全国各地で熊の出没が相次ぎ、人的被害が後を絶ちません。住宅街にまで現れ、平穏な日常を脅かされるようになり、恐怖を感じている人も少なくないでしょう。
一方で、人里に下りてきた熊が駆除されると、自治体には「かわいそうだ」といった抗議の電話が殺到することもあります。
人間の命か、動物の命か──。弁護士ドットコムニュースが熊に関する情報提供を呼びかけたところ、全国の読者から70件を超える意見や体験談が寄せられました。
被害に苦しむ住民の悲痛な叫び、都会の声への憤りなど、生々しい本音がつづられていました。
●「熊に殺される最期は考えられない」すぐ隣にある恐怖
被害が頻発する地域に住む人にとって、熊は決して「かわいい」存在ではありません。いつ命を奪われるかわからない、現実的な脅威になっています。
「実家で新聞配達をしていた方が早朝、庭の木から降りてきた熊に襲われて数十針縫う大怪我をされました」(50代男性)
北海道からはさらに切実な声が届きました。
「札幌市内に熊が出ました。住宅街に突然現れて襲われた人がいて、ニュースにもなりました。子どもを会社まで送迎するなど、本当に怖かったです。熊に殺されるなんていう最期は考えられないです」(北海道・60代女性)
一度人を襲ったり、人間の食べ物の味を覚えたりした熊の行動は予測することが困難です。
「熊は満足感を得た事象(エサのある場所を知ったこと、人を攻撃し勝ったこと等)を繰り返すと言われています。人的、物的な被害を防ぐためには『かわいそう』では済まされない対応が必要不可欠です」(岩手県・60代男性)
身近な脅威と感じている人にとって、「人命第一」は当然の結論であり、駆除はやむを得ないとの考えが強いようです。
●「かわいそう論者は熊に食われてみろ」都会と現場の断絶
被害の現実から距離のある都市部などでは「駆除はかわいそう」といった意見も聞かれます。現場に近い人々からは強い憤りと「断絶」が語られました。
秋田県の佐竹敬久知事(当時)は2024年12月、悪質なクレーム電話への対応をめぐり「もし私が電話を受けたら『お前のところに今(熊を)送るから住所を送れ』と言う」などと発言し、話題を呼びました。
この発言に賛同する声も多く寄せられました。
「佐竹知事の発言を支持する。大体人間に危害を加えるのである。殺処分の一択である」(50代男性)
「『射殺するのはかわいそう。もっと別の対策を考えるべき!』と言う輩は実際住んでみて、いかに怖いか、死ぬ思いをするか感じてほしい。プーさんみたいな可愛い熊はいません」(高知県・60代)
中には、こんな厳しい意見も。
「人里に降りちゃった熊を駆除することは必要だと思うし、ハンターさんへの支援をしっかりするべきだと思う。可哀想って言う人は自分から熊のいる山の中で寝起きして、実際に熊に食べられてみたらいいのではないでしょうか」(神奈川県・30代女性)
また、「猟友会に日当1出勤2万、駆除したら50万ぐらい出してほしい」(関西・60代女性)とハンターへの支援強化を求める切実な声もありました。
●「原因は人間のエゴ」…環境破壊への警鐘と共存への模索
一方で、駆除一辺倒の考え方に疑問を呈し、問題の根本は人間側にあると指摘する声も少なくありませんでした。
「熊の生活圏を人間の都合で壊している事が原因なので、街に降りて来た熊を狩るよりも熊が街に降りなくても安心して食べられる餌場や住処を森に確保してあげることだと思います」(沖縄県・40代女性)
メガソーラー建設などによる森林伐採が、熊の住処や食料を奪っていると考える人もいるようです。
「空き家がたくさんあるのに、家を作り続けないと経済が回らない日本。そのしわ寄せが熊だけではなく、自然や野生動物も壊しています。根本からみんなが考えないと崩壊します」(埼玉県・40代女性)
「熊は人間が何もしなければ襲うことはありません。熊に襲われるのは人間のエゴが招いたことで自業自得です」(福岡県・60代男性)といった声のように、人為的な自然破壊に危機感を強めている人もいました。
さらに、熊被害を解決するアイデアとして、
「山にどんぐり、実のなる木、サツマイモなど、手を入れなくても育つものを植える」(50代女性)
「食品ロス対策で山奥にドローンで廃棄食品をお届けできないのか」(神奈川県・50代女性)
といった具体的なアイデアも寄せられています。
寄せられた意見の中には「人と害獣の共生など夢に過ぎない」という意見がある一方で、「元々は野生動物が生息しているエリアに人間が勝手に入っていったのだから、危害があっても仕方ない」と達観する声もありました。
地域で安心して暮らすためには、駆除か共存かという二者択一ではなく、熊との関わり方を社会全体で真剣に考える必要がありそうです。