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最高裁は「一票の格差」をどう判断するか? 弁護士19人が「判決」を予想した
2013年04月10日 14時08分

昨年12月に行なわれた衆議院選挙をめぐって、2つの弁護士グループが選挙のやり直しを求める訴訟を全国で起こした。司法の判断は今年3月にあいついで示されたが、その中身は「違憲」あるいは「違憲状態」という厳しいものだった。

判決が出たのは、東京高裁、札幌高裁、仙台高裁など16件の訴訟。そのうち14件で「違憲」、残り2件で「違憲状態」という判決が下された。このうち、広島高裁と広島高裁岡山支部ではついに、戦後初の「選挙無効」にまで踏み込んだ判断が示された。

これらの判決を受けて、政府は「一票の格差」を是正するため、選挙の区割りを見直す議論を進めている。一方、広島県の選挙管理委員会は4月5日、岡山県の選挙管理委員会は8日、「選挙無効」という判決を不服として、最高裁に上告した。

はたして、昨年の衆院選の「一票の格差」問題について、最高裁はどのような判決を下すと予測されるだろうか。最高裁も広島高裁と同じように、「選挙無効」判決を出すのだろうか。

弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。

●<無効>が過半数を越える

弁護士ドットコムでは、登録している弁護士に意見を求めた。4つの選択肢から回答を選んでもらったところ、19人の弁護士から回答が寄せられ、次のような結果となった。

(1)違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない (東京高裁や札幌高裁などと同じ考え方)

   →9人

(2)違憲であり、選挙は「将来的無効」。一定の猶予期間が経過した後、無効となる (広島高裁と同じ考え方)

   →9人

(3)違憲であり、選挙は無効。猶予期間を設けない「即時無効」である (広島高裁岡山支部と同じ考え方)

   →1人

(4)その他(合憲も含む)

   →0人

このように、回答した弁護士のうち、<「将来的無効」となる>と<「即時無効」となる>を合わせた10人が、最高裁が「選挙無効」の判決を下すと予想し、過半数を占める結果となった。

「無効」と回答した弁護士のうち、「違憲であり、選挙は『将来的無効』。一定の猶予期間が経過した後、無効となる」と答えた弁護士は9人だった。その理由として、次のような意見が見られた。

「この問題については法律家の間で見解が分かれ、『違憲状態にとどまる』との論者もいよう。しかしながら、個人の尊厳に最高の価値をおき、徹底した法の下の平等を謳う我が憲法下においては個人の投票価値は平等であるべきと考える。よって、『合理的期間』を過ぎ、投票価値の格差が大きくなった今回の選挙については法の支配の下、人権保障の最後の砦である裁判所が『無効』と判断すべきである。

もっとも、過去の選挙まで無効としてしまうと国会議員がいなくなるなどの混乱等の弊害は大きい。そこで、選挙は『将来的無効』としつつ、一定の猶予期間が経過した後、無効となると考える」(大和幸四郎弁護士)

「一票の格差問題の判決については、これまでの最高裁であれば、違憲宣言にとどめるというのが予想されます。しかし、高裁判決は、全体的な無効ではなく、当該選挙区を無効としていること、遡及効を持たせないことで法令の効力を維持できること、からすれば、将来的無効の判断は十分にあり得ます。

また、一票の格差について、最高裁は年々真剣に取り組むようになってきております。最高裁の少数意見では、これまでも将来効判決は可能と考えられてきました。真の投票価値を実現が図られることを期待しております」(中村晃基弁護士)

さらに、回答者のうち1人は、「違憲であり、選挙は無効。猶予期間を設けない『即時無効』である」という意見を選んだ。その理由は、次のようなものだ。

「違憲無効とするのが最も論理的である。事情判決は根拠はないし、政治に配慮し過ぎることは司法救済の拒否に等しい。将来効判決は既に昭和50年代から少数意見などで唱えられ検討されてきたもので、今更この理論で弊害を回避する時期は過ぎている。実質的にみても前回最高裁判決は将来効判決と同等と評価できる。将来効とすると、それまでは現在の違憲・違憲状態下での議会運営が止まらず、瑕疵ある法律が成立してしまう」(野澤裕昭弁護士)

●「違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない」は9人

また、9人の弁護士が、「違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない」と回答した。その理由として、次のような意見があった。

「最高裁はこれまでの判例の流れを無視した一足飛びな判断は基本的にしませんので、高裁で2つ選挙無効の判決がでたと言っても、最高裁としては違憲の判断を示しつつも、選挙は無効としないだろうと予想します。

もっとも、高裁の多数が「違憲」の判断を示したことから、最高裁が「違憲状態」との判断にとどめる可能性も低いだろうと予測します」(秋山直人弁護士)

なお、<合憲>を含むその他の判決を予想を選択した弁護士は0人だった。

各地の高裁で「違憲」や「無効」という判決があいついだことを受けて、政府は「一票の格差」是正について、区割りを見直す議論を急いでいる。しかし、もはや、「0増5減」という継ぎ接ぎの対策ではなく、憲法の精神に基づいた根本的な対策がもとめられているのではないだろうか。

昨年12月に行なわれた衆議院選挙をめぐって、2つの弁護士グループが選挙のやり直しを求める訴訟を全国で起こした。司法の判断は今年3月にあいついで示されたが、その中身は「違憲」あるいは「違憲状態」という厳しいものだった。

判決が出たのは、東京高裁、札幌高裁、仙台高裁など16件の訴訟。そのうち14件で「違憲」、残り2件で「違憲状態」という判決が下された。このうち、広島高裁と広島高裁岡山支部ではついに、戦後初の「選挙無効」にまで踏み込んだ判断が示された。

これらの判決を受けて、政府は「一票の格差」を是正するため、選挙の区割りを見直す議論を進めている。一方、広島県の選挙管理委員会は4月5日、岡山県の選挙管理委員会は8日、「選挙無効」という判決を不服として、最高裁に上告した。

はたして、昨年の衆院選の「一票の格差」問題について、最高裁はどのような判決を下すと予測されるだろうか。最高裁も広島高裁と同じように、「選挙無効」判決を出すのだろうか。

弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。

●<無効>が過半数を越える

弁護士ドットコムでは、登録している弁護士に意見を求めた。4つの選択肢から回答を選んでもらったところ、19人の弁護士から回答が寄せられ、次のような結果となった。

(1)違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない (東京高裁や札幌高裁などと同じ考え方)

   →9人

(2)違憲であり、選挙は「将来的無効」。一定の猶予期間が経過した後、無効となる (広島高裁と同じ考え方)

   →9人

(3)違憲であり、選挙は無効。猶予期間を設けない「即時無効」である (広島高裁岡山支部と同じ考え方)

   →1人

(4)その他(合憲も含む)

   →0人

このように、回答した弁護士のうち、<「将来的無効」となる>と<「即時無効」となる>を合わせた10人が、最高裁が「選挙無効」の判決を下すと予想し、過半数を占める結果となった。

「無効」と回答した弁護士のうち、「違憲であり、選挙は『将来的無効』。一定の猶予期間が経過した後、無効となる」と答えた弁護士は9人だった。その理由として、次のような意見が見られた。

「この問題については法律家の間で見解が分かれ、『違憲状態にとどまる』との論者もいよう。しかしながら、個人の尊厳に最高の価値をおき、徹底した法の下の平等を謳う我が憲法下においては個人の投票価値は平等であるべきと考える。よって、『合理的期間』を過ぎ、投票価値の格差が大きくなった今回の選挙については法の支配の下、人権保障の最後の砦である裁判所が『無効』と判断すべきである。

もっとも、過去の選挙まで無効としてしまうと国会議員がいなくなるなどの混乱等の弊害は大きい。そこで、選挙は『将来的無効』としつつ、一定の猶予期間が経過した後、無効となると考える」(大和幸四郎弁護士)

「一票の格差問題の判決については、これまでの最高裁であれば、違憲宣言にとどめるというのが予想されます。しかし、高裁判決は、全体的な無効ではなく、当該選挙区を無効としていること、遡及効を持たせないことで法令の効力を維持できること、からすれば、将来的無効の判断は十分にあり得ます。

また、一票の格差について、最高裁は年々真剣に取り組むようになってきております。最高裁の少数意見では、これまでも将来効判決は可能と考えられてきました。真の投票価値を実現が図られることを期待しております」(中村晃基弁護士)

さらに、回答者のうち1人は、「違憲であり、選挙は無効。猶予期間を設けない『即時無効』である」という意見を選んだ。その理由は、次のようなものだ。

「違憲無効とするのが最も論理的である。事情判決は根拠はないし、政治に配慮し過ぎることは司法救済の拒否に等しい。将来効判決は既に昭和50年代から少数意見などで唱えられ検討されてきたもので、今更この理論で弊害を回避する時期は過ぎている。実質的にみても前回最高裁判決は将来効判決と同等と評価できる。将来効とすると、それまでは現在の違憲・違憲状態下での議会運営が止まらず、瑕疵ある法律が成立してしまう」(野澤裕昭弁護士)

●「違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない」は9人

また、9人の弁護士が、「違憲または違憲状態だが、選挙無効とまでは言えない」と回答した。その理由として、次のような意見があった。

「最高裁はこれまでの判例の流れを無視した一足飛びな判断は基本的にしませんので、高裁で2つ選挙無効の判決がでたと言っても、最高裁としては違憲の判断を示しつつも、選挙は無効としないだろうと予想します。

もっとも、高裁の多数が「違憲」の判断を示したことから、最高裁が「違憲状態」との判断にとどめる可能性も低いだろうと予測します」(秋山直人弁護士)

なお、<合憲>を含むその他の判決を予想を選択した弁護士は0人だった。

各地の高裁で「違憲」や「無効」という判決があいついだことを受けて、政府は「一票の格差」是正について、区割りを見直す議論を急いでいる。しかし、もはや、「0増5減」という継ぎ接ぎの対策ではなく、憲法の精神に基づいた根本的な対策がもとめられているのではないだろうか。

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