7267.jpg
学校の性教育、「月経に興味ある男子=エロい」とする空気…専門家が現場の足かせ指摘「性を学ぶことは人生の豊かさにつながる」
2025年04月28日 11時28分
#性教育

妊娠の経過を扱わない学校教育における「はどめ規定」もあり、「性教育後進国」のレッテルが貼られることも少なくない日本。

日本全国の学校を飛び回り、年間100回以上性に関する講演をおこなっている助産師・櫻井裕子さんは、学校によって取り組みが大きく異なる現状を「性教育ガチャ」と表現する。

そのうえで、男性の理解が広まらない月経を例にして、性に関して幅広く学びを深める「包括的性教育」の重要性を強調する。

正しい性の知識は「人生の豊かさにつながる」とし、「学習指導要領の見直しやメディアによる情報整理が必要だ」と語る。

妊娠の経過を扱わない学校教育における「はどめ規定」もあり、「性教育後進国」のレッテルが貼られることも少なくない日本。

日本全国の学校を飛び回り、年間100回以上性に関する講演をおこなっている助産師・櫻井裕子さんは、学校によって取り組みが大きく異なる現状を「性教育ガチャ」と表現する。

そのうえで、男性の理解が広まらない月経を例にして、性に関して幅広く学びを深める「包括的性教育」の重要性を強調する。

正しい性の知識は「人生の豊かさにつながる」とし、「学習指導要領の見直しやメディアによる情報整理が必要だ」と語る。

●はどめ規定を言い訳に学校現場は「性教育ガチャ」

ーーそもそも「包括的性教育」とは、どういったものなのでしょうか?

櫻井さん「 一般的に学校で教わる性教育は、体の構造や第二次性徴の説明が中心です。一方、包括的性教育では人権・多様性・ジェンダー平等を基盤に幅広く学びます。

生殖や避妊の仕組みだけでなく、他者との関係性や自分の気持ちの扱い方も含めて、『人が幸せに生きるための学び』だと捉えられています」

ーー現在の学校現場で行われている性教育は、十分だと思われますか?

櫻井さん「工夫しながら頑張っている先生方も多いですが、地域や学校によってばらつきがあるのが現状です。まさに『性教育ガチャ』。一般的には足りていないといわざるを得ないと思います」

日本の性教育において、しばしば問題に上がるのが「はどめ規定」。「妊娠の経過は取り扱わないものとする」。中学校の保健体育の学習指導要領に書かれたこの一文が、性教育の妨げになっていると櫻井さんは考える。

櫻井さん「『はどめ規定があるから学習させてはいけないわけではない』と文科省は必ず説明しますが、現場の先生への影響は大きいと思います。

はどめ規定があることで『やらない言い訳』ができてしまうんですよね。2027年に学習指導要領が改定される見込みですが、ぜひ見直してほしいです」

ーー性教育において、学校現場で足りていないものは?

櫻井さん「まずは時間です。性教育の世界はどんどん新しいことが入ってくるので、その新しい情報を得る時間が先生にはまずない。自分の時間を使って情報を得られる先生は一握りだと思います。

そうなれば情報不足になり、知識も足りなくなる。そうなると必然的に人材も足りなくなりますよね。時間がないというのはかなりの打撃です」

●広がらない月経への理解、興味を持つことが「エロい」とされる風潮も

PMS(月経前症候群)の対策アプリ「ケアミー」を運営するヘルスアンドライツが2023年におこなった調査によると、PMSの認知度は現在パートナーがいる男性で30.9%、パートナーがいた経験がない男性ではわずか6.9%だった。

ーーなぜ男性に月経の理解が広まらないのでしょうか?

櫻井さん「男性が学ぶ機会を奪われているのも理由の一つだと思います。 私が高校で性教育をおこなった時の話ですが、男子高校生が前のめりになって授業を受けていると、『あいつは女の月経に興味ある』=『エロい』として片付けられてしまうって打ち明けられたんです。

本来なら、体の仕組みなので、性差関係なく、興味を持ってもおかしくないと思うんです。ですが、そういう経験をすると、月経について学ぼうという気持ちを削ぎ落とされてしまいますよね」

ーー男性が知っておくべき月経の知識には、どんなものがありますか?

櫻井さん「 男性が月経について学ぶと『僕は何をしてあげたらいいですか?』という質問がすごく多いんです。一番大事なのは『個人差がある』ということ。

月経のとき、優しくしてほしい人もいれば、そっとしておいてほしい人もいます。『何をしたらいい?』と考えるのはとてもいいことですが、一人ひとり違うので『相手に聞く』ということを大切にしてほしいです」

●正しい「性に知識」のためにメディアによる情報整理を

ーー性教育に対して消極的な人も多い。

櫻井さん「今の大人を変えるのは難しいかもしれません。でも、これから大人になる子どもたちには、正しい教育を届けることができます。あとはメディアの力も借りて、気づいた人が縦横につながっていく。地道だけど、それが一番の近道かもしれません」

ーー 最近はネットで性の知識を得ようとする人も増えています

櫻井さん「インターネットは身近で便利ですぐに情報を手に入れられる。その一方で、情報には偏りがあるということは知ってほしいです。

しかし、『インターネットは嘘が多いから信じてはダメ』では何も進みません。学校の性教育が変わろうとしていない中、情報源はネットになってしまいますよね。だからこそ、メディアが信頼できる情報を整理することが重要だと思います」

ーー 最後に性教育について伝えたいことをお願いします

櫻井さん「 性教育にネガティブなイメージを持つ人は、誤解している部分が多いと思うんです。性を学ぶことは、自分や他人を大切にし、人生を豊かにすることにつながると思います。

子どもたちの今と未来の健康と幸せのために、気がづいた人から自分のできることをやってほしいなと思います」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る