8436.jpg
工具を持っていたら「職質」、バッグの中身を全部見られた…拒否したらどうなるの?
2020年03月06日 10時03分

警察に「職務質問(職質)」され、拒否したら警察署まで連れて行くと言われ、渋々応じましたーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者は仕事で工具を使うため、日常的にバッグに工具を入れているという。いつものようにカッター、ニッパー、ドライバーなどの工具をバッグに入れ、仕事から帰宅している途中に職質されたようだ。

相談者は職質に応じ、工具や仕事の依頼人からのメールを警察に見せた。ところが、「銃刀法違反の可能性がある。ほかに危険物がないか確認したいので、バッグの中身を見せてほしい」と言われたという。

「仕方ないので見せましたが、工具以外の荷物を調べられたくなかったです」と相談者は不快感を感じている。

バッグの中身を見せたり、警察署まで行ったりすることを拒否することはできるのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。

警察に「職務質問(職質)」され、拒否したら警察署まで連れて行くと言われ、渋々応じましたーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者は仕事で工具を使うため、日常的にバッグに工具を入れているという。いつものようにカッター、ニッパー、ドライバーなどの工具をバッグに入れ、仕事から帰宅している途中に職質されたようだ。

相談者は職質に応じ、工具や仕事の依頼人からのメールを警察に見せた。ところが、「銃刀法違反の可能性がある。ほかに危険物がないか確認したいので、バッグの中身を見せてほしい」と言われたという。

「仕方ないので見せましたが、工具以外の荷物を調べられたくなかったです」と相談者は不快感を感じている。

バッグの中身を見せたり、警察署まで行ったりすることを拒否することはできるのだろうか。坂口靖弁護士に聞いた。

●職質は「法律的」には拒否できる

ーー相談者のように職質された場合、拒否することはできるのだろうか

「法律的にはできますが、実際上はなかなか難しいことが多いように思われます。

職務質問は『異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して』『何等かの犯罪を犯し、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる』場合に質問することが認められる(警察官職務執行法2条1項)というものです。

これは、あくまで『任意捜査』の限度で質問や所持品検査を実施できるというものになります。したがって、そもそもかかる要件を備えていない職務質問や、所持品検査等を拒絶しても法律上は何の問題もありません。

また、仮に要件を満たす職務質問であっても、あくまで『任意捜査』の限度で認められるものでしかありませんので、質問を無視しつづけ、警察署への同行も拒否し、そのまま帰宅してしまうことも可能ではあります。

よって、バッグの中身を見せることを拒絶したり、警察署に行くことを拒否することも法律上は可能です」

●自身の正当性を担保するためにも職質の録音・録画を

ーー法律的には拒否できるにも関わらず、なぜ実際上は難しいのだろうか

「『異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して』との要件は、非常に緩やかに解釈されることが多く、警察が把握していた事前情報(たとえば、近隣で窃盗事件があったなど)や相談者が警察官を目撃し、足早に立ち去ろうとしたなどの一切の事情を考慮して判断されることとなります。そのため、職務質問が適法とされるケースが少なくありません。

そして、適法に職務質問を実施できる場合には、必要性、緊急性、相当性の認められる範囲において、進路をふさぐなどの『有形力の行使』も認められる場合もあります。そのため、その限度で警察官らに執拗に停止を求められ、質問に回答するように食い下がってくることも十分に想定されます。

このような場合には、警察官らは、肩に手をかけ停止するように説得してきたり、前に立ちふさがったりしてくることが想定されます。それらを強引に払いのけたりすると、公務執行妨害等によって現行犯逮捕などをされかねないというリスクも生じてきます」

ーーこのような警察官の対応やリスクを考慮すると、急いでいる時はさっさと見せたほうが無難なのかもしれない

「そうですね。急いでいるときなどは、バッグの中身等をさっさと見せてしまったほうが早く終わることが多いようにも思われます。

もし、職務質問に応じない対応をとる場合は、裁判において自身の正当性を担保するために携帯電話などで動画や音声を撮影、録音しておくべきです。

裁判で職務質問時における『真実の状況』を明らかにするためには、動画などが不可欠です。逆に、動画などがない場合は『真実の状況』を明らかにすることは不可能に近く、警察官らの証言をうのみにされてしまうおそれもあります」

●「拒否したら警察署まで連れて行く」という発言は「許されない」

ーー相談者は職質を拒否した際に、警察から「受忍義務がある」と言われたようだ

「職務質問に関する『受忍義務』は存在しないように思われます。

警察官は説得し、任意に質問や検査を実施したいと考えています。そのため、このようによくよくわからない発言をし、職務質問に任意に応じるように執拗に説得してくることがありますので、注意が必要です」

ーー相談者は警察に「拒否したら警察署まで連れて行く」と言われたそうだ。このような警察官の発言は許されるものなのだろうか

「職務質問は、一定の要件の下、あくまで警察署への同行を『求めることができる』とされているに過ぎず、やはり任意同行を求めることができるものに過ぎません。

『拒否したら警察署まで連れて行く』との発言は、あたかも強制であるかのように受け取れる発言です。そのため、不相当で許されない発言であると考えられ、仮にこのまま警察署に連行されたとしたら、違法な身体拘束との評価を受ける可能性も高いものといえます。

ただし、刑事裁判では、警察官らは言った言わないの水かけ論に持ち込むことが散見されます。よって、前述のように、職務質問を受けた際は、手続きの一部始終をスマホで録音または録画しておくことが重要であると思います」

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る