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「返済が難しい人をさらに追い詰めている」 奨学金の「回収強化」をどう見るか?
2016年01月31日 10時35分

学生が、学費や生活費のためにお金を借りる「貸与型」の奨学金。日本学生支援機構の奨学金貸与事業では、大学生や専門学校生の約40%が利用している。卒業後は返済しなければいけないが、非正規雇用など不安定な就職状況から、月々の返済が滞っている人も多い。

日本学生支援機構はそうした延滞者に対する回収を強化している。同機構広報課によると、延滞者に対しては、まず文書や電話で督促をおこなう。その後、入金もなく、返還期限猶予の手続もなかった場合、裁判所に支払督促を申し立てるという。さらに、それでも返済に応じなかった場合、訴訟となる。

2004年度に58件だった訴訟の件数は、2012年度は6193件にのぼった。災害や病気、失業などで返済が難しい人のために「返還猶予」の仕組みがあるが、その猶予期間が従来より長くなった2014年度は、訴訟件数が5039件に減った。だが、依然として高い水準のままであることに変わりない。

このように奨学金の回収が強化されている状況について、奨学金問題対策全国会議の事務局長をつとめる岩重佳治弁護士に聞いた。

学生が、学費や生活費のためにお金を借りる「貸与型」の奨学金。日本学生支援機構の奨学金貸与事業では、大学生や専門学校生の約40%が利用している。卒業後は返済しなければいけないが、非正規雇用など不安定な就職状況から、月々の返済が滞っている人も多い。

日本学生支援機構はそうした延滞者に対する回収を強化している。同機構広報課によると、延滞者に対しては、まず文書や電話で督促をおこなう。その後、入金もなく、返還期限猶予の手続もなかった場合、裁判所に支払督促を申し立てるという。さらに、それでも返済に応じなかった場合、訴訟となる。

2004年度に58件だった訴訟の件数は、2012年度は6193件にのぼった。災害や病気、失業などで返済が難しい人のために「返還猶予」の仕組みがあるが、その猶予期間が従来より長くなった2014年度は、訴訟件数が5039件に減った。だが、依然として高い水準のままであることに変わりない。

このように奨学金の回収が強化されている状況について、奨学金問題対策全国会議の事務局長をつとめる岩重佳治弁護士に聞いた。

●誰にでも「延滞の危険」がある

「貸与型奨学金の重要なポイントの一つは、学生が借りる際、将来の仕事や収入がわからない状態であることです。つまり、誰にでも延滞の危険があるのです。

学費の高騰や家計の悪化によって、借入額が増える一方で、卒業後も非正規労働など低賃金・不安定労働がひろがっています。延滞の危険は、飛躍的に高まっています。

奨学金の返済で困っている人たちの話を聞くと、実際、延滞している人のほとんどが『返したくても返せない』という状況です。そのような困難を抱えた人に対して、日本学生支援機構は、無理な支払いを求めて、さらに追い詰めています」

岩重弁護士はこのように述べる。

一方、同機構広報室は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「返還金が直ちに次の世代の奨学金の原資となるため、お約束の期日までに返還していただくことは大変重要です」と回答した。

回収が強化されている点について、岩重弁護士は「回収率をアップさせることで、資金調達コストを下げるという構造的な問題があることも、忘れてはならない点だと思います」と話す。それに対して、同機構広報室は「奨学金の事業規模が大幅に拡大するなかで、延滞初期の段階の集中的な督促が早期解決には極めて重要だ」とする。

●「借り手の救済制度に不備がある」

日本学生支援機構の奨学金では、返済困難に陥った場合の救済制度がもうけられている。2014年度からは返還猶予の通算期間が5年から10年に延長されたり、延滞金の利息が年10%から5%に引き下げられるなど、制度の改革も行われている。

しかし、岩重弁護士はこうした救済制度にも問題があると指摘する。

「たとえば、返済を一時的に猶予する『返還期限猶予制度』は、どんなに経済的に苦しくても、限られた期間しか利用できません。また、延滞がある場合、その分を一括で支払わなかったり、時効を主張した場合、『猶予』を制限されるといった運用がなされています。

明らかに不合理なことですが、機構は『規則には<猶予できる>とあるから、どんな場合に猶予するか否かは、自分たちが裁量で決められる』と主張しています。

しかし、貸し手側の裁量でいかようにも運用できるなら、それは救済制度としての意味がありません。『学びと人生を支援する』という奨学金の本来の目的に照らせば、返済困難な人に対する柔軟な対応こそが求められているはずです」

●「学びたいけど、お金がない人を『借金漬け』にしている」

日本学生支援機構の奨学金の返還金利は、ほかの民間の教育ローンと比べて極めて低いとされる。インターネット上では「借りたものは返すのが当然だ」「自己責任だ」といった厳しい声も見られる。

「たしかに金利は低いことになっていますが、延滞すれば、年5%の延滞金が課されます。さらに、将来分も繰り上げて一括請求されて、延滞金が課されれば、その負担は甚大なものになります。

建前では、このような繰り上げ一括請求は、返済能力があるのに著しく返済を怠った場合にされることになっています。しかし、機構は『連絡もなく救済も求めない人は、返済能力があると認めざるを得ない』という乱暴な理屈で、支払いが苦しい人にも一括請求をしています。

『借りたものは返す』のが、社会のルールと言う人がいますが、学びたいけど、お金がない人を『借金漬け』にするのは、世界的に見れば社会のルールではありません。まず、現場で何が起こっているかをしっかりと把握して、そのうえで議論を深めることが大切だと思います」

岩重弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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