7444.jpg
企業が注目する「ビッグデータ」活用法「個人情報保護」は大丈夫か?
2013年04月24日 14時50分

インターネット上に蓄積された膨大な情報「ビッグデータ」の活用に注目が集まっている。

それ自体は単なる情報の集まりに過ぎないのだが、うまく分析し、活用できれば「宝の山」になると言われている。

このビッグデータを積極的に利用している人物の1人が、ソフトバンクの孫正義社長だ。孫社長は4月9日に東京都内で行った講演で、自社のバナー広告を打つ際に、検索大手ヤフーのユーザーの性別や年代、携帯電話の通信会社などを参照し、ソフトバンクに乗り換えそうなユーザーに絞って表示させていると話したという。

消費者の趣味・嗜好や消費傾向に合わせた形で、効果的にマーケティングをする。ビッグデータの利用は、そんな形でも進みつつあるのだ。

だが、その一方で、ビッグデータにはユーザーの性別・年齢や商品購入履歴などの「個人情報」も含まれており、その活用には注意が必要だとも言われている。企業はどんな点に気をつけてデータを扱うべきなのか。内田公志弁護士に聞いた。

●個人情報保護法以外にも、プライバシー、著作権、営業秘密などを侵害しないよう配慮が必要

内田弁護士はまず前提として、「個人情報を含むデータの利用は、個人情報保護法の制約を受けます」と指摘する。

個人情報保護法の定義では、個人情報とは「個人を識別できる情報」(2条1項)だ。同法は個人情報を取り扱う事業者に対して、利用目的をできる限り特定すること(15条)、その目的の範囲内で使うこと(16条)を義務づけている。

さらに同法は、嘘をつくなど不正な方法で個人情報を入手しないこと(17条)や、利用目的を本人に通知・公表すること(18条)や、(漏えいなどがないように)安全かつ適正な管理をすること(20条)を義務づけ、同意を得ないで、個人データを第3者に提供すること(23条)などを禁止している。

では、「ビッグデータ」は全てこのような制約を受けるのだろうか。内田弁護士によると、たとえば「40歳独身男性の購買傾向」のように、ビッグデータを加工・分析して、特定の個人を特定できない情報に抽象化すれば、個人情報には該当しなくなるという。

だが気をつけるべきなのは、個人情報保護法だけではない。内田弁護士は「情報がデータベース化され創作性がある場合には、データベース自体が著作権保護の対象になります。また、その情報が『営業秘密』であれば、不正競争防止法上の保護の対象。さらに、プライバシーに関する情報であれば、プライバシー権の保護を受けます」と、利用に際しての様々な注意点を挙げていた。

幅広い利用可能性を持つビッグデータだが、各方面への配慮を怠ると、手痛いしっぺ返しを食らうこともありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

インターネット上に蓄積された膨大な情報「ビッグデータ」の活用に注目が集まっている。

それ自体は単なる情報の集まりに過ぎないのだが、うまく分析し、活用できれば「宝の山」になると言われている。

このビッグデータを積極的に利用している人物の1人が、ソフトバンクの孫正義社長だ。孫社長は4月9日に東京都内で行った講演で、自社のバナー広告を打つ際に、検索大手ヤフーのユーザーの性別や年代、携帯電話の通信会社などを参照し、ソフトバンクに乗り換えそうなユーザーに絞って表示させていると話したという。

消費者の趣味・嗜好や消費傾向に合わせた形で、効果的にマーケティングをする。ビッグデータの利用は、そんな形でも進みつつあるのだ。

だが、その一方で、ビッグデータにはユーザーの性別・年齢や商品購入履歴などの「個人情報」も含まれており、その活用には注意が必要だとも言われている。企業はどんな点に気をつけてデータを扱うべきなのか。内田公志弁護士に聞いた。

●個人情報保護法以外にも、プライバシー、著作権、営業秘密などを侵害しないよう配慮が必要

内田弁護士はまず前提として、「個人情報を含むデータの利用は、個人情報保護法の制約を受けます」と指摘する。

個人情報保護法の定義では、個人情報とは「個人を識別できる情報」(2条1項)だ。同法は個人情報を取り扱う事業者に対して、利用目的をできる限り特定すること(15条)、その目的の範囲内で使うこと(16条)を義務づけている。

さらに同法は、嘘をつくなど不正な方法で個人情報を入手しないこと(17条)や、利用目的を本人に通知・公表すること(18条)や、(漏えいなどがないように)安全かつ適正な管理をすること(20条)を義務づけ、同意を得ないで、個人データを第3者に提供すること(23条)などを禁止している。

では、「ビッグデータ」は全てこのような制約を受けるのだろうか。内田弁護士によると、たとえば「40歳独身男性の購買傾向」のように、ビッグデータを加工・分析して、特定の個人を特定できない情報に抽象化すれば、個人情報には該当しなくなるという。

だが気をつけるべきなのは、個人情報保護法だけではない。内田弁護士は「情報がデータベース化され創作性がある場合には、データベース自体が著作権保護の対象になります。また、その情報が『営業秘密』であれば、不正競争防止法上の保護の対象。さらに、プライバシーに関する情報であれば、プライバシー権の保護を受けます」と、利用に際しての様々な注意点を挙げていた。

幅広い利用可能性を持つビッグデータだが、各方面への配慮を怠ると、手痛いしっぺ返しを食らうこともありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る