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輸血拒否のエホバ、妊婦は大量出血して子どもと亡くなった…元幹部が「医療ネグレクト」の実態告白、弁護団が報告書
2023年11月20日 18時53分
#宗教2世

キリスト教系宗教団体「エホバの証人」2世信者らの支援をしている弁護団が11月20日、581人のアンケート結果を報告書にまとめた。2022年末に厚生労働省が宗教的虐待について示した指針「Q&A」を元に、該当するかどうかを調査。「2023年時点で数万人に上る2世がおり、信仰に関係する虐待や人権侵害を受けていることが強く推測される」と発表した。

支援弁護団の田中広太郎弁護士と田畑淳弁護士、元信者2人が同日、衆院内で立憲民主党のヒアリングに応じ、輸血拒否の実態を中心とした「医療ネグレクト」の実態について報告した。自身も元2世である田中弁護士は「みなさんに関心を向けていただけることが、こうして声をあげた人たちの勇気の後ろだてとなる」と訴えた。

3世のナオトさん(仮名・20歳)は10歳の時に心臓に穴があいている「心房中隔欠損症」とわかり、8年にわたって手術が必要といわれたが、両親が拒否していた。

「病院から帰るたびに、毎回、親からムチをされました。『どうして自分の口で輸血を拒否するとお医者さんに伝えないんだ』という理由でした。毎回、宗数のせいで命の危険に不安になっているのに、さらに、ムチをされ、どれほど絶望的な気持ちになったか」

成人となった18歳の時に自らの判断で手術を受け、現在は完治したという。田中弁護士は「8年もの間、手術が必要といわれながらムチをされるという異常な家庭。でも、話を聞くと親は優しい人だという。教団の指示で、確実に破壊したといえます」と話した。

また、約10年前まで幹部として輸血拒否の教理に関する専門部署にいた根尾啓太さん(仮名)も実態を打ち明けた。内臓がつぶされながらも両親の輸血拒否により、治療ができず苦しみを強いられた幼児、早産で大量出血したが、母子ともに死亡したケースなどを見てきた。

当時、同じ自治体で13人ほどいた医療機関連絡委員は毎週、信者の病気についてデータを共有していたといい、今も当時のデータは持っている。

「言い尽くせない大きな後悔があります。自らの良心と人間性にかけて、事実をお知らせする責務がある」と涙をぬぐいながら話した。

弁護団は2023年1月に、2世や有志の弁護士・医師ら16人によって設立された。虐待や人権侵害の実態について明らかにすることを最大の目的とし、5〜6月にかけてSNSなどを通して2世向けに呼びかけ、アンケートを集めた。

輸血拒否カードの有無(弁護団資料より)

調査結果では、輸血拒否カードを所持していたのは8割を超えた。「輸血拒否はエホバの教義の根幹」(根尾さん)といい、1980年代から2020年代にかけて、どの年代でも確認されたという。弁護団は「特定の信者や、家庭だけの特殊な事情ではなく、全国的に輸血拒否カードの所持・携帯が教団によって指導されていたことを裏付けると評価すべき」とした。

ムチの被害経験の有無(弁護団資料より)

また、ムチに関しても92%が経験ありと回答。「1970年代から2010年代に全国で行われてきた」と説明したものの、田中弁護士は「収束の傾向にはある」とした。教団が管理するホールや集会場で行われたとの証言もあり、一部では組織的関与を示唆する結果となった。

これらの結果は、長老と呼ばれる幹部からも協力を得て内部資料を入手し、検討した結果だという。弁護団は「全国で長期間にわたり、連綿と同じようなことが繰り返されている。教理とも合致しており、継続性・組織性に着目してほしい」と述べた。

教団側は2023年5月には厚労省と会合し、「児童虐待は認めていない」などと信者に通知したが、弁護団は「状況は変わっていない」とする。内部資料では、8月に妊婦に向けた通知を改訂したが「自分で考えるように」とはしているものの、輸血以外の方法で治療できるか相談するよう指示しているという。

今回の調査報告書は一般にも公開し、こども家庭庁には陳情書を提出。公的機関が実態を明らかにするとともに、宗教団体の関与を調べるよう求めている。

弁護団が教団に求めたのは以下の5点。

弁護士ドットコムニュースがエホバの証人広報に対応を問うたところ「明日(21日)、メディア用ステートメントをお送りする予定です」との回答があった。

キリスト教系宗教団体「エホバの証人」2世信者らの支援をしている弁護団が11月20日、581人のアンケート結果を報告書にまとめた。2022年末に厚生労働省が宗教的虐待について示した指針「Q&A」を元に、該当するかどうかを調査。「2023年時点で数万人に上る2世がおり、信仰に関係する虐待や人権侵害を受けていることが強く推測される」と発表した。

支援弁護団の田中広太郎弁護士と田畑淳弁護士、元信者2人が同日、衆院内で立憲民主党のヒアリングに応じ、輸血拒否の実態を中心とした「医療ネグレクト」の実態について報告した。自身も元2世である田中弁護士は「みなさんに関心を向けていただけることが、こうして声をあげた人たちの勇気の後ろだてとなる」と訴えた。

●手術を断れとムチで打たれた小学生

3世のナオトさん(仮名・20歳)は10歳の時に心臓に穴があいている「心房中隔欠損症」とわかり、8年にわたって手術が必要といわれたが、両親が拒否していた。

「病院から帰るたびに、毎回、親からムチをされました。『どうして自分の口で輸血を拒否するとお医者さんに伝えないんだ』という理由でした。毎回、宗数のせいで命の危険に不安になっているのに、さらに、ムチをされ、どれほど絶望的な気持ちになったか」

成人となった18歳の時に自らの判断で手術を受け、現在は完治したという。田中弁護士は「8年もの間、手術が必要といわれながらムチをされるという異常な家庭。でも、話を聞くと親は優しい人だという。教団の指示で、確実に破壊したといえます」と話した。

また、約10年前まで幹部として輸血拒否の教理に関する専門部署にいた根尾啓太さん(仮名)も実態を打ち明けた。内臓がつぶされながらも両親の輸血拒否により、治療ができず苦しみを強いられた幼児、早産で大量出血したが、母子ともに死亡したケースなどを見てきた。

当時、同じ自治体で13人ほどいた医療機関連絡委員は毎週、信者の病気についてデータを共有していたといい、今も当時のデータは持っている。

「言い尽くせない大きな後悔があります。自らの良心と人間性にかけて、事実をお知らせする責務がある」と涙をぬぐいながら話した。

●現在も続く輸血拒否

弁護団は2023年1月に、2世や有志の弁護士・医師ら16人によって設立された。虐待や人権侵害の実態について明らかにすることを最大の目的とし、5〜6月にかけてSNSなどを通して2世向けに呼びかけ、アンケートを集めた。

輸血拒否カードの有無(弁護団資料より)

調査結果では、輸血拒否カードを所持していたのは8割を超えた。「輸血拒否はエホバの教義の根幹」(根尾さん)といい、1980年代から2020年代にかけて、どの年代でも確認されたという。弁護団は「特定の信者や、家庭だけの特殊な事情ではなく、全国的に輸血拒否カードの所持・携帯が教団によって指導されていたことを裏付けると評価すべき」とした。

ムチの被害経験の有無(弁護団資料より)

また、ムチに関しても92%が経験ありと回答。「1970年代から2010年代に全国で行われてきた」と説明したものの、田中弁護士は「収束の傾向にはある」とした。教団が管理するホールや集会場で行われたとの証言もあり、一部では組織的関与を示唆する結果となった。

これらの結果は、長老と呼ばれる幹部からも協力を得て内部資料を入手し、検討した結果だという。弁護団は「全国で長期間にわたり、連綿と同じようなことが繰り返されている。教理とも合致しており、継続性・組織性に着目してほしい」と述べた。

教団側は2023年5月には厚労省と会合し、「児童虐待は認めていない」などと信者に通知したが、弁護団は「状況は変わっていない」とする。内部資料では、8月に妊婦に向けた通知を改訂したが「自分で考えるように」とはしているものの、輸血以外の方法で治療できるか相談するよう指示しているという。

今回の調査報告書は一般にも公開し、こども家庭庁には陳情書を提出。公的機関が実態を明らかにするとともに、宗教団体の関与を調べるよう求めている。

●エホバ側、あすステートメント発表

弁護団が教団に求めたのは以下の5点。

・宗教虐待Q&Aをすべての信者に対し周知すること
・児童虐待防止法6条に基づく通告義務をすべての信者に対し周知すること
・宗教虐待Q&Aに規定された虐待行為を、信者が子どもに対して行うことを認めない旨を周知すること
・教団と利害関係のない第三者を入れた調査委員会を組織し、過去に行われた虐待行為についての実態及びその原因を調査し、虐待行為の防止態勢の構築に向けた措置を公表すること
・教団の信者に対する指導、指示、推奨に起因して、児童虐待被害に遭った2世等への謝罪をすること

弁護士ドットコムニュースがエホバの証人広報に対応を問うたところ「明日(21日)、メディア用ステートメントをお送りする予定です」との回答があった。

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