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認知症の高齢者の財産を「親族」からどう守る? 1750万円を女遊びに使った「息子」も
2016年10月20日 00時00分

「認知症の親のお金を、親族が勝手に使ってしまった」。インターネット上のQ&Aサイトには、そんな書き込みが多数投稿されています。思わぬトラブルを招かないために、高齢の親や祖父母の財産をどうやって管理すればいいのでしょう?

ある投稿者の父親は、認知症の祖母の貯蓄1750万円を横領し、出会い系サイトや女遊びのために全額使い切ってしまったそうです。本人は「家族の生活費に当てた」と大ウソをついているそう。そんな父に対して投稿者は「性根が腐りきった人間」と言いきります。

また別の投稿者は、兄嫁に認知症の母の預金通帳を預けたところ、老人ホームのお金や生活費を差し引いても、明らかに500万円以上のお金が引き出されていたそうです。兄嫁に問いただすと「確かに引き出したことは申し訳なく思うが、何につかったか話せません」と言われたといいます。

認知症の親の財産を親族が勝手に引き出して使うことは、犯罪ではないのでしょうか。また、財産を勝手に引き出されることを防ぐために、どのような対策ができるのでしょうか。平野由梨弁護士の解説をお届けします。

「認知症の親のお金を、親族が勝手に使ってしまった」。インターネット上のQ&Aサイトには、そんな書き込みが多数投稿されています。思わぬトラブルを招かないために、高齢の親や祖父母の財産をどうやって管理すればいいのでしょう?

ある投稿者の父親は、認知症の祖母の貯蓄1750万円を横領し、出会い系サイトや女遊びのために全額使い切ってしまったそうです。本人は「家族の生活費に当てた」と大ウソをついているそう。そんな父に対して投稿者は「性根が腐りきった人間」と言いきります。

また別の投稿者は、兄嫁に認知症の母の預金通帳を預けたところ、老人ホームのお金や生活費を差し引いても、明らかに500万円以上のお金が引き出されていたそうです。兄嫁に問いただすと「確かに引き出したことは申し訳なく思うが、何につかったか話せません」と言われたといいます。

認知症の親の財産を親族が勝手に引き出して使うことは、犯罪ではないのでしょうか。また、財産を勝手に引き出されることを防ぐために、どのような対策ができるのでしょうか。平野由梨弁護士の解説をお届けします。

Q. 認知症の親の財産、勝手に使ったら犯罪?

もちろん、親とはいえ、自分以外の人という意味で他人であり、他人の財産を勝手に自分のものとして使う行為は犯罪です。

具体的には、ご本人との関係では、窃盗罪(刑法235条)や横領罪(刑法252条1項)、金融機関との関係では、ATMから預金を引き出すような場合には窃盗罪、窓口での引き出しの場合には、金融機関を騙して預金を欺し取るという詐欺罪(刑法246条)などが成立する可能性があります。

ただ、ご本人の親族関係にある人の行為の場合、配偶者や同居の親族の場合は刑が免除されたり、その他の親族の場合は、被害者の告訴がなければ起訴されないという特例があります(刑法244条、255条)。

では、お金を勝手に引き出した人に対して、本人が「返済してほしい」と要求できるのでしょうか。もちろん、財産を勝手に使われた方は、勝手に使った人にそのお金の返還を求めることができます。

また、認知症の程度がそれほど重くなく、ご本人がお子さんなどの代理人に、回収を依頼するという意思表示をすることができる判断能力があるようでしたら、自分以外の人に依頼をし、その人が本人の代わりに返済を請求するということは可能です。

ただ、そうではなく、認知症が重く、代理人に依頼することができるような判断能力がなければ、他人が勝手に回収するということは原則としてできません。

●認知症の親の財産を守るためにできること

そこで、認知症の症状が重くなく、契約を結ぶだけの判断能力があるうちに、判断能力が低下した際に備えて、「任意後見契約」を締結するという方法があります。これは、自分の判断能力が低下した後、誰にどういった財産管理を依頼するか、といったことを決めておく制度です。

もしくは、社会福祉協議会が行っている、日常生活自立支援事業を利用する方法も考えられます。この制度を利用することで、預金の管理などのサービスが受けられます。

他方、すでに認知症がある程度進行し、ご本人の判断能力では契約を結ぶことが難しい場合には、「法定後見制度」(後見、保佐、補助という類型があります)を利用するという方法があります。これは、財産管理を代わりに行う、もしくは助ける人(後見人、保佐人、補助人)を家庭裁判所に選任してもらったり、助けてもらう制度です。

後見、保佐、補助という類型のいずれに該当するかは、ご本人の判断能力の程度に応じて、家庭裁判所が医師の意見を聞いた上で決めます。3つの類型の中では、「後見」が最もご本人を保護すべきケースで、「補助」はご本人にある程度判断能力が残っているケースとなります。

ご本人の判断能力が最も低下している類型の後見の場合、後見人の権限は大きく、基本的に後見人がご本人の財産を管理することになります。一方、保佐と補助の場合は、ご本人が、保佐人や補助人に与えた財産管理権限の範囲内で、代わりに財産を管理したり、管理を助けることになります。

(弁護士ドットコムライフ)

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