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私立小同士の取り決め「ウチの児童を転入させたらダメ」 公取委が問題視したワケ
2015年07月11日 10時30分

ウチの学校の児童を「転入」させないでほしい――。関西の私立小学校を中心とした業界団体が、小学校の新設を予定している学校経営者に対して、他の私立小の児童を転入させないように要請し、公正取引委員会から警告を受けていたことがわかった。

警告を受けたのは、西日本の私立小59校が加盟する西日本私立小連合会(西私小連)と、大阪府、京都府、兵庫県の私立小連合会の合計4団体。4団体は、それぞれ近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないという取り決めを結び、加盟校に周知していた。

公取委によると、4団体は20133月、進学校として有名な洛南高校の付属小(京都府向日市)の新設を予定していた洛南学園に対して、京都府や近隣の府県の私立小学校から児童の転入を受け入れないように要請した。洛南学園は私立小連合会には所属していなかったが、要請を受けて、京都府の私立小学校に在籍している児童は受験を遠慮するよう募集要項に記載した。

4団体の要望について、公取委は「私立小学校が提供する教育サービスの取引分野における競争を実質的に制限していた疑いがある」と指摘した。公取委の判断のポイントは、どこにあるのだろうか。独占禁止法にくわしい籔内俊輔弁護士に聞いた。

ウチの学校の児童を「転入」させないでほしい――。関西の私立小学校を中心とした業界団体が、小学校の新設を予定している学校経営者に対して、他の私立小の児童を転入させないように要請し、公正取引委員会から警告を受けていたことがわかった。

警告を受けたのは、西日本の私立小59校が加盟する西日本私立小連合会(西私小連)と、大阪府、京都府、兵庫県の私立小連合会の合計4団体。4団体は、それぞれ近隣府県の加盟校間の転入は原則として認めないという取り決めを結び、加盟校に周知していた。

公取委によると、4団体は20133月、進学校として有名な洛南高校の付属小(京都府向日市)の新設を予定していた洛南学園に対して、京都府や近隣の府県の私立小学校から児童の転入を受け入れないように要請した。洛南学園は私立小連合会には所属していなかったが、要請を受けて、京都府の私立小学校に在籍している児童は受験を遠慮するよう募集要項に記載した。

4団体の要望について、公取委は「私立小学校が提供する教育サービスの取引分野における競争を実質的に制限していた疑いがある」と指摘した。公取委の判断のポイントは、どこにあるのだろうか。独占禁止法にくわしい籔内俊輔弁護士に聞いた。

●競争を回避する取り決めは「独禁法」で禁じられている

「まず、独禁法の基本から説明しましょう。同業者で構成している業界団体が、価格の一斉引上げや顧客の割り当てを取り決める等、団体の構成員(企業)の間の競争を回避させる行動をした場合、顧客にとってはマイナスになってしまいます。

そのため、独禁法では、業界団体が、こうした取り決め等により『一定の取引分野における競争を実質的に制限すること』を禁止しています(独禁法81号)」

籔内弁護士はこのように述べる。私立小学校のケースにもあてはまるのだろうか。

「小学校を運営する学校法人も、児童に対して教育サービスを提供する取引を継続的に行っている『事業者』にあたり、西私小連等の4団体は『事業者団体』にあたります。ですから、企業と同じように考えることができます」

なぜ今回のようなことが起きてしまったのだろうか。

「報道等によれば、背景には、児童の減少や私立小の増加により競争が激しくなってきたことがあるようです。4団体は、経営安定化のために、教育サービスの受け手(顧客)である児童の取り合いにつながる『転入』を制限する取り決めを行っていたと、公取委は判断したようです」

●競争への大きな悪影響が生じていたのか

今回の公取委の判断をどう見ればいいのだろうか。

4団体の取り決めは、競争回避のための取り決めであるため、独禁法上は問題になります。

ただ、私立小の間の競争は転入の場面だけではなく、入学の場面でより強く生じているのではないかとも思われます。転入に関する取り決めだけで『競争を実質的に制限する』という競争への大きな悪影響が生じていたといえるのか、若干疑問は残ります。

また、こうした取り決めは、『保護者の意向で転入させられることによる児童への負担回避のため』に行われていた面もあるかもしれません。こうした事情は、一般論としていえば、独禁法違反にならない理由(正当化理由)として考慮される可能性がありえます。

そうは言っても、転入により児童に負担が生じるかどうかは一律にはいえないでしょう。そのため、転入を原則として禁止することは手段としてやり過ぎと判断され、正当化理由として認められにくいと考えられます」

籔内弁護士はこのように分析していた。


(弁護士ドットコムニュース)

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