「届いたはずの商品が宅配ボックスからなくなってしまった」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。「宅配業者が部屋番号を間違えて入れて」しまったそうで、管理人に開けてもらったところ、「宅配ボックスが空になっていました」といいます。
間違えた部屋番号の住人が荷物を持ち去ったのか、それとも、別の第三者が持ち去ったのかは明らかではありません。そもそも配達自体がきちんと行われていなかった可能性もあります。
今回の相談事例の詳細は不明ですが、もし通販業者から購入した商品を配達業者が誤配達してしまった場合、相談者は、誰に、どのような補償を求めることができるのでしょうか。
●まずは通信販売サイトに連絡を
まずは購入先の通信販売サイト(たとえばAmazonなど)に連絡をしてみましょう。
配達履歴を確かめてくれるかもしれませんし、不着ということで補償してくれる可能性もあります。これで補償してもらえれば、商品そのものは買い直しになりますし、気分は悪いですが、一応被害回復はできそうです。
なお、相談者が得ている情報からすれば、誤配された物を誰かが持ち去ったと考えるのも無理ありませんが、通販サイトの情報の方が何らかの間違いであることもあり得ます。
通販サイト側のミスであれば、問い合わせで十分対応出来るはずですので、まずはこの点をしっかり確認する必要があるでしょう。
●持ち去りが強く疑われる場合
誤配達された荷物が、配達先の人に持ち去られた可能性が強く疑われる場合は、マンションの管理人に連絡してみるのが良いと思います。
宅配ボックスの使用履歴が残っていないか確認し、履歴を元に「誤配達された荷物が入っていた宅配ボックスが、いつ、どの住居に配られているカードキーによって開けられたのか」を知ることができる可能性があります。
荷物が配達された時間と、配達された宅配ボックスが開けられた時間、そしてその時間帯の防犯カメラを調べることで、持ち出した家庭や、どんな人が持ちだしたのかを知ることができるかもしれません。
なお、防犯カメラの履歴は1週間から1ヶ月程度で削除されてしまうことが多いため、急いだ方が良いでしょう。
●持ち去った人が「わざと」ではない可能性もあるのに注意
誤配達された人が、そのことをわかっていて持ち去ったのであれば、犯罪が成立します。
宅配ボックスの具体的な管理状況などにより議論は分かれると思いますが、窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)か、占有離脱物横領罪(刑法254条、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料)にあたりそうです。
しかし、誤配達された人が、誤配達であることを認識していなかった可能性もあります。
たとえば、誤配達された際、その宅配ボックスに「本当にその家庭に配達された荷物」と、「誤配達された荷物」が混ざって入っているような状況も考えられます。
このような場合、配達された物を本当に自分のところに配達されたと思い込んで開封し、そのまま使ってしまったのであれば、「わざと」ではない、法的には犯罪の「故意」がないといえるため、犯罪は成立しません。
もちろん、誤配達された荷物の宛先をよく見れば、送り先が自分の住所でないことはわかるはずなのですが、それは「うっかり」、法的には「過失」であり、故意はないことになります。
故意がない場合、過失犯処罰規定がなければ犯罪とはなりません(刑法38条1項)。
●弁償などはしてもらえるのか
通販サイトでの売買では、受け取りが実際に可能な状態にするところまでが通販サイト(売主)の責任です。 誤配送の場合は、買主が受け取れる状態になっていませんから、通販サイトに「商品を送って下さい」ということはできます(追完義務といいます)。
他方で、荷物を持ち去った人が特定できるのであれば、その人に対して荷物を返せということもできます。
荷物を持ち去った人から荷物を返してもらった場合には、通販サイトに対して同じ商品をさらに送れということはできませんが、このような手間をかけることで生じた損害を賠償してもらうことは可能です。