7656.jpg
川上氏「海賊版対策を邪魔している」「無責任だ」、森弁護士や村井教授に噛み付く
2018年07月18日 17時59分

知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)の第3回会合が7月18日、東京都内で開かれた。ブロッキング反対派の森亮二委員(弁護士)が「もはや緊急措置をとるべきでないということを、この検討会の決議で示すべきだ」と提案したところ、ブロッキング賛成派の川上量生委員(カドカワ社長)が「海賊版サイト対策を邪魔することしかやっていない」と批判するなど、議論が紛糾した。

知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)の第3回会合が7月18日、東京都内で開かれた。ブロッキング反対派の森亮二委員(弁護士)が「もはや緊急措置をとるべきでないということを、この検討会の決議で示すべきだ」と提案したところ、ブロッキング賛成派の川上量生委員(カドカワ社長)が「海賊版サイト対策を邪魔することしかやっていない」と批判するなど、議論が紛糾した。

●森亮二委員「緊急措置をすべきでないことをはっきり決議すべきだ」

違法アップロードされた漫画やアニメが無料で閲覧できる「海賊版サイト」をめぐって、政府は4月13日、特に悪質な海賊版サイトとして「漫画村」など3サイトを名指ししたうえで、法制度の整備までの緊急措置として、民間の事業者(プロバイダ)が自主的にブロッキング(遮断)することが適当とする決定をおこなった。

この決定を受けて、NTTグループ3社が、準備が整い次第、ブロッキングをおこなうと発表。一方、法律家やプロバイダ側から、憲法で定められた「通信の秘密」や「表現の自由」を侵害するという批判があがっていた。3サイトのうち、「漫画村」「Anitube」は現在サイト閲覧できなくなっており、「Miomio」もほとんどの動画が視聴できなくなっている。

こうした状況から、森弁護士はこの日の会議で「現時点でブロッキングに賛成という方も、(政府の)緊急措置をやれということではなく、法律をつくってしっかりしろという意見だと思っている」「緊急措置をすべきでないことをはっきり決議して、通信の秘密が侵害されることを確実に防止していただきたい」と提案した。

●川上委員「海賊版サイト対策を邪魔することしかやっていない」

ところが、川上委員は「3サイトの後継サイトもすぐにつぶれている。今回の政府対策が『本気』だと思っているから。それに水を差す行為(決議)はメリットがまったくない」と批判した。ほかにも「戦略を立てる会議だ。いたずらに時間を使わずに本旨を議論してほしい」という声もあがった。

これらの発言を受けて、森委員は「できることを一つずつやっていくことが検討会の使命だ。著作権侵害だけ救済されたらいいということであればいいが、『通信の秘密』もこの検討会のテーマだ。何の弊害があるのかわからない」と語気を強めた。川上委員は「できることと言うが、森先生は、海賊版サイト対策を邪魔することしかやっていない。この会議の趣旨に反している」と声を荒げた。

●川上委員「効果ないというのは詭弁以外の何ものでもない」

この日の会議ではほかにも、川上委員が、「日本のインターネットの父」と呼ばれる村井純共同座長(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長)に対して、「非常に無責任だ」と噛み付くシーンなどがあった。

ブロッキングは、技術面からの問題点も指摘されている。その一つが、すぐに、ブロッキングの回避策(ブロッキングされたサイトを閲覧する方法)が、一般のユーザーにも知れわたるため、「効果がうすい」というものだ。川上委員は「本当に効果がないと思っているのか?」と問いかけた。

前村昌紀委員(日本ネットワークインフォメーションセンターインターネット推進部部長)は「ブロッキングの回避策はたくさんある。そのため効果は薄いだろう。ブロッキングした瞬間にいたちごっこになる。どうやったらブロッキングを回避できるか、検索すればすぐに手に入る」と述べた。立石聡明委員(日本インターネットプロバイダー協会副会長)も「わりとカジュアルにできてしまう」という認識を示した。

また、村井座長は「回避策はどんどんできていく。そういうものが出てくると思う。それ以上に、サイトブロッキングを含めて、DNSをいじるということは副作用がやばいということが心配だ。その副作用、オーバーブロッキングだったり、構造上の副作用がおきてしまう。それよりも別の方法で効果があり、技術的に追求できるのであれば一緒に考えていきたい」と述べた。

すると、川上委員は「今のお三方の発言は、きわめて無責任だと思う。回避策があるというのは理由にならない。あらゆる犯罪にも回避策がある。いたちごっこになるのは当然だ。回避策があったといっても、全員が使うわけではない。効果が確実にあっても、回避策がある、効果ないというのは詭弁以外の何ものでもない。インターネットの専門家として、非常に無責任な態度だ」と強い調子でまくしたてた。

村井座長は、会議のおわりに「やはり、力をあわせて、本来の海賊版サイト対策の仕組みはどうなのか、考えなければいけない。サイトブロッキングだけではない。日本のマンガ・アニメなどコンテンツがどう健全に発展していけるのか。その中での海賊版サイト対策だ。今後は、立場の違うステイクホルダーが力を合わせて、出口を模索していく方向で、議論をすすめることができればと思う」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る