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「歩く凶器」キャリーバッグでケガさせ損害賠償も――どこに注意すればいいのか?
2016年01月09日 07時22分

旅行や出張時に便利なキャリーバッグ。最近は旅行だけでなく、日常生活で使う人も増えている。ただ、近くにいる人にケガをさせてしまうなどのトラブルも増えており、歩きスマホやイヤホンの使用などと同等に「歩く凶器」と呼ばれることがある。

国民生活センターのホームページには、「繁華街を歩行中、隣を歩いていた人が曳(ひ)いていたキャリーバッグがぶつかり、転倒して怪我をした」「新幹線下車時、前方の乗客のキャリーバッグに右足を取られて転倒した」などの事例が紹介されている。

裁判になり、キャリーバッグをひいていた人に賠償を命じる判決も出ているようだが、キャリーバッグを使用する人は、どんな点に注意すればいいのだろうか。伊澤大輔弁護士に聞いた。

旅行や出張時に便利なキャリーバッグ。最近は旅行だけでなく、日常生活で使う人も増えている。ただ、近くにいる人にケガをさせてしまうなどのトラブルも増えており、歩きスマホやイヤホンの使用などと同等に「歩く凶器」と呼ばれることがある。

国民生活センターのホームページには、「繁華街を歩行中、隣を歩いていた人が曳(ひ)いていたキャリーバッグがぶつかり、転倒して怪我をした」「新幹線下車時、前方の乗客のキャリーバッグに右足を取られて転倒した」などの事例が紹介されている。

裁判になり、キャリーバッグをひいていた人に賠償を命じる判決も出ているようだが、キャリーバッグを使用する人は、どんな点に注意すればいいのだろうか。伊澤大輔弁護士に聞いた。

●ただ歩いている場合よりも、周りに注意する義務がある

「この問題を考える上で、参考になる裁判例を紹介しましょう。

これは、駅構内において、被告の曳いていたキャリーバッグが、対面からすれ違った原告の足に当たって、原告がつまずき、骨折等の傷害を負ったという事案について、100万円強の損害賠償責任を認めたという判決です(東京地裁平成27年4月24日判決)。

この判決は、一般論として、『歩行者が、駅構内のような人通りの多い場所でキャリーバッグを使用する場合には、曳いているキャリーバッグが他の歩行者の歩行を妨げたり、それに躓いて転倒させることがないよう注意すべき義務を負う』と判示しています。

また、キャリーバッグの事故ではありませんが、駅改札口付近で歩行者同士がぶつかり、転倒負傷した事案について、同様の注意義務を認めた裁判例があります(東京地裁平成17年4月25日判決)。

この判決では、事故当時の駅のコンコースのように、様々な人の流れがあり、歩く人で相当混雑しているような状況においては、『被告において、人の流れに沿って歩いていたとしても、前方を相当程度の注意をもって注視し、他に歩く人との無用の接触を避けるべき注意義務がある』と判示しています」

こうした裁判例から、どんなことがわかるのだろうか。

「これらの裁判例から、歩行者には、次のような注意義務があると読み解けます。

(1)人通りの多い状況下では、人の流れに沿って歩いていたというだけでは注意義務を果たした(損害賠償責任を負わない)とはいえない。前方をしっかりと見て、できる限り他人と接触しないよう注意して歩行しなければならない。

(2)キャリーバッグを後方で曳いて歩く場合には、自分の身体だけでなく、いわば自ら手足の延長として、キャリーバッグ自体も他人に接触しないように注意しなければならない。キャリーバッグを曳かずに歩行している場合よりも、その分、注意義務の質や範囲、リスクが拡大する」

●キャリーバッグを曳いているとき注意すべきことは?

具体的には、どんなことに注意すればいいだろうか。

「比較的、人通りの少ない道路・通路等では、キャリーバッグを自らの身体の後方で曳いて歩いていたとしても(通常、キャリーバッグはそのように使用するものです)、前方に注視して歩いていれば、損害賠償責任を負うリスクは少ないでしょう。

このような状況下において、後方から歩いてきた人がキャリーバッグに接触し転倒したとしても、それはもっぱら転倒した人の過失であり、キャリーバッグを曳いていた人に過失はないと言えます。

しかし、様々な人の流れがあり、混雑している駅構内や繁華街、店舗内等では、できる限り損害賠償リスクを減らすため、漫然とキャリーバッグを自らの視野に入らない後方で曳くようなことはせず、自らの身体の前に持ってきて、まわり(特に前方)に注意しながら、押して歩くべきでしょう。

なお、注意すべきなのは、歩行中だけではありません。

東京簡裁平成16年4月15日判決は、東京駅の改札付近で立ち話をしていた被告が、その後、左側に向かって歩こうとして、瞬間的にキャリーバッグを動かしたところ、キャリーバッグの車輪(コロの部分)が、歩いてきた原告の左足甲の部分を轢き負傷させてしまったという事案についても、損害賠償責任を認めています。

したがって、立ち止まっていた状態から歩き出す時など瞬間的に違う動作に移る場合にも、まわりの状況をよく確認してから行動に移すことが必要です」

伊澤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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