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「新型テレビ」のCM拒否は独禁法違反?「テレビ業界の論理」は通用するのか
2013年08月27日 15時10分

パナソニックのネット連動型テレビ「スマートビエラ」のCMがテレビ局から放映拒否されている――そんなニュースが7月上旬に流れ、物議をかもした。拒否の理由は、テレビの電源を入れたときに、テレビ番組とインターネットのサイトなどが画面に一緒に表示されることが、業界団体で定めた技術ルールに違反するからなのだという。

確かに、電気通信事業者や放送局、メーカーなどでつくる業界団体「電波産業会」は、視聴者がテレビ番組とネット情報を混同しない表示を推奨している。同団体が定めた「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」には、「テレビ提示中に放送以外のコンテンツを起動するときは、原則として放送と関係ないコンテンツが表示されることを、ダイアログ等により視聴者に明示する」などと記されている。

これがCM拒否の「表向きの理由」らしい……が、テレビ局の本音は「ネット排除」にあるという指摘もある。たしかに、民放各局は営利事業を営む民間企業だから、自らの利益に反するCMを排除しようとするのはわからないでもない。だが同時に、テレビ局は国から免許を受けて「公共の電波」をあずかる立場でもある。その製品が業界ルールに違反していることを理由に、その製品CMを放映することまで拒否していいのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

●独占禁止法違反の可能性も

「今回のような民放各局側の対応は、独占禁止法に抵触する可能性があると思います」

――どうして「独占禁止法」が出てくるのだろうか?

「独占禁止法は、『不公正な取引方法』の一つとして、正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し商品や役務の提供を拒絶したり制限したりする行為を規制しています。

民放各局は共同して、特定の企業に対し、CM放送という役務の提供を拒絶したことになりますから、このような行為は上記『不公正な取引方法』にあたると考えられる可能性があります」

――もし業界全体が不当にタッグを組めば、「独占」に当たるということか。

「そうですね。もし、テレビ局側が『ネットとの連携機能を持つ新型テレビは、広告市場におけるネット広告の台頭を促し、テレビ広告の地位を低下させる効果を持ち得る』と考えたとしたら……。

そして、テレビ局側がそのような事態を阻止するために新型テレビのCMを拒否したということであれば、広告市場の健全な競争を阻害する行為として、『不公正な取引方法』と考えられるでしょう」

――今回のような場合、「業界ルール違反」については、どう捉えれば良い?

「民放各局側のいう《電波産業会の定める『地上デジタルテレビジョン放送運用規定』に違反するから》という理由が、取引拒絶の『正当な理由』として認められるのであれば、『不公正な取引方法』とはいえないことになります。

しかし、そうした運用規定は業界ルールに過ぎませんし、規定としても何らかの義務づけを明確に定めているものでもありませんから、『正当な理由』と言うにはやや弱いのではないかと思います」

今回の件では、テレビ局側の「意図」は明確ではないが、大スポンサーからの広告を業界全体であえて拒否するからには、「それだけの理由」だったということなのだろう。ネットと電波の垣根は、日々低くなっているように思えるが……。

(弁護士ドットコムニュース)

パナソニックのネット連動型テレビ「スマートビエラ」のCMがテレビ局から放映拒否されている――そんなニュースが7月上旬に流れ、物議をかもした。拒否の理由は、テレビの電源を入れたときに、テレビ番組とインターネットのサイトなどが画面に一緒に表示されることが、業界団体で定めた技術ルールに違反するからなのだという。

確かに、電気通信事業者や放送局、メーカーなどでつくる業界団体「電波産業会」は、視聴者がテレビ番組とネット情報を混同しない表示を推奨している。同団体が定めた「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」には、「テレビ提示中に放送以外のコンテンツを起動するときは、原則として放送と関係ないコンテンツが表示されることを、ダイアログ等により視聴者に明示する」などと記されている。

これがCM拒否の「表向きの理由」らしい……が、テレビ局の本音は「ネット排除」にあるという指摘もある。たしかに、民放各局は営利事業を営む民間企業だから、自らの利益に反するCMを排除しようとするのはわからないでもない。だが同時に、テレビ局は国から免許を受けて「公共の電波」をあずかる立場でもある。その製品が業界ルールに違反していることを理由に、その製品CMを放映することまで拒否していいのだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

●独占禁止法違反の可能性も

「今回のような民放各局側の対応は、独占禁止法に抵触する可能性があると思います」

――どうして「独占禁止法」が出てくるのだろうか?

「独占禁止法は、『不公正な取引方法』の一つとして、正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し商品や役務の提供を拒絶したり制限したりする行為を規制しています。

民放各局は共同して、特定の企業に対し、CM放送という役務の提供を拒絶したことになりますから、このような行為は上記『不公正な取引方法』にあたると考えられる可能性があります」

――もし業界全体が不当にタッグを組めば、「独占」に当たるということか。

「そうですね。もし、テレビ局側が『ネットとの連携機能を持つ新型テレビは、広告市場におけるネット広告の台頭を促し、テレビ広告の地位を低下させる効果を持ち得る』と考えたとしたら……。

そして、テレビ局側がそのような事態を阻止するために新型テレビのCMを拒否したということであれば、広告市場の健全な競争を阻害する行為として、『不公正な取引方法』と考えられるでしょう」

――今回のような場合、「業界ルール違反」については、どう捉えれば良い?

「民放各局側のいう《電波産業会の定める『地上デジタルテレビジョン放送運用規定』に違反するから》という理由が、取引拒絶の『正当な理由』として認められるのであれば、『不公正な取引方法』とはいえないことになります。

しかし、そうした運用規定は業界ルールに過ぎませんし、規定としても何らかの義務づけを明確に定めているものでもありませんから、『正当な理由』と言うにはやや弱いのではないかと思います」

今回の件では、テレビ局側の「意図」は明確ではないが、大スポンサーからの広告を業界全体であえて拒否するからには、「それだけの理由」だったということなのだろう。ネットと電波の垣根は、日々低くなっているように思えるが……。

(弁護士ドットコムニュース)

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