8208.jpg
死人に「プライバシー」はない? 死後に「恥ずかしい秘密」を公開されない方法は?
2013年06月20日 19時10分

「人間失格」などで知られる作家・太宰治の中高生時代のノートや日記が今年5月、報道陣に公開された。東京の日本近代文学館に寄贈されていたもので、ノートには太宰が影響を受けたとされる芥川龍之介の名前を書き連ねたページもあり、「文学的に貴重な資料」ということだ。今秋には一般への公開も予定されている。

このように、亡くなった著名人の日記や手紙などが公開され注目をあつめることは多いが、本人にしてみれば、他人に見せたくないものだった可能性もある。むしろ、多くの場合、日記や手紙などは第三者に見られないことを前提に書くものだろう。

著名人に限らずとも、他人に見られたくないものはあるだろう。日記や手紙はもちろん、携帯電話やハードディスクの中にあるデータを、文字通り、「死んでも他人に見せたくない」という人もいるのではないか。そのような人のために、近ごろでは死後にハードディスクの中身を自動で消去できるソフトもある。

はたして、故人のプライバシーは法的にどのような扱いになっているのだろうか。どうしても見られたくないものがある場合どうすれば良いのか。中村憲昭弁護士に解説してもらった。

● 「墓場から裁判を起こすことはできない」

「死者のプライバシーも一定程度、尊重されます」

中村弁護士はこのように説明する。ここでいう、「一定程度」はどこまでを指すのだろうか。

「プライバシー侵害の多くは『名誉権』の侵害というかたちで表れるでしょうから、第三者による侵害行為があれば、遺族が慰謝料請求をすることはありうるでしょう。プライバシー侵害が予想される場合には、その行為の差し止めを求めることができる場合もあります」

一方で、中村弁護士は「生きている人とまったく同じように保護されるわけではない」と付け加える。

「たとえば、死者に対する『名誉毀損』は、『虚偽の事実』を摘示することによって、なされた場合でなければ、罰せられません(刑法230条2)。また、亡くなった後に本人が権利行使をすることもできません。

遺族が故人の意思に反して日記や手紙を公開することもありえますが、その場合、亡くなった方としては、なす術がないのが現状です。墓場から裁判を起こすことなどできませんからね」

●恥ずかしい思いをしたくなければ、「遺言」などで準備しておくべき

では、仮に自分が死んだあと、秘蔵の映像や画像が入ったパソコンのハードディスクの中身が公開されたら・・・・。あるいは、中学生のときにかいた自作の詩が発見されたら・・・・生前は無名に近かったという宮沢賢治のようになれると、墓の中で期待するしかないのだろうか。

「方法はあります。絶対に他人に見せたくないものがあれば、『遺言』などで処分方法を遺族に指摘しておくとよいでしょう。『遺言』は、おもに遺産分割についての意思を遺族に伝えるためのものですが、それ以外の事柄を書いてもかまいません。

どんな人にでも平等に、かならず死は訪れます。それがいつかは誰にもわかりません。亡くなった後で恥ずかしい思いをしたくなければ、準備をしておくべきでしょう」

このように中村弁護士はアドバイスしている。なお、死後にハードディスクの中身を自動的に消去できるソフトについては知らなかったようで、「そんなソフトがあるのですか?是非入手したいものです(笑)」と関心を示していた。

(弁護士ドットコムニュース)

「人間失格」などで知られる作家・太宰治の中高生時代のノートや日記が今年5月、報道陣に公開された。東京の日本近代文学館に寄贈されていたもので、ノートには太宰が影響を受けたとされる芥川龍之介の名前を書き連ねたページもあり、「文学的に貴重な資料」ということだ。今秋には一般への公開も予定されている。

このように、亡くなった著名人の日記や手紙などが公開され注目をあつめることは多いが、本人にしてみれば、他人に見せたくないものだった可能性もある。むしろ、多くの場合、日記や手紙などは第三者に見られないことを前提に書くものだろう。

著名人に限らずとも、他人に見られたくないものはあるだろう。日記や手紙はもちろん、携帯電話やハードディスクの中にあるデータを、文字通り、「死んでも他人に見せたくない」という人もいるのではないか。そのような人のために、近ごろでは死後にハードディスクの中身を自動で消去できるソフトもある。

はたして、故人のプライバシーは法的にどのような扱いになっているのだろうか。どうしても見られたくないものがある場合どうすれば良いのか。中村憲昭弁護士に解説してもらった。

● 「墓場から裁判を起こすことはできない」

「死者のプライバシーも一定程度、尊重されます」

中村弁護士はこのように説明する。ここでいう、「一定程度」はどこまでを指すのだろうか。

「プライバシー侵害の多くは『名誉権』の侵害というかたちで表れるでしょうから、第三者による侵害行為があれば、遺族が慰謝料請求をすることはありうるでしょう。プライバシー侵害が予想される場合には、その行為の差し止めを求めることができる場合もあります」

一方で、中村弁護士は「生きている人とまったく同じように保護されるわけではない」と付け加える。

「たとえば、死者に対する『名誉毀損』は、『虚偽の事実』を摘示することによって、なされた場合でなければ、罰せられません(刑法230条2)。また、亡くなった後に本人が権利行使をすることもできません。

遺族が故人の意思に反して日記や手紙を公開することもありえますが、その場合、亡くなった方としては、なす術がないのが現状です。墓場から裁判を起こすことなどできませんからね」

●恥ずかしい思いをしたくなければ、「遺言」などで準備しておくべき

では、仮に自分が死んだあと、秘蔵の映像や画像が入ったパソコンのハードディスクの中身が公開されたら・・・・。あるいは、中学生のときにかいた自作の詩が発見されたら・・・・生前は無名に近かったという宮沢賢治のようになれると、墓の中で期待するしかないのだろうか。

「方法はあります。絶対に他人に見せたくないものがあれば、『遺言』などで処分方法を遺族に指摘しておくとよいでしょう。『遺言』は、おもに遺産分割についての意思を遺族に伝えるためのものですが、それ以外の事柄を書いてもかまいません。

どんな人にでも平等に、かならず死は訪れます。それがいつかは誰にもわかりません。亡くなった後で恥ずかしい思いをしたくなければ、準備をしておくべきでしょう」

このように中村弁護士はアドバイスしている。なお、死後にハードディスクの中身を自動的に消去できるソフトについては知らなかったようで、「そんなソフトがあるのですか?是非入手したいものです(笑)」と関心を示していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る