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わかりにくいと話題の「セブンカフェ」 操作ボタンを間違って押してしまったら?
2013年07月30日 12時25分

大手コンビニチェーン、セブン-イレブンが今年1月から展開しているセルフ式コーヒー販売サービス「セブンカフェ」が好調だ。一杯100円~150円で挽き立てのドリップコーヒーが楽しめるとあって、7月18日にはついに販売累計1億杯を突破したという。

一方ネットでは、「セブンカフェ」の機械の操作方法が「わかりにくい」ともっぱらの評判だ。それもそのはず、この有名クリエイターのデザインしたドリップマシーンは、操作部分に日本語の説明がないのだ。

具体的には「HOT COFFEE」という表示の下に「R」と「L」のボタンが設置され、その直下にそれぞれ「REGULAR」「LARGE」と説明がある。また「ICE COFFEE」についても、「R」と「L」ボタン、「REGULAR」「LARGE」と、同様の表記があるだけというシンプルなデザインだ。

しかし、いくら押せるボタンがたった4つとはいえ、これは省略しすぎだったようで、戸惑う人が続出している模様だ。店舗が独自に「温かいコーヒー」「大きいサイズ」といったシールをマシンにべたべたと貼りつける例が、多数ネットに報告されている。

さて、こうした「日本人にとってちょっと不親切な」ドリップマシンで、押すべきボタンを間違ってしまった場合、無料で正しいものを選び直すことはできるのだろうか、それとも「自己責任」ということになってしまうのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●店には「完全な状態のコーヒーを提供する義務」がある

「原則として、客は代わりの商品を提供してもらうことができます」

――なぜそう言えるのか?

「これは客と店との『売買契約』の問題です。売買契約に基づいて、客は代金を支払う義務を負います。

それに対し店は、量・温度・味など全ての規格を満たしたコーヒーを提供する義務を負います。

この義務は店員がドリップマシンを操作してカップ入りコーヒーを提供するスタイルでも、客がセルフサービスでドリップマシンを操作してカップ入りコーヒーを受け取るスタイルでも変わりありません」

――客の「押し間違い」をどう考える?

「操作に不慣れな客が、わかりにくいドリップマシンのボタンを押し間違えて、コーヒーがカップからあふれてしまったという例を考えましょう。この場合、客は完全なコーヒーを受け取れていません。

つまり、店からすれば、完全な状態のコーヒーを提供するという義務が果たせていない状況です。法律ではこういう状態を『債務不履行(不完全履行)』と言います。

この場合、客は店に対して債務の『完全履行』を求めることができます。ようは、カップコーヒーは代替のきく商品ですから、適量の入ったカップコーヒーをあらためて提供するよう求めることが可能だということです」

――店にそんな義務があるなら、客はわざといい加減な操作をするようになるかも?

「そのような場合は、店の『完全履行』を、客が自ら拒絶して、受け取らなかったにすぎない。つまり、店の『債務不履行(不完全履行)』ではないと考えられます。

したがって、客がわざと操作ミスしたような場合には、店が代わりの商品を提供する必要はないと考えます」

なるほど、店舗側が独自に「わかりやすい説明」を付けている背景には、そういう事情があるのだろう。それにしても、手作りのシールがベタベタと貼ってあるマシンは、なんとなくもの悲しい。この状況がいつまで続くかはわからないが、FC本部が公式の「説明シール」を配布する日も、そう遠くはない気がしてきた。

(弁護士ドットコムニュース)

大手コンビニチェーン、セブン-イレブンが今年1月から展開しているセルフ式コーヒー販売サービス「セブンカフェ」が好調だ。一杯100円~150円で挽き立てのドリップコーヒーが楽しめるとあって、7月18日にはついに販売累計1億杯を突破したという。

一方ネットでは、「セブンカフェ」の機械の操作方法が「わかりにくい」ともっぱらの評判だ。それもそのはず、この有名クリエイターのデザインしたドリップマシーンは、操作部分に日本語の説明がないのだ。

具体的には「HOT COFFEE」という表示の下に「R」と「L」のボタンが設置され、その直下にそれぞれ「REGULAR」「LARGE」と説明がある。また「ICE COFFEE」についても、「R」と「L」ボタン、「REGULAR」「LARGE」と、同様の表記があるだけというシンプルなデザインだ。

しかし、いくら押せるボタンがたった4つとはいえ、これは省略しすぎだったようで、戸惑う人が続出している模様だ。店舗が独自に「温かいコーヒー」「大きいサイズ」といったシールをマシンにべたべたと貼りつける例が、多数ネットに報告されている。

さて、こうした「日本人にとってちょっと不親切な」ドリップマシンで、押すべきボタンを間違ってしまった場合、無料で正しいものを選び直すことはできるのだろうか、それとも「自己責任」ということになってしまうのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●店には「完全な状態のコーヒーを提供する義務」がある

「原則として、客は代わりの商品を提供してもらうことができます」

――なぜそう言えるのか?

「これは客と店との『売買契約』の問題です。売買契約に基づいて、客は代金を支払う義務を負います。

それに対し店は、量・温度・味など全ての規格を満たしたコーヒーを提供する義務を負います。

この義務は店員がドリップマシンを操作してカップ入りコーヒーを提供するスタイルでも、客がセルフサービスでドリップマシンを操作してカップ入りコーヒーを受け取るスタイルでも変わりありません」

――客の「押し間違い」をどう考える?

「操作に不慣れな客が、わかりにくいドリップマシンのボタンを押し間違えて、コーヒーがカップからあふれてしまったという例を考えましょう。この場合、客は完全なコーヒーを受け取れていません。

つまり、店からすれば、完全な状態のコーヒーを提供するという義務が果たせていない状況です。法律ではこういう状態を『債務不履行(不完全履行)』と言います。

この場合、客は店に対して債務の『完全履行』を求めることができます。ようは、カップコーヒーは代替のきく商品ですから、適量の入ったカップコーヒーをあらためて提供するよう求めることが可能だということです」

――店にそんな義務があるなら、客はわざといい加減な操作をするようになるかも?

「そのような場合は、店の『完全履行』を、客が自ら拒絶して、受け取らなかったにすぎない。つまり、店の『債務不履行(不完全履行)』ではないと考えられます。

したがって、客がわざと操作ミスしたような場合には、店が代わりの商品を提供する必要はないと考えます」

なるほど、店舗側が独自に「わかりやすい説明」を付けている背景には、そういう事情があるのだろう。それにしても、手作りのシールがベタベタと貼ってあるマシンは、なんとなくもの悲しい。この状況がいつまで続くかはわからないが、FC本部が公式の「説明シール」を配布する日も、そう遠くはない気がしてきた。

(弁護士ドットコムニュース)

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