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株で「1500万円」も大損したのに、先物の収益や年金に課税されて納得いかない!
2018年03月30日 10時06分

日々の暮らしや分散投資・・・、様々な理由で株式や先物取引に励む人がいる。NISA(少額投資非課税制度)など非課税の仕組みを使わない限り、どんなにもうかっても避けて通れないのが「税」だ。

売却益には20.315%の税率が課される。20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、決して低くない税率だ。税理士ドットコムの税務相談コーナーには、課税に納得できないという声がいくつも寄せられている。

日々の暮らしや分散投資・・・、様々な理由で株式や先物取引に励む人がいる。NISA(少額投資非課税制度)など非課税の仕組みを使わない限り、どんなにもうかっても避けて通れないのが「税」だ。

売却益には20.315%の税率が課される。20.315%の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、決して低くない税率だ。税理士ドットコムの税務相談コーナーには、課税に納得できないという声がいくつも寄せられている。

●株の損失、年金や先物の利益と通算できず

たとえば、先物と株式売買の収益で生活費をカバーしているという年金生活者は、2015年に先物で700万円の利益を出した一方、株式で1500万円の損失となったという。株式の損失は大きいのに、確定申告をしたら年金と先物は課税され、「納得がいかないから取り返す方法が知りたい」という内容だった。

利益と損失を通算すれば損失の方が大きいのだから課税されては困る、というのが投資家の率直な思いだろう。ただ、井上大輔税理士によれば、「結論としては取り返す方法はない」という。具体的には以下のとおり整理されるためだ。

・年金は「雑所得」で各種所得を合計して所得税額を計算する「総合課税」

・先物は「雑所得」で先物取引間なら損失と利益の差し引き(通算)ができる「分離課税」

・株式(上場の場合)は「上場株式等にかかる譲渡所得」で、株式間で損益通算できる「分離課税」

つまり、株式で損失が出たとしても、残念ながら年金や先物で出た利益と通算することはできないということだ。株式と先物はそれぞれ、売却した翌年以降3年間は上場株式の売却益と相殺できる「売却損の3年間繰越控除」が認められている。

●実際に試算すると・・・

この年金生活者の実際の年金収入は160万円のようだ。仮に65歳以上だとしたら、どれくらい課税されるのだろうか。単純化するため、年金160万円・先物取引による利益700万円・株式の売却損1500万円という要素で試算する。

「公的年金等にかかる雑所得」は、160万円×100%-120万円=40万円となる。そして、所得税は40万円×5%=2万円、住民税は2万円×10%=2千円。合計で2万2千円の税金がかかる。先物は、700万円×20.315%=142万2,050円の税金。一方、株式取引は損失が出ているので課税されない。

よって、2万2千円+142万2,050円=144万4,050円の税金を払わないといけない。株式投資で1500万円も損失を出していたら、「やってられない」と思うのも仕方ないだろう。

●税の世界では分散投資がいいとは限らない

井上大輔税理士は次のように語る。

「大変残念ですが、今の日本の税制では、取り返す方法はありません。年金は雑所得として総合課税され、先物は雑所得で先物として別課税、株式は通算するのであれば分離課税で株式に係る所得の中で損益通算されます。それぞれが別の所得であるため、株式の損失を年金所得や先物所得と通算することは出来ません。

しかし、株式の損失は分離申告しているのであれば翌年に利益が出たときにその株式の利益と通算することはできます。このように、様々な種類の所得に分類されてしまうと、損失がでたときに通算できず不公平感を感じてしまいます。

投資は分散投資をしてリスクを抑えることも重要ですが、税金のことだけ考えれば、なるべく同じ所得にしてしまったほうが、利益と損失を相殺できるのでよいともいえます」

【監修】

井上 大輔(いのうえ・だいすけ)公認会計士・税理士

公認会計士・税理士として、会計コンサルティング・税務など多数の業務に従事しています。お客様の立場にたって、税金をわかりやすいものへ、会計の力で経営を飛躍させるため、様々なお客様のパートナーであり続けます!

事務所名   : 港公認会計士・税理士事務所

事務所URL:https://www.minato-cpatax.com/{target=_blank}

(弁護士ドットコムニュース)

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