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「見て見ぬふりした大人も共犯」旧統一教会2世が教団提訴 コメント全文
2025年07月24日 18時30分
#宗教2世 #統一教会 #世界平和統一家庭連合 #宗教虐待

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である親から虐待を受け、人権を侵害され続けてきたとして、「宗教2世」の8人が7月24日、教団に計約3億2300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。原告となった宗教2世たちが出したコメント全文を紹介する。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である親から虐待を受け、人権を侵害され続けてきたとして、「宗教2世」の8人が7月24日、教団に計約3億2300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。原告となった宗教2世たちが出したコメント全文を紹介する。

●同じ境遇の宗教2世へ「決して無理をしないで」

◾️四国地方に住む20代男性

本日は、関心をもってお集まりくださり、ありがとうございます。

私が、2024年6月26日に集団交渉へ参加をしてから1年が過ぎました。その間、旧統一教会は、解散命令について「陳述書には複数の虚偽捏造の事実がある」と自分たちの正当性を主張し、2世問題については、先日のプレスリリースで「二世信者が当法人を訴えたとしても、彼らが救済され幸せになるとは到底考えられません。」と述べ、真摯に向き合っていません。この様な状況は、決して見過ごせないと感じ、また、教団の責任を司法の場で明らかにしたいと考え、訴訟提起をすることにしました。

この訴訟は、私にとって、大きな意味が2つあると考えています。

ひとつは、私が、教団の教えにより、自分の人生を自由に選ぶことができなかったこと、諦めざるを得なかった将来についての違法を問うものです。家庭内では、信者である両親により、幼い頃から礼拝や行事への参加を強制され、寝ているところを担がれて礼拝をする部屋へ連れて行かれたりしました。母親から同級生について「友達と思っているかもしれないけど、あの子はサタンなのよ。だから、あなたのことを悪いことへ誘ってくるので気をつけなさい。」と教えられ、教会では「異性が誘惑してくるが、これはサタンの誘いである。この誘いに応じると地獄に落ちる」と言われ、私の周りには、信者の方しかいませんでした。しかし、信者の方へ親近感をもつことはできず、いつも孤独でした。ずっと、誰にも相談できずに過ごしてきました。あたり前のことですが、子どもの頃から特定の考え方を強いられ、その考え方に沿って生活をさせられることは、大人になった後もずっと影響が残ります。旧統一教会の教えは、人を不幸にする形で影響が残ります。

2つ目の訴訟の意味は、私の双子の弟が自死したことに対して、教団の責任を問うことです。昨年の会見でもお話しましたが、弟は、2024年4月25日に自死しました。弟も私と同じように孤独でした。同じように惨めな思いをしていました。学校で使う教材は、弟と共同で使ったり、あるいは、弟だけ貰い物を使わされたり、自分より古いものを使っていたこともありました。弟は生前に、統一教会との関係についてもう関わりたくないんだ、と話し、教会に行ったあとも辛そうな表情をしていました。私にとって弟は、家庭内で唯一の味方でした。私と同じように諦めたことも沢山あったと思います。そして、最後は自分の人生を諦めました。弟が、教団の信者ではない家庭に生まれていたら、違った人生があったと思います。この訴訟は、生き残った私が弟へできる唯一のことです。弟は、決して死にたくはなかったはずで、それは教団の影響を受けた死であり、その責任を教団は取るべきです。

最後に、同じ境遇にある2世の方へ伝えたいことがあります。苦しんでいる方はたくさんいて、声を上げられない人も多くいると思います。しかし、それは仕方のないことだと思います。親や教団に支配されているからです。だから、決して無理をしないでください。私に、影響されて何かをしなければならない、ということではありません。まずは、自分のことを第一に考えてください。

以上が私のお伝えしたいことです。ありがとうございました。

画像タイトル 記者会見を開く弁護団(2025年7月24日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

●「親の宗教を理由に自由や人権を奪われることのない未来を望む」

◾️関東地方に住む30代女性

このたび、私は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して提訴する決断をいたしました。

私は両親が旧統一教会の合同結婚式で出会い、祝福二世として、信仰を強制される環境の中で育ちました。教団から幼い頃から地獄に落ちると教義に従うよう求められ、教義から離れた自由な意思を持つこと、自分の人生を選ぶことを許されずに生きてきました。

私の人格形成、教育、進路、交友関係、具体的には悪中心の世界だから友達に流されて、恋愛をするな等、すべてが教義を理由に制限されました。また、精神的な苦痛だけでなく、すでに給食費免除を受けるほど貧しい家に、献金の強要や、母を海外宣教に行かせる等、経済的にも重大な損害を受けてきました。私自身の尊厳や権利は長きにわたり無視され続けました。

今回の提訴は、過去を清算するためだけでなく、同じような立場で苦しんでいる人たちの声なき声を社会に届けるためでもあります。

私は一人でも多くの子どもが、親の宗教を理由に自由や人権を奪われることのない未来を望んでいます。

この訴訟を通じて、旧統一教会が加害性を自覚し、同じような被害を生まないよう改善して欲しいです。

最後に、この決断を支えてくれた弁護団、家族に感謝申し上げます。

画像タイトル 提訴を決めた心境について説明する宗教2世の原告の男性(2025年7月24日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

●「見て見ぬふりをした『あの頃の大人達』も共犯者」

◾️30代男性

今回、統一教会に対しては、「絶対に逃がさない」という強い思いから訴訟を起こさせていただきました。

私は祝福二世だったので、生まれたときから統一教会が身近にありました。そこではもちろん人権はなく、常に圧力をかけられ、時には暴力で信仰を強要されていました。

その中で恋愛、部活、友達など人として成長していく上でとても大事なものを奪われてきました。

今でも思い出すと後悔ばかりですし、教祖夫妻らの身勝手な欲望のために人生を奪われたと思うと怒りが収まりません。

この件に関しては、もちろん一番悪いのは統一教会ですが、「あの頃の僕達子供」からすると、手を差し伸べてもくれず見て見ぬふりをしていた、「あの頃の大人達」も共犯者です。

だからこそ、今回の訴訟では、「もしその時、自分の子供や周りの人が同じ目にあったら」ということを考えて、しっかり統一教会に対して然るべき判決を下してほしいです。

~「今何かを変えられる人たち」へ~

私はもう大人になってしまいましたが、今も統一教会に限らず同じように苦しむ二世の子供はたくさんいます。私と同じ環境で過ごした「兄弟・姉妹」たちについて、私の知る限りだと、統一教会に残った人たちは統一教会のために人生を搾取され、離れていった人たちは心に大きな傷を負って、酷いと社会に出ることすら難しい状況になっています。

これから将来がある子供たちの若い芽を摘んでこうなっていくのは、この国のため、回り回って自分達のためにも絶対によくないです。

この子供たちの将来が潰されなければ、もしかしたら何か凄いものを発明してくれるかもしれないし、日本を豊かにしてくれるかもしれないし、国同士の問題を解決してくれるかもしれない。そして、自分や周りの人を助けてくれるかもしれません。

「今何かを変えられる人たち」へ

二世たちは、自分の力でどうしようもないからこそ苦しんでいます。だからこそどうか「今何かを変えて」助けてください。

~そして、現役の二世へ~

どんなに苦しくても勉強だけはしてください。残酷なことをいうようですが、人は生まれたときから平等ではないです。どんなに足掻いても、子供は自分の力で幸せになんてなれません。子供の頃の幸せは恵まれた人にしか訪れません。運が悪かったと諦めて下さい。

しかし、大人になれば自分の力で足掻けます。成功してお金を稼げばマイナスだった人生をプラスにできるかもしれません。

そして成功するためには、絶対に勉強が必要です。勉強をしても報われないかもしれませんが、しないと絶対に成功はしません。

また、勉強することによって得た科学や数学などの知識は人に付度しません。誰がどう使おうと同じ結果になります。

だから勉強だけはしてください。勉強だけが恵まれなかった私たちに対する唯一の平等で足掻く手段です。

画像タイトル 提訴を決めた心境について説明する宗教2世の原告の男性(2025年7月24日、東京・霞が関の司法記者クラブで、弁護士ドットコムニュース撮影)

●「誰にも助けを求めらず本当に辛かった」

◾️中部地方に住む40代女性

小さいときから、誰にも助けを求めることができませんでした。

今とは時代が違うのかもしれませんが、学校の先生も、私が親からコタツの天板で殴られて、大きなたんこぶを作っていても、見て見ぬふりでした。

それで、大人になってからも、誰にも助けを求めることができないと思い続けていました。

誰にも助けを求められないのは、本当に辛かったです。

安倍元首相が銃撃され、統一教会に関係があると分かったときは、統一教会のことを思い出したくなくて、あえてニュースを見たり新聞を読んだりしないようにしていました。

それから2年くらい経ってから、統一教会の教えで「罪が深い」長子の私と、「神の子」として大切にされて好き放題だった弟、その弟が貸したお金を返してくれないとか、そういう関係を強制してきた母親との関係で限界を感じ、初めて自分から統一教会の状況を調べてみて、弁護士に相談できることを知りました。

藁をも掴む思いで、弁護士に電話をかけました。

助けを求めることができて、少し楽になりました。

私は、子どもの時から今まで40年近くの間、誰にも助けを求められなくて、その辛い時間は取り戻せないですが、せめて統一教会にはきちんと責任をとって欲しくて裁判を起こすことにしました。

今も、私と同じように、助けを求めることができない人がいると思います。その人たちに、「助けを求めていいんだよ。助けを求めていい人がいるんだよ。」、と伝えたいです。私が起こした裁判が、助けを求めるきっかけになったらいいな、と思います。
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