海外のオンラインカジノで賭けをしたとして、2021年東京五輪の卓球男子団体の銅メダリスト丹羽孝希選手を千葉県警が賭博容疑で書類送検したと30日、共同通信が報じました。
記事によると、丹羽選手は国内からオンラインカジノに接続し、暗号資産(仮想通貨)を元に賭けをしたとされ、「違法とは分からなかった」と話しているということです。
オンラインカジノはスマートフォンからでも簡単に接続できてしまうことから、オンラインゲームの延長線と考え、丹羽選手と同じように犯罪の自覚がないまま利用してしまうケースも少なくありません。
しかし、オンラインカジノは刑法上の賭博罪にあたり違法です。また、違法であることを知らなくても犯罪は成立してしまうことにも注意が必要です。
●オンラインカジノが問題となる2つのケース
オンラインカジノが問題となるケースとして、いわゆる「店舗型」と「無店舗型」という2種類があります。
「店舗型」とは、海外のカジノを、店舗に設置されたパソコンなどを使って利用する場合です。「無店舗型」とは、海外のカジノを、自宅のPCやスマホなどを使って利用する場合です。
従来は、このうち「店舗型」のオンラインカジノについて多く摘発されてきました。
しかし、近年では「無店舗型」のケースでの摘発も増えつつあります。
読売新聞オンラインの記事によると、2024年1月から11月末までの間に、オンラインカジノ客の摘発は147人で、そのうち9割が無店舗型オンラインカジノだったとのこと。
丹羽選手についても、店舗型、無店舗型いずれの場合でも罪に問われる可能性があります。
●常習賭博罪だと重くなる
丹羽選手の行為に対し、適用が考えられる刑法上の罪として、「単純賭博罪」(刑法185条)と「常習賭博罪」(同法186条1項)があります。
「単純賭博罪」は50万円以下の罰金または科料、「常習賭博罪」は3年以下の懲役です。常習性が認められるとかなり重くなります。
「常習」とは、反復して賭博行為をする習癖(しゅうへき)のことをいいます。
「常習」として賭博したかどうかは、当該賭博行為の種類や、賭けた金額が多いか少ないか、賭博の行われた期間、度数、前科の有無等を総合して判断されるべき、とされています。
丹羽選手についても、このような事情が存在するのかどうかが問題になりそうです。
なお、書類送検された理由となる賭博行為が1回だったとしても、反復して賭博行為をする「習癖」が発現されていると認められれば、「常習」とされる可能性があることに注意が必要です。
●「違法とは知らなかった」では済まされない
また、丹羽選手は、オンラインカジノが「違法とは分からなかった」と言っているようですが、オンラインカジノが違法だと知らなくても犯罪になることにも注意が必要です。
刑法には、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」という規定(刑法38条3項本文)があります。
したがって、オンラインカジノが違法だと知らなくても犯罪は成立します。
なお、同条は、続けて「ただし、情状により、その刑を減軽することができる。」とも規定しています(同条同項但書)。 しかし、あくまで「できる」だけであって、裁判所が減軽してくれるとは限らないことに注意が必要です。