を請求されましたが、返還義務はありますか?」。そんな内容の質問がネットの相談サイトに投稿されていた。本の借主としては、「いまさら返せと言われても困る」という気分なのだろう。

法律には「時効」という制度があって、お金を貸した人が何もしないで放っておくと、時間の経過によって、「お金を返してほしい」と請求する権利が消滅してしまうとされている。本を借りた場合も、時効のおかげで、借主は返さなくてよくなるのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

「20年ほど前に借りた本の返却を請求されましたが、返還義務はありますか?」。そんな内容の質問がネットの相談サイトに投稿されていた。本の借主としては、「いまさら返せと言われても困る」という気分なのだろう。

法律には「時効」という制度があって、お金を貸した人が何もしないで放っておくと、時間の経過によって、「お金を返してほしい」と請求する権利が消滅してしまうとされている。本を借りた場合も、時効のおかげで、借主は返さなくてよくなるのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

●所有権は「消滅時効」にかからない

「ひと口に時効といっても、実は、2つの種類があります。一つは、時間の経過によって権利を取得できる『取得時効』。もう一つは、時間の経過によって権利がなくなってしまう『消滅時効』です」

こう石井弁護士は切り出した。では、本を誰かに貸した場合も、一定の時間の経過すると、「本を返してくれ」という権利がなくなってしまうのだろうか。

「いいえ。自分で買った物に対する『所有権』は、どれだけ時間が経過しても『消滅時効』にかからないとされています。したがって、自分の本を貸した場合は『消滅時効』は問題となりません。

その場合に問題となるのは、借りた側に『取得時効』が成立するかどうかです」

では、取得時効が成立するのは、どんな場合だろう?

「通常、『取得時効』は、自分の物として20年間持ち続けることで成立します。『取得時効』の成立により、20年間持ち続けていた者が新たに所有権を取得します。一方、もとの所有者は所有権を失うことになります」

●「取得時効」が成立するための条件とは?

本を20年間、借り続けていれば、取得時効が成立するのか。

「実は、ただ借りているだけでは、『自分の物として』持ち続けていたとは言えないので、取得時効は成立しません。そう言えるためには、所有者に対して『この本は今からは私のものだ!』とはっきり宣言しておく必要があります。でも、そんな宣言をされたら所有者としては放っておくことはないでしょうね」

そうなると、本を借りている場合に取得時効が成立することはほとんどないといえそうだ。

「取得時効が成立していなければ、貸し主はその本の所有者として、本の返還を請求することができます」

このように石井弁護士は述べたうえで、次のように注意をうながしていた。

「法律の理論としては、これまで説明したとおりですが、もしも『返せ・返さない』のトラブルがこじれて裁判になった場合、所有者はその本が自分の所有物であることを証明する必要があります。この証明に失敗すると、裁判に負けてしまうおそれがあるので、注意が必要です」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る