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「迷惑客拒否OK」で「民泊」のガラパゴス化を回避…旅館業法見直し案の見方
2016年06月29日 10時18分

厚生労働省が、ホテルや旅館などで「迷惑客」の宿泊を断れるよう、旅館業法を見直す方針を示した。

旅館業法では、ホテルや旅館の営業者は原則として宿泊を拒絶できず、例外的な場合に宿泊を拒否できると定められている。訪日旅行客の増加を受けて、空き部屋などに有料で泊める「民泊」を営業しやすくするために、この要件を緩和する。障害や人種などで、不当な差別を理由とするような場合は、拒否できないよう、条件は残す。

この方針について、差別を助長するのではないかという声も上がっているが、これまでのルールはどうなっていたのか。厚労省の方針をどう考えればいいのか。旅館業法に詳しい金子博人弁護士に聞いた。

厚生労働省が、ホテルや旅館などで「迷惑客」の宿泊を断れるよう、旅館業法を見直す方針を示した。

旅館業法では、ホテルや旅館の営業者は原則として宿泊を拒絶できず、例外的な場合に宿泊を拒否できると定められている。訪日旅行客の増加を受けて、空き部屋などに有料で泊める「民泊」を営業しやすくするために、この要件を緩和する。障害や人種などで、不当な差別を理由とするような場合は、拒否できないよう、条件は残す。

この方針について、差別を助長するのではないかという声も上がっているが、これまでのルールはどうなっていたのか。厚労省の方針をどう考えればいいのか。旅館業法に詳しい金子博人弁護士に聞いた。

●世界的には、「客を選ぶのはホテルの自由」が原則

「1948年に施行された旅館業法では、5条で、ホテル・旅館の営業者は、宿泊を拒絶できないが、次の場合は、例外的に、拒絶できると定めています。

(1)伝染病にかかっていると明らかに認められるとき、

(2)賭博その他の違法行為、または風紀を乱す行為をする虞(おそれ)があると認められるとき、

(3)施設に余裕がないとき、その他都道府県が条例で定めるとき(要するに、満室なら断れるということです)」

金子弁護士はこのように指摘する。なぜ、こうした規制の緩和が検討されているのか。

「2008年に、米国シリコンバレーでスタートした民泊サービス『Airbnb』は、世界的に活用されており、今や、年間売り上げ300億ドルに達する巨大企業に育っています。日本でも、最近利用が急増しています。

このシステムの特徴は、ゲスト側は、利用者の過去のコメントを参考に、宿泊するかどうかを決められる一方、ホスト側は、登録客の評価を参考に、迷惑客などを排除できる点です。

要するに、『泊めるかどうかは自由だが、自己責任で、不良な宿泊所、不良なゲストを排除する』ということです。

この自由が認められないと、安くて充実した宿泊がしたいという来日客を排除することになり、日本だけが『ガラパゴス状態』になってしまうでしょう」

世界的には、日本のような規制は珍しいのか。

「世界的にみると、日本とは逆に、一般のホテルでも、契約自由の原則に基づき、ゲストもホテルも、『相手を選ぶのは自由』というのが原則です。旅館業法のような規制は、まずありません。そのため、『Airbnb』のようなシェアリングサービスが急速に普及しているのです」

●「拒否できるかの線引難しく、慎重な議論必要」

「諸外国でも、人種、宗教、思想信条、緊急の場合(周辺に、代替する宿泊場所がない場合)など、人権にかかわる場合には、宿泊拒否は違法としていることが普通です。

とはいえ、どこの国でも、拒否できるか否かの線引きは難しく、争われた裁判例も多いです。

日本でも、紛争になったケースは少なくありません。裁判で争われたケースとしては、すでに完治しているハンセン病療養所入所者の宿泊を拒否したケース(裁判では違法とされました)や、右翼団体の街宣車の騒音にさらされるとして、日教組の宿泊をホテル側が拒否したケース(裁判では違法と判断されました。ただし、このケースは世界的には合法と判断されるケースだったと思います)があります。

今回の改正で、世界の例に合わせ、原則宿泊拒否を自由として、ダメな例を列挙するのか、逆に原則禁止のまま、許容される例を増やすかは、今後の議論によるでしょう。拒否できるか否かの線引きは難しく、慎重な議論が必要だと思います」

金子弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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