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経営破綻したゲームブランド「アトラス」 民事再生法の申請でどうなる?
2013年07月08日 18時40分

ゲームソフト制作会社「インデックス」が経営破綻した。同社は民事再生法適用の申し立てをおこない、受理されたと、6月27日に発表した。負債総額は約245億円にのぼるという。インデックスには、『真・女神転生』シリーズなどで知られるゲームブランド「アトラス」があり、今後の動向にゲームファンの注目が集まっている。

この動きに先立つ6月12日、インデックスは粉飾決算を行っていたとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで強制調査を受けていた。今回の民事再生法の適用申請は、その影響などで会社の自主再建が難しくなったためとみられている。

インデックスは2006年にゲームソフトメーカー「アトラス」を子会社化、のちにブランド名を残して吸収合併していた。今回の民事再生法の適用によって、同社や「アトラス」ブランドのゲームはどうなってしまうのだろうか。

また、経営が厳しくなった会社を建て直すための手段としては、会社更生法の適用を申請するという選択肢もあるようだが、民事再生法との違いはどこにあるのだろう。企業法務倒産案件にくわしい片上誠之弁護士に聞いた。

●民事再生法が適用されても、ただちに「ブランド」が消えるわけではない

――アトラスブランドのゲームはどうなるのか?

「民事再生法は、窮地にある会社の事業の再生を図る制度で、インデックスについて民事再生手続が開始したからといって、ただちに『アトラス』というブランドや人気のゲームシリーズがなくなるということではありません」

――具体的には、どのようなシナリオがありうるのか?

「今後の再生過程での『アトラス』ブランドの行方については、2つのシナリオが考えられます。1つは、『アトラス』ブランドのゲーム事業を、スポンサーになってくれる企業に売却するというシナリオです。もう1つは、スポンサーがインデックスを傘下に収めるために新たな出資を行うというシナリオです。この場合には、『アトラス』ブランドはいままで通りインデックスに残ります。

『アトラス』ブランドやゲームシリーズを存続させるかどうかは、今後裁判所の監督下で選定されるスポンサー次第ですが、いずれのシナリオでも、ビジネスとして魅力的なコンテンツであれば、維持・継続される可能性が高いといえます」

――今回は民事再生法を申請したが、会社更生法との違いはどこにあるのか?

「いずれの制度も、裁判所の監督下で、負債が大きくなり過ぎて窮境に陥っている会社・事業を再生させる点では共通しています。

どこに違いがあるかというと、会社更生法では、原則として従前の経営者を退場させて、裁判所が選任した『管財人』が再建を進めるのに対して、民事再生法では、従前の経営者が経営権を維持したまま再建を進めることができる点です。会社更生法は、2010年に日本航空が申請したことでも有名です。

ただ、民事再生でも従前の経営者ではスムーズに再生が進まないようであれば、裁判所により別の管財人が選任されることがありますし、会社更生でも裁判所が従前の経営者を管財人に選任することもあります(最近の例としてはエルピーダメモリ)。そのため、管財人が選任される点は決定的な違いではないとの指摘もあります」

インデックスという会社は民事再生法によって再建をはかるわけだが、「アトラス」ブランドのコンテンツの価値が評価されれば、なんらかの形でブランドを維持できるようだ。ただ、ゲーム制作の裏には当然ながら、それを作っている「人」がいる。ブランドだけでなく、その「人」たちの行方も気になるところだ。

(弁護士ドットコムニュース)

ゲームソフト制作会社「インデックス」が経営破綻した。同社は民事再生法適用の申し立てをおこない、受理されたと、6月27日に発表した。負債総額は約245億円にのぼるという。インデックスには、『真・女神転生』シリーズなどで知られるゲームブランド「アトラス」があり、今後の動向にゲームファンの注目が集まっている。

この動きに先立つ6月12日、インデックスは粉飾決算を行っていたとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで強制調査を受けていた。今回の民事再生法の適用申請は、その影響などで会社の自主再建が難しくなったためとみられている。

インデックスは2006年にゲームソフトメーカー「アトラス」を子会社化、のちにブランド名を残して吸収合併していた。今回の民事再生法の適用によって、同社や「アトラス」ブランドのゲームはどうなってしまうのだろうか。

また、経営が厳しくなった会社を建て直すための手段としては、会社更生法の適用を申請するという選択肢もあるようだが、民事再生法との違いはどこにあるのだろう。企業法務倒産案件にくわしい片上誠之弁護士に聞いた。

●民事再生法が適用されても、ただちに「ブランド」が消えるわけではない

――アトラスブランドのゲームはどうなるのか?

「民事再生法は、窮地にある会社の事業の再生を図る制度で、インデックスについて民事再生手続が開始したからといって、ただちに『アトラス』というブランドや人気のゲームシリーズがなくなるということではありません」

――具体的には、どのようなシナリオがありうるのか?

「今後の再生過程での『アトラス』ブランドの行方については、2つのシナリオが考えられます。1つは、『アトラス』ブランドのゲーム事業を、スポンサーになってくれる企業に売却するというシナリオです。もう1つは、スポンサーがインデックスを傘下に収めるために新たな出資を行うというシナリオです。この場合には、『アトラス』ブランドはいままで通りインデックスに残ります。

『アトラス』ブランドやゲームシリーズを存続させるかどうかは、今後裁判所の監督下で選定されるスポンサー次第ですが、いずれのシナリオでも、ビジネスとして魅力的なコンテンツであれば、維持・継続される可能性が高いといえます」

――今回は民事再生法を申請したが、会社更生法との違いはどこにあるのか?

「いずれの制度も、裁判所の監督下で、負債が大きくなり過ぎて窮境に陥っている会社・事業を再生させる点では共通しています。

どこに違いがあるかというと、会社更生法では、原則として従前の経営者を退場させて、裁判所が選任した『管財人』が再建を進めるのに対して、民事再生法では、従前の経営者が経営権を維持したまま再建を進めることができる点です。会社更生法は、2010年に日本航空が申請したことでも有名です。

ただ、民事再生でも従前の経営者ではスムーズに再生が進まないようであれば、裁判所により別の管財人が選任されることがありますし、会社更生でも裁判所が従前の経営者を管財人に選任することもあります(最近の例としてはエルピーダメモリ)。そのため、管財人が選任される点は決定的な違いではないとの指摘もあります」

インデックスという会社は民事再生法によって再建をはかるわけだが、「アトラス」ブランドのコンテンツの価値が評価されれば、なんらかの形でブランドを維持できるようだ。ただ、ゲーム制作の裏には当然ながら、それを作っている「人」がいる。ブランドだけでなく、その「人」たちの行方も気になるところだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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