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65歳以上の「高齢受刑者」が増えている・・・「明日は我が身」と弁護士が解説
2016年01月30日 11時20分

2014年に刑務所に入った2万1866人のうち、1割を超える2283人が65歳以上の高齢者だったことが『平成27年版 犯罪白書』(法務省)で明らかになった。高齢者の占める割合が1割を超えたのは、1991年に統計を取り始めて以来、初めてだという。

白書によると、刑務所を出てから2年以内に再入所する人の割合は、高齢者の場合は24.9%で、29歳以下の11.5%と大きな開きがあった。

高齢者が犯す犯罪として、特に多いのはどのような犯罪で、その理由は何だろうか。そして、高齢者の犯罪を防ぐためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。浦崎寛泰弁護士に聞いた。

2014年に刑務所に入った2万1866人のうち、1割を超える2283人が65歳以上の高齢者だったことが『平成27年版 犯罪白書』(法務省)で明らかになった。高齢者の占める割合が1割を超えたのは、1991年に統計を取り始めて以来、初めてだという。

白書によると、刑務所を出てから2年以内に再入所する人の割合は、高齢者の場合は24.9%で、29歳以下の11.5%と大きな開きがあった。

高齢者が犯す犯罪として、特に多いのはどのような犯罪で、その理由は何だろうか。そして、高齢者の犯罪を防ぐためには、どのような取り組みが必要なのだろうか。浦崎寛泰弁護士に聞いた。

●高齢者人口の増加率を上回る勢いで「高齢犯罪者」が増加

「高齢者の犯罪は、窃盗が多いのが特徴です。

『平成27年版犯罪白書』188ページに掲載された図4-5-1-3(http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h4-5-1-03.jpg)をご覧ください。

白書におさめられた2014年(平成26年)の一般刑法犯の検挙人員の『罪名別構成比』を見ると、全年齢における窃盗の割合は52.2%なのに対し、高齢者(男女計)の窃盗の割合は73.0%。特に女子高齢者の場合、窃盗は92.6%と、際だって窃盗の割合が高くなっています。背景には、高齢者の貧困問題が深く関わっていることが推測されます」

浦崎弁護士はこのように指摘する。

「高齢者の犯罪者数が増えている要因として、高齢者人口全体が増えていることがあげられますが、高齢者人口の増加率を上回る勢いで『高齢犯罪者』の数が増えています。

若いころから受刑を繰り返すうちに高齢化したケースでは、逮捕や受刑によって職や住居を失い、家族とも疎遠になって、出所後も地域で孤立して再犯に及んでしまっていることが推測されます。

他方、高齢になって初めて犯罪を犯したというケースも考えられます。『平成27年版犯罪白書』189ページの図4-5-2-2(http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/images/full/h4-5-2-02.jpg)をご覧ください。

この図は最近20年間の『高齢入所受刑者人員』の推移を示したものですが、再入所者(2回目以上)の数だけでなく、初めて入所する人員もほぼ一貫して上昇しています。特に女子受刑者にその傾向が顕著です。

つまり、若いころから受刑を繰り返すうちに高齢化したケースだけでなく、高齢になってから初めて犯罪を犯したケースも増加しているということです」

●高齢者の犯罪防止のカギは「排除しない・孤立させない」

「昨年ベストセラーとなった『下流老人』(藤田孝典著/朝日新聞出版)では、たとえ現役時代に一般的な年収を得ている人でも、社会保障制度が十分に機能せずに、孤立して生活が崩壊するリスクがある実態が問題提起されました。

犯罪を犯してしまった人は、さらに地域から排除され、ますます孤立化し、再犯に至る悪循環に陥ってしまいます」

高齢者の犯罪を防ぐには、どうすればいいのだろう。

「一言でいえば『排除しない・孤立させない』ということです。『罰を与えて懲らしめれば、反省して懲りてもうやらなくなる』という刑罰モデルでは、孤立から生じる高齢者犯罪を食い止めることはできません。

『下流老人』が問いかけたように、高齢者の貧困問題は『明日は我が身』です。高齢受刑者は違う世界に住む住人ではなく、昨日まで隣にいた人かもしれないし、明日の自分自身かもしれないのです。

生活保護をはじめとした福祉サービスが、犯罪を犯してしまったような人にこそ十分に行き渡るような社会にしなければなりません」

(弁護士ドットコムニュース)

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