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ブラック校則の源流、「丸刈り強制」違憲訴訟から続く髪型強制…多様性は実現できるか
2018年07月22日 09時17分

生徒を縛る理不尽なブラック校則が問題になっていますが、かつて、男子生徒の丸刈り強制の校則が、裁判に発展したことを知っていますか。

ある男子生徒とその両親は、こんな校則は憲法違反だから無効だ、として、校長を相手に訴えを起こしました。これが、「憲法判例百選」にも掲載されている有名な裁判例、丸刈り校則事件(熊本地裁昭和60年11月13日判決)です。

男子生徒の丸刈りはこの中学校が創立されたころからの慣行でした。訴えられた校長は、この慣行を校則として明文化したのです。

生徒を縛る理不尽なブラック校則が問題になっていますが、かつて、男子生徒の丸刈り強制の校則が、裁判に発展したことを知っていますか。

ある男子生徒とその両親は、こんな校則は憲法違反だから無効だ、として、校長を相手に訴えを起こしました。これが、「憲法判例百選」にも掲載されている有名な裁判例、丸刈り校則事件(熊本地裁昭和60年11月13日判決)です。

男子生徒の丸刈りはこの中学校が創立されたころからの慣行でした。訴えられた校長は、この慣行を校則として明文化したのです。

●丸刈りの強制は「憲法に違反しない」

男子生徒らは、(1)憲法14条は平等を保障しているのに、地域によっては丸刈り校則がない。そもそも、女子は丸刈りが強制されていないのに男子だけが丸刈りなのは平等ではない、(2)髪型の自由は憲法21条が保障している思想の表現だ、(3)憲法31条は適正手続きを保障しているはずなのに、法律による手続きを踏まずに身体の一部である髪の切除を強制するのはおかしい、と校則が憲法違反であることを主張しました。

ところが、裁判ではどの主張も認められませんでした。裁判所は、(1)もともと丸刈りの慣行があったことはだれもが知っているうえに、男女によって髪型の習慣は異なること、(2)髪型は思想の表現とはいえないこと、(3)校則に従わないからといって、強制的に髪を切られるわけではないことを理由に、憲法違反ではないと示したのです。

●丸刈り校則は人権侵害、撤廃へ

丸刈り校則は無効とはなりませんでした。しかし、この事件は単に原告の敗訴で終わったわけではなく、そもそも、髪型の自由は憲法13条で保障される基本的人権なのではないか、といった疑問が社会で沸き上がるようになりました。

丸刈り校則は人権侵害であるとして、校則撤廃のために立ち上がる人たちがあらわれます。その1人である宮脇明美さんは2000年に熊本県で「中学校の丸刈り校則をなくす会」を立ち上げました。弁護士会も人権侵害であるとの立場を表明。校則廃止を求めて、教育委員会に勧告をおこないました。

こうした活動の結果、丸刈り校則は徐々に廃止されていきました。「中学校の丸刈り校則をなくす会」のホームページによれば、 2006年9月に熊本県下の丸刈り校則が全廃されたということです。もちろん、この事件で勝訴した中学校からも消えました。

●丸刈り裁判は「校内秩序の維持と生徒のライフスタイルに関する大きな問題提起」

今となっては、丸刈り強制は現実的ではありませんが、髪型の強制問題はたびたび話題になります。この裁判例を通じて、今の問題をどう考えればいいのでしょうか。学校問題に詳しい高島惇弁護士は次のように語ります。

「丸刈り校則事件判決は、校内秩序の維持と生徒のライフスタイルに関する大きな問題提起だったと評価できます。現に、その後丸刈り校則はほぼ廃止されたのであって、未成年者も幸福追求権の一環として様々な権利を主張できる事実が、社会的に浸透してきたと言えます。

そして、この問題は、黒髪の強制や性同一性障害を有する児童生徒への制服や髪型での無配慮といった、そのアイデンティティの本質に関わる局面においてより深刻化します。つまり、学校が児童生徒の均一化を図るあまり、少数の児童生徒に対し不合理な同調を求め、かかる同調を校則として周知させることは、児童生徒に少数派への差別意識を芽生えさせる結果にもなりかねません。

そのため、学校としても、現代社会における多様性を反映した教育が実現できるよう、定期的に校則を見直してその改善を図る必要があります」

たしかに、黒髪の強制は生まれつき地毛が茶色い学生にとっては大きな負担となります。ほかにも、首を傾げたくなる髪型の校則があちこちの学校にあるといわれています。

「校則については近年話題になっていますし、全国を見渡せば問題を含む校則がある事実は否定できないかと存じます。だとすれば、校則が制定された背景や現代社会における有用性を十分吟味した上で適宜改正することは、より良い学校教育を実現するために極めて重要なのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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