78.jpg
「体調を維持しないと」治療目的で大麻所持の末期がん患者、裁判への執念
2016年06月06日 18時09分

「今日は体調が良くない。腹水がたまってきつい」。初老の男性がけわしい表情でつぶやいた。大麻取締法違反(所持)の罪に問われている末期がん患者、山本正光被告人(58)。現在、「大麻はがん治療のためだった」として無罪を訴え、刑事裁判をたたかっている。

6月6日午後1時半から、第3回公判が東京地裁で開かれ、弁護側が陳述をおこなった。裁判の前に、弁護士ドットコムニュースの記者が山本さんに話しかけたところ、表情をやわらげて「裁判をつづけるには、体調を維持しないといけないね」と話しはじめた。

「今日は体調が良くない。腹水がたまってきつい」。初老の男性がけわしい表情でつぶやいた。大麻取締法違反(所持)の罪に問われている末期がん患者、山本正光被告人(58)。現在、「大麻はがん治療のためだった」として無罪を訴え、刑事裁判をたたかっている。

6月6日午後1時半から、第3回公判が東京地裁で開かれ、弁護側が陳述をおこなった。裁判の前に、弁護士ドットコムニュースの記者が山本さんに話しかけたところ、表情をやわらげて「裁判をつづけるには、体調を維持しないといけないね」と話しはじめた。

●「ほかの治療に効果がなかった」

山本さんは今から約40年前、オートバイ事故で輸血を受けて、C型肝炎ウイルスに感染したという。C型肝炎は初期症状がほとんどないが、慢性肝炎から肝臓がんへと進行していくおそれがある。山本さんの場合、インターフェロンの治療も受けたが効果はなく、2000年に肝臓がんが発見された。

摘出手術は受けたが、肺やリンパ節にがん転移・進行し、2014年には末期がんと診断された。ほかの治療の効果・選択肢がなかったため、山本さんはインターネットで海外の事例などを調べて「大麻が治療に有効かもしれない」と思い至った。その後、自宅で大麻を栽培、使用しはじめた。

がんの病状は劇的に改善したという。「抗がん剤を使っていないのに、『腫瘍マーカー』の数値が下がり、安定した。体調もすこぶる良かった」(山本さん)。山本さんは2015年12月、東京の路上で職務質問を受けて、大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。

●「世の中そんなに甘くない」

山本さんは現在、神奈川県内で一人で暮らしの生活を送っている。逮捕後の治療には、抗がん剤は一切つかわず、緩和ケアが中心だという。だが、入院と退院を繰り返しており、先日も病院に搬送された。「がん治療の麻薬系鎮痛剤を使うと身体に負担が大きい。寝たきりならないようになるべく避けているが・・・」

この日の公判で、弁護側は、海外で医療用大麻が解禁された事例をあげつつ、「生命・健康を維持することは、憲法上、最大限尊重されなければならない」「他人に迷惑をかけない限り、適切な医療を選択する権利がある」として、大麻の医療利用を禁止した法律が違憲にあたると主張した。

弁護側の冒頭陳述は、約1時間におよんだ。一方、検察側は、弁護側が申請した証拠のほとんどを不同意とした。弁護側はあらためて証拠申請するという。山本さんは「世の中そんなに甘くない。壁はでかい。一人でやれることは限られている」「まずは自分のためにたたかいたい。それが他の人にも役立てば」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る