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株主総会で従業員による「ヤラセ質問」は認められる? 会社と従業員株主の正しい関係
2017年11月07日 09時43分

会社の株主総会にサクラとして出席するよう会社から要求されているが、法的な問題はないのかーー。あるインターネット上のQ&Aサイトに、そんな質問が寄せられていた。質問者は「一般の株主の厳しい質問を逃れるためサクラとしての簡単な質問をしろ」と総務部から指示されたそうだ。

2014年には、フジ・メディア・ホールディングスの一般株主2名が、従業員株主による「ヤラセ質問」によって株主総会における権利を侵害されたとして、決議取消を求める訴訟を起こしている。結果的に原告の訴えは棄却されたものの、一方で裁判所は、「 株主総会の運営のあり方として疑義がないものとはいえない」 との見解も示している(東京地裁平成28年12月15日判決)。

株主総会は、企業の方針を決議する重要な意思決定機関のはずだ。一方で、会社の指示により株主総会に出席し、積極的に経営陣に拍手を送ったり、冒頭の事例のようにサクラ質問を要請されるケースもある。仮に従業員株主だったとしても、果たして従業員による「ヤラセ」はどこまで許容されるべきなのか。畠山洋二弁護士に聞いた。(ライター・岡安早和)

会社の株主総会にサクラとして出席するよう会社から要求されているが、法的な問題はないのかーー。あるインターネット上のQ&Aサイトに、そんな質問が寄せられていた。質問者は「一般の株主の厳しい質問を逃れるためサクラとしての簡単な質問をしろ」と総務部から指示されたそうだ。

2014年には、フジ・メディア・ホールディングスの一般株主2名が、従業員株主による「ヤラセ質問」によって株主総会における権利を侵害されたとして、決議取消を求める訴訟を起こしている。結果的に原告の訴えは棄却されたものの、一方で裁判所は、「 株主総会の運営のあり方として疑義がないものとはいえない」 との見解も示している(東京地裁平成28年12月15日判決)。

株主総会は、企業の方針を決議する重要な意思決定機関のはずだ。一方で、会社の指示により株主総会に出席し、積極的に経営陣に拍手を送ったり、冒頭の事例のようにサクラ質問を要請されるケースもある。仮に従業員株主だったとしても、果たして従業員による「ヤラセ」はどこまで許容されるべきなのか。畠山洋二弁護士に聞いた。(ライター・岡安早和)

●「決議取消」や「損害賠償」の可能性も

「会社主導の『ヤラセ』により株主総会の議事運営が不公正なものとなり、その結果、株主の動議提出権(会社法304条)や質問権(会社法314条)等の権利が侵害された場合には、株主総会の決議取消事由(会社法831条1項)に該当したり、役員に損害賠償責任が発生したりする可能性があります」

畠山弁護士によれば、冒頭で登場したフジ・メディア・ホールディングスをはじめ、これまでにも株主総会における「ヤラセ」が裁判に発展したケースは複数存在するという。

(1)会社が従業員株主に指示し、従業員株主を株主総会の受付開始時刻前に会場に入場させ、株主席のうち前方部分に着席させたことが問題となったケース(最高裁平成8年11月12日第三小法廷判決)

(2)会社が従業員株主の協力を得て、事前に株主総会の議事進行についてリハーサルを行い、株主総会当日も、4、50名の従業員株主が会場の前方に着席して、議長の報告や付議に対し、「議事進行」「異議なし」「了解」などと声を上げたことが問題となったケース(大阪地裁平成10年3月18日判決)

(3)会社が、従業員株主に株主総会への出席を依頼した上、株主総会のリハーサル時と同様の質問を行うよう依頼し、その結果、株主総会で株主から受けた16の質問のうち半数が、従業員株主からの質問であったことが問題となったケース(上記フジ・メディア・ホールディングスに関する東京地裁平成28年12月15日判決)

●会社の良識や慣行が大きく影響する株主総会

上記ケースについて、畠山弁護士は次のように述べる。

「いずれのケースにおいても、裁判所は、株主総会の運営方法に疑問を投げかけはしましたが、結局、株主権の侵害はなかったとの結論を導き、違法性を否定しています。

例えば、上記フジ・メディア・ホールディングスのケースでは、裁判所は主に次の点から、一般株主の質問権の侵害はなかったと判断しています。

(1)一般株主の質疑応答のためにも約53分間の時間があてられていた

(2)一般株主からの質問内容の多くは、質疑応答の時間が経過するに従い、議案と関連していない質問になっていた

(3)質疑打切りの直前に質問等を求めて挙手をしていた一般株主の数は5名程度であり、出席株主の数と比較して多いとはいえなかった

会社法は、株主総会の議事運営方法について詳細に規定しておらず、会社の良識や慣行に委ねています。そのため、議事運営方法が不適切であったと言えても、更に進んで法的に違法であったと評価できるケースは限定的です」

●株主総会の「ヤラセ」は企業の信用低下をもたらす

このように、会社法の性質上「ヤラセ」が違法と判断されることは稀のようだが、それでは、どんな「ヤラセ」でも許容されるのだろうか。

「当日、従業員が株主として出席し、拍手をする程度であれば、違法とは言えないでしょう。ただ当然、どのようなヤラセでも許容されるわけではありません。

例えば、会社が、事前に予定していた従業員株主からの質問に対してのみ回答し、一般株主からの質問や動議を受け付けなかった場合などは、株主権の侵害があったと認められ、違法と評価される可能性は高いでしょう。

また、違法性の有無は別にしても、レピュテーションリスク(企業の信用低下のリスク)などを考えると、企業は株主軽視の姿勢を露呈することになる『ヤラセ』を行うべきではないと言えます」

(弁護士ドットコムニュース)

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