7606.jpg
仁和寺「349日連続勤務」「残業240時間」、ブラック職場はなぜなくならないのか?
2016年04月26日 10時18分

世界遺産・仁和寺(京都市)の宿坊元料理長の男性が、長時間労働で抑うつ状態になったとして、寺に約4700万円の損害賠償を求めた裁判で、京都地裁は4月12日、「極めて過酷ともいうべき長時間労働」だとして、約4253万円の支払いを命じた。

報道によると、男性は2005年、料理長に就任した。2011年には月140時間以上の時間外労働が常態化し、月に約240時間になったり、349日の連続勤務もあったという。2012年に抑うつ神経症と診断されて、2013年には労働基準監督署から労災認定を受けていた。

「349日連続勤務」だなんて想像するだけでもおそろしい状態だ。一般的に連続勤務に関する規制はどうなっているのだろうか。また、なぜブラック職場はなくならないのか。今泉義竜弁護士に聞いた。

世界遺産・仁和寺(京都市)の宿坊元料理長の男性が、長時間労働で抑うつ状態になったとして、寺に約4700万円の損害賠償を求めた裁判で、京都地裁は4月12日、「極めて過酷ともいうべき長時間労働」だとして、約4253万円の支払いを命じた。

報道によると、男性は2005年、料理長に就任した。2011年には月140時間以上の時間外労働が常態化し、月に約240時間になったり、349日の連続勤務もあったという。2012年に抑うつ神経症と診断されて、2013年には労働基準監督署から労災認定を受けていた。

「349日連続勤務」だなんて想像するだけでもおそろしい状態だ。一般的に連続勤務に関する規制はどうなっているのだろうか。また、なぜブラック職場はなくならないのか。今泉義竜弁護士に聞いた。

●現状は「36協定」もない職場が野放し

「そもそも原則として、使用者は労働者を1日8時間、週40時間を超えて働かせることはできません。週1日または4週間で4日の休日を、労働者に取得させることが労働基準法で義務付けられています。

ただ例外があります。典型的なのは、『36(サブロク)協定』です。この労使協定を結べば、使用者は労働者に残業・休日労働を命じることが可能になります。厚生労働省は労使協定で定めることのできる残業の限度時間を1か月45時間、1年間360時間と定めています。

36協定を締結して、時間に応じた残業代を支払うことで初めて、協定の範囲内での時間外労働や連続勤務が適法となるのです」

では今回の仁和寺の宿坊では、その36協定があったのだろうか。

「今回のケースは、そのような労基法に定められた労使協定の手続きすら経ずに、連続勤務をさせていました。仁和寺に限らず、労使協定を結ばずに長時間労働を強いている企業は無数にあります。明白な労働基準法違反です。

ただ、実際には、実効的な取り締まりが十分にはなされていません。労基法違反の罰則は軽く、労働基準監督官の人手不足の問題も深刻だからです。特に労働組合がないような職場では、個人が残業代の支払いを求める裁判を起こすなどしない限り、違法が正されないままブラックな働き方が野放しになってしまっています。

仁和寺の349日連続勤務は異常ですが、同じような過酷な長時間労働を強いられている労働者はたくさんいます。今回の判決自体は、労基法に照らして当然の結論というべきものです。さらに私たちは、このような働き方が野放しになっている社会構造の問題を直視しなければなりません」

では、どうしたらこの問題は解決できるだろうか。

「労働組合が協定に基づいて労働時間を制限するのがベストです。ただ、労働組合のない職場も多い現状においては、やはり労働時間の上限を厳格に規制すること、連続した休息時間を法律でしっかりと労働者に保障することが必要です。

36協定にも、実は『特別の事情』を理由として厚労省の定める限度時間を超える残業を可能にする抜け穴があります。このような規制の抜け穴をふさぐとともに、規制を実効のあるものにするための罰則の抜本的強化や、現場の監督官の体制強化といった取り組みも不可欠です。

現政権は裁量労働制の拡大など労働基準法の規制緩和を進めようとしています。しかし、仁和寺のようなケースを防ぐために必要なのは、規制の強化です。先日、野党4党が長時間労働規制法案を提出しました。このような動きに注目すべきです」

今泉弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る