7003.jpg
心霊系YouTuber逮捕、廃墟ホテルの肝試しは「注意して」 弁護士が"警告"するワケ
2023年12月25日 11時12分

心霊スポットとして有名な廃墟ホテルで、肝試しに訪れた20代の男女4人に対して「不法侵入になる」などと迫り、金を脅し取ったとして、心霊系YouTuberの男女3人が恐喝などの疑いで逮捕された。

報道によると、3人は「不法侵入になる」「民事にするか刑事にするか選んで下さい」「示談なら、1人30万円払って下さい」として、被害者たちから合わせて120万円を脅し取った疑いが持たれている。

逮捕された3人のうち1人は容疑を認め、残り2人は否認しているという。一方で、他にも同じような"被害"を訴えている人もいるようだ。今回の事件について、刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

心霊スポットとして有名な廃墟ホテルで、肝試しに訪れた20代の男女4人に対して「不法侵入になる」などと迫り、金を脅し取ったとして、心霊系YouTuberの男女3人が恐喝などの疑いで逮捕された。

報道によると、3人は「不法侵入になる」「民事にするか刑事にするか選んで下さい」「示談なら、1人30万円払って下さい」として、被害者たちから合わせて120万円を脅し取った疑いが持たれている。

逮捕された3人のうち1人は容疑を認め、残り2人は否認しているという。一方で、他にも同じような"被害"を訴えている人もいるようだ。今回の事件について、刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

●廃墟ホテルに肝試しする法的問題

実は、今回の事件の被害者たちが、廃墟ホテルに肝試し目的で立ち入っていることから、違法な不法侵入となるのかが問題となります。

不法侵入は、建造物侵入罪(刑法130条)のことであり、ざっくり言うと、他人が管理する建造物に正当な理由なく管理権者の意思に反して立ち入ると成立します。

たとえ廃墟ホテルであっても、施錠されていたり、立ち入り禁止の表示があったりすれば、他人が管理する建造物といえ、無断に立ち入る行為は管理権者の意思に反します。また肝試し目的が正当な理由にならないことは言うまでもありません。

したがって、廃墟ホテルに肝試し目的で立ち入る行為は、建造物侵入罪となる可能性があります。

建造物侵入罪に該当しない場合であっても、「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建造物又は船舶の内に正当な理由がなくひそんでいた」行為として、軽犯罪法1条1号違反に問われる可能性もあります。

●「警察に通報するぞ」と脅かす法的問題

また、仮に被害者らの行為が不法侵入になるとして、「警察に通報するぞ」と言って脅す行為は脅迫になるのかが問題となります。

脅迫罪は、相手またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知することにより成立します(刑法222条)。

相手の違法行為や不正行為に対して「法的措置を取るぞ」とか「告発するぞ」と告知する行為について、正当な権利行使といえる場合には、脅迫罪は成立しませんが、真実の追究ではなく、単に畏怖させることが目的であれば、脅迫罪は成立するとされています(大判大正3年12月1日判決)。

今回の事件の場合、心霊系YouTuberを含む逮捕された3人は、警察に通報する意思はなく、単に畏怖させて金を取るのが目的だったと思われますので、判例の基準に従えば、脅迫罪が成立します。

そのうえで、犯人らは脅迫してお金を脅し取っていることから、最終的に恐喝罪(刑法249条)が成立することになります。

以上より、肝試し目的で廃墟に立ち入る行為は、建造物侵入罪や軽犯罪法違反に問われる可能性があり、悪質なYouTuberに漬け込まれるリスクもあるので、気を付けたほうがよいでしょう。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る