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DHCテレビに賠償命令、「ニュース女子」の名誉毀損認める…辛淑玉さん「悪質なフェイクニュースだった」
2021年09月01日 16時42分

沖縄の米軍基地反対運動をとりあげた番組「ニュース女子」で、名誉を傷つけられたとして、市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)さんが制作会社のDHCテレビジョンなどを相手取り、損害賠償1100万円などを求めていた訴訟の判決が9月1日、東京地裁であった。

大嶋洋志裁判長は名誉毀損を認め、DHCテレビに550万円の賠償と謝罪文の掲載などを命じた。番組の削除は認めなかったが、判決が確定すればウェブで番組を公表し続ける限り、同ページ内に「事実と異なる内容」「辛淑玉氏の名誉を毀損したことを認め、辛淑玉氏に対し深くお詫び致します」などとする謝罪文を掲載しなければならない。

判決後の会見で辛さんは「とても画期的な判決をいただいた。番組は私を使って、沖縄の平和運動を愚弄するという、もっとも悪質な形のフェイクニュースでした」と語った。ただし、一部主張が認められなかったとして、控訴する予定だという。

一方、DHCテレビ側は、判決内容について生放送番組を配信。こちらも判決を不服として「控訴の運びになる」とした。

沖縄の米軍基地反対運動をとりあげた番組「ニュース女子」で、名誉を傷つけられたとして、市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)さんが制作会社のDHCテレビジョンなどを相手取り、損害賠償1100万円などを求めていた訴訟の判決が9月1日、東京地裁であった。

大嶋洋志裁判長は名誉毀損を認め、DHCテレビに550万円の賠償と謝罪文の掲載などを命じた。番組の削除は認めなかったが、判決が確定すればウェブで番組を公表し続ける限り、同ページ内に「事実と異なる内容」「辛淑玉氏の名誉を毀損したことを認め、辛淑玉氏に対し深くお詫び致します」などとする謝罪文を掲載しなければならない。

判決後の会見で辛さんは「とても画期的な判決をいただいた。番組は私を使って、沖縄の平和運動を愚弄するという、もっとも悪質な形のフェイクニュースでした」と語った。ただし、一部主張が認められなかったとして、控訴する予定だという。

一方、DHCテレビ側は、判決内容について生放送番組を配信。こちらも判決を不服として「控訴の運びになる」とした。

● 真実性、真実相当性を認めず

DHCテレビジョンは化粧品大手DHCの子会社で「ニュース女子」を制作。2017年1月2日と1月9日にTOKYO MXで放送された回で沖縄の米軍基地反対運動をとりあげた。

この中で、基地反対派が警察などに対して暴力や犯罪行為などをしており、辛さんが経済的に支援しているなどと報じた。

この点について、裁判所は「真実性が証明されているとは到底いえない」と判断。「根拠として薄弱」「裏付け取材をしていない」などとして、真実相当性についても否定し、辛さんの名誉を毀損するものだとした。

なお、辛さんは、番組司会だった長谷川幸洋さん(当時・東京新聞論説副主幹、2018年に定年退職)も訴えていたが、裁判所は長谷川さんが企画や制作などに関与しておらず、収録時点で各出演者の発言を具体的に把握していたわけではないなどとして請求を棄却した。辛さんはこの点についても控訴を予定しているという。

● 「一行でも良いから人種差別と記載してほしかった」

判決後の会見で辛さんは、番組は「私にとって犬笛でした」として、多くの攻撃にさらされたことも語った。

「日本人ではないということ、日本人ではない私が反戦運動に声を上げること、沖縄のことに思いを馳せること、そこを巧みに利用されたように思います。そのことで受けた仕打ちはむごいものだったと思います」

番組をめぐっては、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会が2018年3月、人種や民族を扱う際に必要な配慮を欠いていたなどとして、TOKYO MXに対して、再発防止の努力をするよう勧告していた。

裁判で辛さん側は、番組が人種差別であるとも主張したが、裁判所は明示的な判断はしなかった。

この点について、辛さんの代理人の佃克彦弁護士は「ほかの名誉毀損訴訟と比べて、賠償額は極めて高い。人種差別的であることが、『諸般の事情』に含まれているとは思うが、明示的に書くのは難しかったのではないか」と語った。差別を包括的に禁止する法律がないためだという。

今日9月1日は、1923年に関東大震災が起きた日でもある。震災では、デマにより多くの朝鮮人が虐殺された。辛さんは差別の扇動は罪深いとして、「一行でも良いから人種差別と記載してほしかった」とも語った。

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