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長い時間が経ったから捜査は打ち切り!? 犯罪にはなぜ「時効」があるのか?
2013年12月06日 16時15分

ある事件が「時効」を迎える直前に容疑者を逮捕――。昔のテレビドラマでよく見られた光景だ。犯罪が発生してから一定の期間が経つと起訴、処罰ができなくなる公訴時効は、2010年の刑事訴訟法改正で、殺人などの犯罪で撤廃された。しかし、時効の仕組み自体は今も残る。

2010年10月には、国際テロに関する警視庁などの極秘資料がインターネット上に流出する事件が起きたが、事件発生から3年が経過したため、偽計業務妨害罪の公訴時効を迎えた。このような重大事件であっても一定の時間が過ぎれば捜査が強制的に打ち切られてしまうのは、国民にとって大きなデメリットに思える。

そもそも、どうして時効などという制度があるのだろうか。また、公訴時効制度にはどんな特徴があるのだろうか。刑事事件にくわしい櫻井光政弁護士に聞いた。

ある事件が「時効」を迎える直前に容疑者を逮捕――。昔のテレビドラマでよく見られた光景だ。犯罪が発生してから一定の期間が経つと起訴、処罰ができなくなる公訴時効は、2010年の刑事訴訟法改正で、殺人などの犯罪で撤廃された。しかし、時効の仕組み自体は今も残る。

2010年10月には、国際テロに関する警視庁などの極秘資料がインターネット上に流出する事件が起きたが、事件発生から3年が経過したため、偽計業務妨害罪の公訴時効を迎えた。このような重大事件であっても一定の時間が過ぎれば捜査が強制的に打ち切られてしまうのは、国民にとって大きなデメリットに思える。

そもそも、どうして時効などという制度があるのだろうか。また、公訴時効制度にはどんな特徴があるのだろうか。刑事事件にくわしい櫻井光政弁護士に聞いた。

●証拠集めができる期間には「限界」がある

「一般に、時間が経てば経つほど、人の記憶もあいまいになり、証拠の収集は困難になります。ですから、犯罪を立証するために必要な証拠を集められる期間には、おのずと限界があります。

また、事件に割ける捜査官の人員と労力にも限界があります。数年たっても十分な証拠が集まらない軽微な事件に人員を割き続けるのは不合理ですし、重大犯罪であってもおのずと限界があるでしょう。

公訴時効は、その意味で設けられているのです」

たしかに時間がたてば、モノは風化するし、証言もあやふやになる。犯罪の現場ですら、家屋が建て替えられたり開発されたりして、原型をとどめていないケースもあるだろう。

「ただ、殺人罪など、人を死なせ、かつ死刑にあたる罪については、国民世論の高まりと、DNA解析などの科学的捜査手法の進展を踏まえ、時効が廃止されました」

たしかに、以前と比べると科学的捜査はずいぶん確立されてきている。津地裁では11月下旬、刑訴法が改正されなければ時効となっていたケースで、強盗殺人罪に問われた被告に無期懲役が言い渡された。これも、やはりDNA鑑定が捜査の決め手となったと伝えられている。

●犯人が海外にいるときには時効が「停止」される

時効制度の特徴として、場合によっては一時的に停止されることもあげられるようだ。どういった場合に停止されるのだろうか?

「時効は、起訴が行われると停止し、その裁判が確定すると再び進行を始めます。これは、共犯者が起訴されたときも同じです」

つまり、裁判が長期化しても、その途中で時効になることはないということだ。共犯者の裁判中に時効が停止されるのは、共犯者たちの間で不公平が生じることを防ぐという意味だろう。

「また、『犯人』が国外にいたり、逃げ隠れしているため有効に起訴状の謄本の送達ができなかった場合にも、その期間、時効は進行を停止します」

こちらは捜査の手から逃れるために、海外などへ逃亡することへの対処と考えてよさそうだ。

こうした櫻井弁護士の説明を聞くと、法改正はなされたものの、決して時効制度の必要性が薄れたわけではなさそうだ。犯罪捜査や刑事裁判の実態と密接にかかわる問題なだけに、時効制度には今後も引き続き注目していきたい。

(弁護士ドットコムニュース)

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