7690.jpg
朝礼の「唱和」はダサくてイヤだ! 従業員が唱和を「拒否」するのは許されるか?
2013年08月07日 21時21分

職場の朝礼で『唱和』を拒否したら、懲戒解雇されてしまった――。そんな男性が解雇の無効を訴えた裁判で、男性の主張を認める判決が7月26日、京都地裁で下された。

報道によると、解雇が無効とされたのは、学校法人平安女学院(京都市)の元職員の男性。2012年9月、男性は朝礼で「理事長の下に固く結束し」という部分の読み上げを拒否して解雇されていた。学校側は「業務に支障が生じた」としていたが、裁判官は「業務に大きな影響を与えたとも言えない」「懲戒解雇は重すぎる」と判断した。

「唱和」は職場の士気高揚などに、少なくない会社で実施されているようだ。たとえばパナソニックでは、創業者松下幸之助の「綱領・信条・7精神」を唱えるというし、ある大手ドラッグストアも、店舗で毎朝「いらっしゃいませ」といった「接客8大用語」を唱和するという。一方、このノリに付いていけないという人もいて、ネットの相談サイトには「(唱和に)ストレスを感じている」といった悩みが寄せられている。

はたして従業員は、自分の信条に合わない職場の「唱和」を拒否できるのだろうか。また、今回は懲戒解雇を無効とする判決が出たわけだが、もっと軽い処分なら甘受するしかないのだろうか。労働事件にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

●『唱和』そのものは違法とはならない

――「解雇」よりも軽い処分なら、甘受するしかない?

「『解雇』は行き過ぎですが、軽い処分ならば甘受しなければならないと思います」

――どういう理由なの?

「労働契約上、労働者は使用者に対して労働を提供する義務があります。その関係で、使用者の指揮命令に服さなければなりません。

もちろん、この指揮命令は、どんなことでも命じることができるというわけではなく、違法な命令はできませんし、労働者の思想・信条に反するような命令もできません。

しかし、会社の理念や方針を理解させ、協調して仕事をしてもらうために、社会通念上相当の範囲内なら、『唱和』そのものは違法とはならないでしょう」

――そういった例は他にもあった?

「公立学校の卒業式などでの国旗掲揚や国歌斉唱の際に、教職員に対して起立や斉唱を求める命令が、『思想・良心の自由』に反しないか争われたケースでしょう。最高裁は、結論として、そのような職務命令を出しても『思想・良心の自由』に反しないとしています。

この判例によれば、主観的に、自分の思想・信条に合わない『唱和』だったとしても、それが直ちに『思想・良心の自由』に反するとは認められないことになります。その処分は違反行為の内容と均衡を保ったものにならなければなりませんが・・・」

このように、職場で『唱和』を拒否したら、職務命令違反として処分されてもやむを得ないということだ。しかし、最近の若い人たちの感覚なら、「唱和なんてダサい」と思うかもしれない。大川弁護士も、「『唱和』を嫌う若い人たちが増えていると思われていますので、使用者は、従業員に気持ちよく働いてもらうためにも、このような習慣は止めたほうが良いと個人的には思います」と話している。

(弁護士ドットコムニュース)

職場の朝礼で『唱和』を拒否したら、懲戒解雇されてしまった――。そんな男性が解雇の無効を訴えた裁判で、男性の主張を認める判決が7月26日、京都地裁で下された。

報道によると、解雇が無効とされたのは、学校法人平安女学院(京都市)の元職員の男性。2012年9月、男性は朝礼で「理事長の下に固く結束し」という部分の読み上げを拒否して解雇されていた。学校側は「業務に支障が生じた」としていたが、裁判官は「業務に大きな影響を与えたとも言えない」「懲戒解雇は重すぎる」と判断した。

「唱和」は職場の士気高揚などに、少なくない会社で実施されているようだ。たとえばパナソニックでは、創業者松下幸之助の「綱領・信条・7精神」を唱えるというし、ある大手ドラッグストアも、店舗で毎朝「いらっしゃいませ」といった「接客8大用語」を唱和するという。一方、このノリに付いていけないという人もいて、ネットの相談サイトには「(唱和に)ストレスを感じている」といった悩みが寄せられている。

はたして従業員は、自分の信条に合わない職場の「唱和」を拒否できるのだろうか。また、今回は懲戒解雇を無効とする判決が出たわけだが、もっと軽い処分なら甘受するしかないのだろうか。労働事件にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

●『唱和』そのものは違法とはならない

――「解雇」よりも軽い処分なら、甘受するしかない?

「『解雇』は行き過ぎですが、軽い処分ならば甘受しなければならないと思います」

――どういう理由なの?

「労働契約上、労働者は使用者に対して労働を提供する義務があります。その関係で、使用者の指揮命令に服さなければなりません。

もちろん、この指揮命令は、どんなことでも命じることができるというわけではなく、違法な命令はできませんし、労働者の思想・信条に反するような命令もできません。

しかし、会社の理念や方針を理解させ、協調して仕事をしてもらうために、社会通念上相当の範囲内なら、『唱和』そのものは違法とはならないでしょう」

――そういった例は他にもあった?

「公立学校の卒業式などでの国旗掲揚や国歌斉唱の際に、教職員に対して起立や斉唱を求める命令が、『思想・良心の自由』に反しないか争われたケースでしょう。最高裁は、結論として、そのような職務命令を出しても『思想・良心の自由』に反しないとしています。

この判例によれば、主観的に、自分の思想・信条に合わない『唱和』だったとしても、それが直ちに『思想・良心の自由』に反するとは認められないことになります。その処分は違反行為の内容と均衡を保ったものにならなければなりませんが・・・」

このように、職場で『唱和』を拒否したら、職務命令違反として処分されてもやむを得ないということだ。しかし、最近の若い人たちの感覚なら、「唱和なんてダサい」と思うかもしれない。大川弁護士も、「『唱和』を嫌う若い人たちが増えていると思われていますので、使用者は、従業員に気持ちよく働いてもらうためにも、このような習慣は止めたほうが良いと個人的には思います」と話している。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る