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事故で家事ができなくなった「主婦」、相手方に請求する「主婦の休業損害」とは?
2017年07月23日 10時13分

やけど事故の主婦休業損害は認められますか。そんな投稿が弁護士ドットコムの法律相談コーナーにありました。

投稿によると、相談者はウォーターサーバーでコーヒーを入れている最中にお湯が飛び散り、左手に全治4日のやけどを負いました。その結果、左手に包帯が巻かれ、洗濯や食事の用意などの家事ができませんでした。ウォーターサーバーの会社側も事故を認めて、即日解約となり、治療代を負担することになったそうです。

会社から送られてきた同意書には「この支払い(治療代の負担)をもって円満解決すること」「今後本件に関していかなる事情が生じても、異議申し立て、訴訟等一切しないこと」という項目がありました。ただ、2人の小さな子どもがいる相談者は専業主婦であり、「食事の用意もできず、洗濯やら何やら家事がままなりませんでした」として、「主婦の家事損失は認められますでしょうか?」と聞いています。

直接的な収入を得られない「主婦」であっても、交通事故などの事故で家事などができない状態になったことは「休業」にあたるとして損害を賠償してもらえるのでしょうか。その額は、どのように算出されるのでしょうか。妹尾悟弁護士に聞きました。

やけど事故の主婦休業損害は認められますか。そんな投稿が弁護士ドットコムの法律相談コーナーにありました。

投稿によると、相談者はウォーターサーバーでコーヒーを入れている最中にお湯が飛び散り、左手に全治4日のやけどを負いました。その結果、左手に包帯が巻かれ、洗濯や食事の用意などの家事ができませんでした。ウォーターサーバーの会社側も事故を認めて、即日解約となり、治療代を負担することになったそうです。

会社から送られてきた同意書には「この支払い(治療代の負担)をもって円満解決すること」「今後本件に関していかなる事情が生じても、異議申し立て、訴訟等一切しないこと」という項目がありました。ただ、2人の小さな子どもがいる相談者は専業主婦であり、「食事の用意もできず、洗濯やら何やら家事がままなりませんでした」として、「主婦の家事損失は認められますでしょうか?」と聞いています。

直接的な収入を得られない「主婦」であっても、交通事故などの事故で家事などができない状態になったことは「休業」にあたるとして損害を賠償してもらえるのでしょうか。その額は、どのように算出されるのでしょうか。妹尾悟弁護士に聞きました。

●「主婦の休業による損害」とは?

「家事や育児などを担う『主婦(主夫)』の仕事は、直接的な収入を得られるものではありません。しかし、主婦が担えなくなった家事をハウスキーパーなど第三者に依頼する場合には、料金がかかるでしょう。このように家事労働は『財産的価値のある役務』と言えますから、事故による負傷によって家事ができなかった場合には、その家事労働を金銭的に評価して損害賠償の対象にすることもあります。

これは、『主婦の休業による損害(主婦休損)』とも呼ばれ、交通事故事件などでもしばしば損害額として計上される項目です。具体的には女性の平均賃金から1日あたりの休業損害の単価を割り出し、これに家事をすることができなかった期間を乗じて計算する方法が一般的です。なお、男性が主たる家事従事者の場合には、男性にも認められます」

●どのような場合に休業損害が認められるのか

怪我はどの程度のものであれば、「怪我のために家事ができなくなった」と認められるのだろうか。

「事故にあえば、かならず主婦休損の請求が認められるかというと、そうとは限りません。休業損害はあくまでも『事故による負傷で家事に従事できなかったことにより発生する損害』ですので、家事に従事するのに差し支えない程度の負傷の場合は、主婦休損の請求ができないこともあり得ます。

他方、通院に必要な期間については家事ができませんから、通院に必要な期間分の休業損害が損害賠償の対象と認められる場合もあります。通院1回あたり半日から1日分の休業損害と考えれば,目安となると思います。このような事案ごとの事情を具体的に分析して、現実の賠償額を算定することになります」

なお、今回のケースについて、妹尾弁護士には気になる点があったそうだ。「この支払い(治療代の負担)をもって円満解決すること」という条項が契約書に盛り込まれていた点について、次のように注意を促す。

「今回のケースでは、同意書に『この支払い(治療代の負担)をもって円満解決すること』『今後本件に関していかなる事情が生じても異議申し立て、訴訟等一切しないこと』という条項が入っており、注意が必要です。

この条項は賠償の対象に治療費は含めるが休業損害等の損害は含めないという趣旨と読むことができます。今回のような事故のケースでは,治療費,休業損害のほかにも慰謝料その他の損害を請求できる場合がありますが,このような同意書に署名捺印すると、休業損害その他の損害を放棄する意思表示にあたると判断されて、治療代以外の損害賠償請求が退けられる可能性があるからです。

損害賠償法の世界では、相手方との交渉においても、しばしば専門的判断が必要な場面があります。もしもトラブルに巻き込まれた場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします」

(弁護士ドットコムニュース)

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