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「覚せい剤所持・使用の犯罪化に疑問あり」茂木健一郎さんの発言は妥当か?
2016年02月07日 10時19分

元プロ野球選手の清原和博さんが覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕されたことをめぐり、脳科学者の茂木健一郎さんは2月3日、自身のブログで、「いちばん被害を受けているのは実は本人であり、犯罪化というアプローチが適切なのかどうかは疑問である」と、覚せい剤所持や使用を犯罪としていることに疑問を投げかけた。

茂木さんは、覚せい剤の所持や使用について、「刑法上の犯罪であるが、私はむしろ、その依存症を、治療の対象とするというアプローチの方が良いのではないかと思う」として、身体を強制的に拘束するにしても、「禁錮」や「懲役」といった刑罰よりも、違法薬物についてのレクチャーや、依存症から脱するための更生プログラムが重要だとしている。

確かに、覚せい剤を所持したり、使用したりすることだけをみれば、他の人に害を直接的に及ぼしているわけでもないようだが、どうして犯罪になっているのだろうか。また、茂木さんの発言をどう分析すればいいのか。小笠原基也弁護士に聞いた。

元プロ野球選手の清原和博さんが覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕されたことをめぐり、脳科学者の茂木健一郎さんは2月3日、自身のブログで、「いちばん被害を受けているのは実は本人であり、犯罪化というアプローチが適切なのかどうかは疑問である」と、覚せい剤所持や使用を犯罪としていることに疑問を投げかけた。

茂木さんは、覚せい剤の所持や使用について、「刑法上の犯罪であるが、私はむしろ、その依存症を、治療の対象とするというアプローチの方が良いのではないかと思う」として、身体を強制的に拘束するにしても、「禁錮」や「懲役」といった刑罰よりも、違法薬物についてのレクチャーや、依存症から脱するための更生プログラムが重要だとしている。

確かに、覚せい剤を所持したり、使用したりすることだけをみれば、他の人に害を直接的に及ぼしているわけでもないようだが、どうして犯罪になっているのだろうか。また、茂木さんの発言をどう分析すればいいのか。小笠原基也弁護士に聞いた。

●犯罪とすることで近づかせないようにしている

「覚せい剤取締法が、自己使用や単なる所持を処罰するのは、『濫用による保健衛生上の危害を防止するため』とされています。

覚せい剤は常習性、依存性が強く、一度使用を始めると、のめり込んでしまい、自分の意思だけで止めることが難しくなることから、犯罪とすることで、近づかせないようにするという意味があります。

また、自己使用については、錯乱状態に陥って、交通事故や傷害事件を起こす危険もあります。所持していれば、知人に勧めたり、興味を持たせたりすることで、このような害悪が広まりやすくなります。これは、覚せい剤がダイエット薬として若年者に広まったことからも明らかです。

このような観点から、犯罪化することで、覚せい剤の害悪から社会全体を守ることにつながります。所持や使用を犯罪とすることに、一定の意味はあると思います」

●医学的アプローチが必要という指摘は極めて重要

では、茂木さんの主張していることについては否定的なのか。

「必ずしもそうではないです。覚せい剤依存症は『病気』であり、それを止めさせるために医学的アプローチが必要だという茂木氏の指摘は、極めて重要です。

刑務所や保護観察所(執行猶予中などに保護観察を行う)でも、薬物依存症を改善するための認知行動療法などを利用したプログラムを用意していますが、依存症の改善には、患者自身が、病識と治療意欲を強く持つことが必要であるため、刑務所の中で嫌々ながら治療プログラムを受けても、効果が薄いと思います。

アメリカなどでは、『治療的司法』という概念のもとに、治療意欲がある被告人には、社会内での回復プログラムに参加することで、刑罰を回避するチャンスを与えるという『ドラッグ・コート』と呼ばれる制度があります」

日本ではどうなのか。

「日本の現在の運用では、覚せい剤の自己使用・所持事案の多くが、起訴され、刑罰が科せられています。しかし、今の制度を前提としたとしても、被疑者が治療意欲を持ち、それを支援する医療機関や自助グループがあるような場合は、検察官が起訴猶予とした上で、社会内での治療を見守り、刑罰権の行使を差し控えるという運用が望まれると思います。

また、過去に服役前科があっても、『今度こそ立ち直りたい』という人には、実刑にしてしまうのではなく、執行猶予にすることができるように制度をあらためることも必要です。

国民のみなさんが、覚せい剤使用者を、『犯罪者で、社会から排除されるべき』という見方ではなく、『治療が必要な人で、社会に戻ってくる人』との理解を持つことが、このような運用や制度の改善、ひいては、薬物犯罪の再犯防止のために必要ではないかと思います」

小笠原弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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